一光 輝瑛
「大倉を…」
「はい。我々の世界にご招待したい」
「しかし,大倉は」
「あなたの友人ですね。だが,同時に,最大のライバルでもある」
「…!」
「あなたも感じているはです。大倉様がおられることで,あなたは今,つらい思いをされている」
「…」
「いつの時代も,主役は一人いればいい。あなたの力なら,この世界を救う主役を,
十分に勤められるはずです」
「しかし…」
「残念ながら,ガレア様はこの件では嘘をおっしゃってる。
あなたの力は,あなたが思われているよりも,はるかに強大ですよ」
「…」
「あなた一人で,十分にこの世界は救えるのです」
《この世界を救うのはイリーザ様です。あなたではありません》
「しかし…」
「イリーザ様,大倉様には,我々の世界で活躍していただきたい。
ヒーローは二人も必要ありませんから」
「ヒーロー…」
「あなたにはその素質があり,能力もあります。この世界の救世主になりませんか」
《あなたの力は,あくまでもイリーザ様の力に誘発されたものです》
《別にあなたがいなくても…》
「…」
《別に,大倉様を殺すわけではありません。もともと,大倉様は,イリーザとして,
我々の世界を救った一人だった。》
《それは,テリウス,あなたも一緒なのですがね》
《だが,ガレア様は,テリウス様がお嫌いだった。それで,あなたにも冷たくあたるのです。
気にすることはありません》
『…』
《簡単なことですよ。負勢力との戦いが起きれば,空間が歪曲され,
結果的に異次元への扉が開きやすくなる。そのときがチャンスですよ》
『しかし,大倉がいなくては…』
《我々は,あなたの力を信じていますよ。残念ながら,ガレア様は信じていないようですが,
実際はどうでしょうか。そのあたりは,立山様が一番ご存知かと思いますが》
『…』
『この世界に生まれ,この世界に育ち。
だが,今は,この世界の破壊の原因となってしまっている…』
大倉は,焼け野原となった町に立っていた。
『あれだけの歳月を費やし,築いた街が,一瞬にしてこのとおりだ』
冷たい風が,彼の頬を打つ。
『僕は,生まれてくる世界を間違えたのかもしれない…』
ビヒュゥゥー
「!」
ドドドドォォ
襲撃は,突然だった。風を切る音とともに,オレンジ色に輝く光線が飛来した。
「なんだ,いったい」
立山はとっさによけるが,立ち上った黒煙に包まれて視野を失う。
「…やはり,攻撃か」
しかし,敵はどこに…
「遠距離射撃か」
爆発の中心から離れていた大倉は,すぐに光線が飛来した方角を見つめる。
「遠いな…」
バヒュゥゥー
一瞬間が抜けるような遠い音。が,照準は確かに合っている。
「く!」
全力で退避する大倉。そして,すぐにその場所に光線が直撃する。
ゴゴゴゴォォォ
轟音が耳を劈き,風圧が全身を押す。
「…遠距離射撃か,どうするかな」
「畜生!」
立山が,再び黄金の剣を出現させる。
《武器を使うのは邪道ですよ》
『うるさい!』
立山が駆け出す。人間の足。いや…
「え!」
立山は,いつのまにか風になっていた。雲にでも乗ったような,驚異的なスピード,風圧。
「これも力なのか」
「ああ,そのようだ」
「!」
気づくと,大倉も並走している。
「とにかく,光の元を叩くんだ」
「ああ,わかっているさ」
ビギュゥゥー
さらにオレンジ色の光。だが,上方に大きく外れる。
「どうやら,こっちのスピードのほうが,上らしい」
「そうだな…,あそこだ!」
ギギギィ
機械,そう,機械でった。ビーム光線の中心にあったものは,それを発射するための,
まさしく機械であった。
「!」
周囲を取り巻く,黒衣の男たち。すでに見慣れてしまったシルエットだが,
さすがに立山達のスピードに恐れをなしたらしい。
「行くぞ!」
「よし!」
グガガガァァ
その“機械”が,恐ろしい轟音とともに,旋回する。
「どりゃあぁぁ」
立山が,大声をあげながら突進する。
「くらえ!」
振り下ろされる黄金の剣。
「え」
ビィィー
間近の電子音が響く。数本の細いレーザーが,立山を襲う。
「ぐわっ」
とっさによけた立山も,数本の直撃を受ける。
「うぅっ」
激痛に身をよじる立山。肉の焦げる臭い。そして,噴出す血潮。
「危ない,立山!」
「くっ」
ビィィー
「たあっ」
黄金の剣を振り回し,至近距離のビームをはじく。
ビィィー
「くそっ」
立山は,来た時と同じスピードで撤退する。苦痛に顔をゆがめながら。
「畜生…」
ガガガァァ
その“機械”が再び旋回する。
「ここは,俺にまかせろ!」
「!」
今度は大倉が殺到する。
ビィィー
「ふんっ」
大倉の前方に,円形のバリアが出現する。
「これで防御できるさ」
「…」
ビィィー
範囲に突入した大倉を厭うように,続けざまにビームが発射されるが,円形のバリアの前に
すべて跳ね返される。
「いけぇぇー」
大倉は両手を開き,そしてすぐに閉じる。両手の先から,“機械”のビームとは
比べ物にならないほどの光線がほとばしる。
ズガガガァァァ
“機械”を閃光が包む。
「決まったか!」
「畜生ぉ…」
激痛が走る左手を押さえながら,再び立山の前進が始まる。
ギガギィィガァ
きしむ音をより高め,それでも“機械”が作動しているのがわかる。
「ふっ,やはり一撃では無理か」
すでに空中に静止していた大倉がつぶやく。
「だが,これで終わりだ!」
「今ですよ,立山さん」
「!」
「あなたの前方に立つあの男。異世界にはじき出す絶好のチャンスです」
「!…」
「敵との戦いの影響で,異世界との境界は薄くなっています。今なら突破できます」
「…」
「さあ,おやりなさい。この前お教えした通りに」
「…」
「何を迷っているのです。チャンスを逃してはなりません」
《あなたは,イリーザの付属でしかない》
《そう,あなたの力など,付随的なものでしかない》
《この世界の救世主は,イリーザ様です》
《そう,テリウス,あなたじゃない》
『…』
「行けぇぇぇぇ!」
大倉が振り下ろした両腕から,再び雷撃が放射される。
「!」
「そう,今です,今しかないのです」
振りかぶられた黄金の剣が,一気に輝きを増す。
『!』
つづく
PN 一光輝瑛
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