ある日このHPを見たというアメリカのスロット愛好者からメールあり。何でも仕事で日本に行くのでそちらのコースに立ち寄りたいとのこと。親分に相談すると大歓迎ということなのでとりあえずOKと返信。小生、外国どころか飛行機にものったことのない人間なので会話に関しては非常に不安ではあったが、こんな経験もめったにできないだろうと思い腹を決める。時間があればウエルカムレース&ミーティングも予定していると伝えたところ相手も大喜び。日程も6月末の土曜日に決まりあとは到着を待つばかりとなった。
彼等は1週間前から日本に滞在しているということでFAXによる打ち合わせをしていると金曜日にこちらの近くに泊まるつもりということ。それならホテルの予約がとれれば予定を早めてこちらに来たら、と伝えるとかなり乗り気の様子。さいわい知り合いのホテルに予約が取れたので急遽予定変更で2泊3日の滞在となる。
6月29日金曜日。2時に最寄りの新幹線の駅で待ち合わせ。なにしろ相手の顔さえ見たこともないのでかなり不安。前日のTELでこちらがあまり英語が話せないことも伝わったようなのでそちらはとりあえずOK? そのわりには話しが盛り上がって1時間近くも話してしまった・・・メールでやりとりしていたデビットはスロットはもとよりRCカーも好きらしく、最近はなんとミニッツレーサーで仲間内でレースをしているとのこと。「オレも持ってるゾ!」というと大喜び。その他いろいろと話していると他にもいろいろと共通点があることがわかってひと安心。なんだか不思議な感覚・・・
駅には数人の外国人がいたが、お互いに一発で発見。どうやらお互いそれらしい雰囲気があるようだ。デビットと同行しているのは彼の仕事仲間のジム。スロットはあまりやらないらしいがミニチュアカーのコレクターで実車のエンスーでもあるとのこと。眼鏡をかけたデビットは学者風で「ジョーズ」に出てきたリチャード・ドレイファスといったところ。おヒゲのジミーは若いころのショーン・コネリーを思わせる風貌。やあやあ、よく来た、などとあいさつもそこそこにとりあえずホテルに荷物を置いてバンディーニに向かう。
お店では親分ご夫妻がお出迎え。2人ともお店にはいるなり大興奮。あいさつを済ませるとさっそく物色を開始。二人の住むカリフォルニアにもこういったマニアックなお店はあまりないらしい。ふと気がつくとデビットはスロットカー、ジミーはミニカーその他を両手に抱えてニコニコしている。二人とも前から探していたものが見つかった(それも大量に・・・)ので驚いたとのこと、ジミーいわく「こりゃパラダイスだぜ!」
コースに向かうと今度はデビットが驚いたらしい。「ワ〜オ!」といったまましばし絶句。「スゴイな〜!アメリカではこういったお店が持っている1/32のコースはほとんどないぞ。おまけにすごくチャレンジングなコースだな〜!こりゃ来てよかった・・・」どうやら気に入ってくれたらしくひと安心。
今回は荷物の都合でマシンその他を持ってこれなかったということで私の車を貸して初走行。「7秒切れればたいしたもんだよ。」などといっていたらいきなり6秒台のタイムで走り始めた!マズイ、こいつデキる!と思って見ているとデビットもこちらを見てニヤリ・・・「いやー、難しいけどすごくよく考えてあるレイアウトだね。こりゃ挑戦しがいがあるな。」・・・あの〜、お手柔らかにお願いしますね・・
ジムはスロットよりもお店にあるホットホイールの在庫が気になるらしく落ち着かない様子。このあたりで私は仕事の都合で中座。二人はいったんホテルにもどりメンバーが集まるころ再び出動することになった。
仕事を早めに切り上げて10時ごろコースに着くとすでにかなり盛り上がっている。二人とも何の違和感もなくメンバーとわいわいやっていて、はじめはどこにいるのかわからないほど。いろいろなマシンを借りて走らせているらしい。デビットはすでにコースレコードに近いタイムを叩きだし、ジムもどうやらスロットの魅力に取りつかれたらしく真剣にラップを重ねている。
「お〜い、ジム。大丈夫か。目がマジなってるぞ〜」と冷やかすと「アメリカに帰ったらコース買っちゃうもんね。奥さんなんか怖くないもんね!」とのこと。
ちなみにこちらではこういう風にハマッた状態を『一丁上がり』もしくは『出来上がり』と呼んでいる・・・まさしくアメリカンスロットレーサー、一丁上がり、である。
その後もスロットをはじめ英語と日本語のチャンポンでいろんな話で盛り上がる。デビットはバイクも好きで結婚するときに「私とバイクのどっちを取るの!」とやられたクチらしく、今は乗っていないらしいが以前はヤマハのRZに乗っていたとのこと。「ええっ!オレもRZでレースしてたんだぜ。」「ホントか!いや〜、2ストはいいよな。」「うんうん・・・」彼はSUGOのバックストレート通称「馬の背」まで知っていてオドロキ。以前バイクレースでかなりいいところまでいったというセナも交えてその手の話に花が咲く。
イタリアンとアイリッシュのハーフだというジムはメチャ陽気でおまけに熱血。親分をはじめとするBSTラテン軍団と意気投合し、こちらも大騒ぎである。
彼もかなり、というかすごいエンスーでなんとBRE(!)のDATSUN510(!!)のレーサーを所有。バイクも’59年のハーレーのパンヘッドを持っていて、月に一度はラグナセカまでレースを見にいくらしい。とにかく子供のころから車が好きで、だいぶヤンチャもしたらしいが今では2児のパパでもあり、奥さんの手前もあってもっぱらミニチュアカーのコレクションを楽しんでいるということである。
私も彼もかつてのCANAMやドラッグレースが好きだということがわかり話は尽きない。話せば話すほど共通点が見つかるのだから面白くないハズがない!他にも仕事(二人とも医療ハイテク関係のエンジニア)、家庭(奥さんがコワイのは世界共通らしい・・・)、日本の女性は(くわしくは省略)・・・などともう止まらない。ふと気がつくと日付も変わっている。明日の日米決戦に備えてこの辺りでお開きとなった。やはり不思議な感覚である。
ちなみにデビットはクラシッククラスのコースレコードを塗替えて去って行った・・・オレの車でオレより速く走るなっつーの!
さて翌日は二人の希望で静岡市内にある大型ホビーショップ、レインボーテンまでショッピングに出かける。行きは高速に乗ったが、あいにくの天候で富士山も見えず残念。
お店に入るなりデビットはRCのコーナーへ、ジムはミニカーのコーナーへ一目散。二人ともどっさり買い込んで満足しているようである。「おいおい、そんなに買って荷物は大丈夫?」と尋ねると、「今朝スーツケースを一つずつ買ったからノープロブレムだ!」・・・お見それしました。
時間も昼時だったのでなぜかマックでハンバーガーのランチ。ここでもいろんな話しをしたが、我々が思っているアメリカのイメージは少なくとも彼等の話によるとだいぶ昔のもののようである。現実は日本とあまり変わらないらしい。家庭や教育などある意味彼等の方が『日本的』なのかもしれない。特にジムはちょっと前の日本のオトーサン的な考えらしく、ちょっとしたカルチャーショックであった。
デビットもいい奴で「今日は運転してくれたんだからオレたちでおごるよ。」なんて言ってくれたが「何いってんの。君らはオレのゲストなんだから気にするなよ。」などと言ったら申し訳なさそうな顔をしていた。またもや不思議な感覚。おまえらホントは日本人じゃないのか?気持ちが伝わっているのがわかるもんね。嬉しいよな〜。
その日の夕食は親分一家とメンバー有志、おまけに小生一家で中華の食事会。はじめは皆緊張ぎみではあったがそれもつかの間、そのうちいつもの雰囲気になってきた。ジムは子供好きらしく子供たちの人気者。いっしょに遊んで楽しそうである。デビットは親分や奥様と歓談、ビルヌーブ親子やセナ、フレンツェンも加わりまたもや大騒ぎである。げ、デビット、飲めないなんて言ってたのにそんなにショウコウ酒飲んで大丈夫か?
一方こちらでは熱血セナはMr.ハイパーだなんて話していると、ジムが「オレのことか?」と聞いてきたので大笑い。こいつ絶対アメリカの仲間内ではMr.ハイパーって呼ばれてるんだろうな〜!全員納得。デビットにはバカウケ。予定してしていた2時間はあっと言う間に過ぎてしまった。
親分がセッティングしてくれたこのお店、料理もうまいし対応もいいわで一同大満足。言葉なんか多少通じなくたって平気、やっぱりハートであることを確信。本当に楽しいひとときを過ごすことができた。
さてなごやかというかにぎやかな雰囲気で食事会もお開きとなり、いよいよ日米決戦である。
始めは花を持たせて帰してやるか、などと思っていたメンバーも昨日のデビットのウワサを聞いて完全に本気モード。スロット経験の浅いジムもすでにレースで十分通用する走りである。
2ヒート制で行われたこのレース、詳しい内容はレースレポートを参照されたいが、なんとジムの圧勝となった。デビットはあえて難しいアウトコースを選んだが、その勇気に一同大喝采「ヨッ、男だね〜!」「さすがレコードブレイカー!」デビット照れることしきりである。(ホントは日本語わかるんじゃないの!?)その実力はわれわれを驚かせるのに十分なものであった。う〜む、アメリカンスロットレーサー、恐るべし。日本代表の完敗であった・・・
レースが終われば無礼講である。もう飲めや歌えの大騒ぎ。親分いわく「こいつら最高だぞお!!」
ひさびさのレース出場となったミケーレはコレクションから3台を二人にプレゼント!の大判振る舞い。そのうちデビットはフレンツェンが持ってきたプレステGT3に夢中となりメンバーと対決モード。ジムはBSTのお笑いコンビ(?)セナとシューマッハにつかまっておおはしゃぎ。今回忙しい中、ホストに徹してくれた親分も上機嫌。他にもメンバーがなだれ込んできて宴会状態である。まったく話はつきない。怪しげな英語が飛び交い、そのうち日本語まで怪しくなってきて午前1時を回ったころにようやくお開きとなった。
私は明日は朝から仕事のため二人とはここでお別れである。
「いや、何もできなかったけど楽しんでもらえたようでよかったよ。明日は見送りに行けなくて申し訳ないが、メンバーがちゃんと駅まで送ってくれるから大丈夫だよ。」
「ありがとう。本当に楽しくすごさせてもらった。いろいろお世話になって心から感謝しているよ。きっとまたくるからな。コースもメンバーも最高だよ。..........I'll
never .....never forget your......」
「...................」
伝えたいことはたくさんあった。が、デビットも私もこれ以上言葉が出なかった・・・
翌日、夕方仕事の合間に親分にTEL。二人とも無事帰ったことを確認して一安心。
「いろいろご苦労さん。楽しかったな。」
「こっちこそありがとうございました。二人ともいい奴らでしたね。」
「本当にそうだな。いい奴らだったなあ。」
「また来るって言ってましたよ。」
「いいさ、大歓迎だよ。そういえば二人からプレゼントを預かってるぞ。都合のいいときに取りにおいで。」
「ええっ!ホントですか?なんだか返って悪かったな・・・明日にでもうかがいます。」
「おう、じゃまたな!」
昨日までのにぎわいが嘘のような、誰もいないバンディーニ・スーパートラックス。
二人が残していったのは、みんなに宛てた気持ちのこもったメッセージと、私の家族に、と書かれたメモのついた花束だった・・・
