スウェーデンの福祉


・介護費最高負担制度
 スウェーデンにおいては高齢者ケアは地方自治体の責任で、利用費決定も自治体の裁量である。このため利用費負担制度は各自治体ごとに違っており、自治体間での利用費の差が問題となっていた。国としては何らかの対策を講じたいのであるが、問題は地方自治の越権行為となる可能性である。現社民党政権は制度導入に肯定的であるが、保守政党および市連合会は反対である。その理由は地方自治に反するということである。
1ヶ月前の新聞では環境党も反対のため社民党政権は案を出せないということであったが、最近環境党が肯定的になってきたようで、うまくいけばこの秋に法案提出、来年から最高負担制度が出来るかもわからない。今出ている案では最高額は1200クローナ.(約1万4千円)である。
なおこれは介護費のみなので「施設」における家賃は含まれていない。
 
・職員は訴えなければならない
 今年1月から社会サービス法の一部が改正された。
新しく追加になったのは「事件」が起こったときや、十分な介護が行われていないときには職員はこれを市に報告しなければならないというものであり、運営者が公民を問わず適用される。最近の新聞によれば、すでに3件が報告されている。
なおこの法律変更は、1年半前に起こったある施設における事件の際、これを訴えた当時の職員の名前からサラ法と呼ばれている。

・背景
1.人口的背景
・2000年12月現在、総人口888万人のうち153万人が65歳以上で、高齢化率は17.2%である。
・高齢化率は減少中で、2005年には17%になるとみられている。2005年以降、高齢化率は再び増加し、2035-40年に22,4%になると予測されている。
・平均寿命は男性77,5歳、女性82,1歳で、高い国の一つ。
・子どもと同居している高齢者の割合は約4%で、先進諸国の中でも低い。

2.政治、経済的背景
・80年代までの順調な経済発展が、福祉の充実を支えてきた。
・社民党政権下で、公的セクターの拡充により福祉を充実させるという解決策に国民の支持があった。
・女性の社会進出を支援することにより、課税ベースの拡大、労働力の確保ができた。特に、福祉の現場は女性が多い職場でもある。
・地方自治の強化と同時に、市町村合併を通じて自治体の財政的基盤の強化が図られた。

 スウェーデンの高齢者政策の特徴
・高齢者ケアの枠組みは国の法律によって規定されている
・この枠組み法は権利法である
・この枠組み内にて市は全責任を負う
・県は医療、市は福祉という役割分担が出来ている
・医療も福祉も主に税金で運営されている
・高齢者ケアの運営主体はほとんどすべてが市である
・住宅政策に力が入れられている
・施設も住宅である
・24時間介護が普及している
 
法律と理念

1.社会サービス法
 社会サービス法は社会福祉における基本法で、禁酒法、社会扶助法、児童福祉法、幼児保育法の4法が統合され、1982年から施行されている。

2.社会サ−ビス法の特徴
・権利法 ー 不服申請が可能
・枠組み法 ー 目的、原則が書かれており、詳細は規定されていない。
・社会福祉すべてにわたる基本法
・目的 ー 民主主義、連帯、経済的、社会的保障、平等など
・原則 ー 自己決定、自立の援助、ノーマライゼーション、選択の自由、総合的視点、継続性、近接性、人格の尊重、積極的活動、当事者参加。

3.保健医療法
・目的 ー 住民の健康促進を図り、住民の経済状態、居住地区に関わりなく、十分な医療が等しく受けられ、住民の総合的なニ−ズにもとづいた保健、医療の拡充と組織化を図ることを求めている。

 在宅サービス
1.ホームヘルプサービス  必要に応じて掃除、買物などの家事援助や就寝介助などの介護によって、高齢者、障害者などの自立生活を助ける。申込みはすべて福祉事務所に行い、自己負担がある。

2.ナイトパトロール  夕方から朝にかけてにヘルパ−、准看護婦、看護婦が要介護者を回ったり、緊急の呼び出しに対応する制度。

3.訪問看護  介護/看護が必要な人が自宅に住み続けられるように、看護婦などが定期的に訪れる。

4.緊急呼び出し電話  一人暮らしの高齢者や要介護者が、何かがあった場合、腕時計型の呼び出しボタンを押すことにより、ヘルパ−などが来ることになっている。

5.移送サービス  身体機能の低下や障害などのために、普通の公共交通機関が利用できない人がタクシ−や車いす用のミニバスを利用することが出来る。

6.デイケアセンター  サービスハウスに併設されたり独立しているもので、痴呆老人などに対しリハビリや食事などのサ−ビスを行う。

7.ショートスティ・ミドルスティ  在宅で介護を行っている家族の負担軽減のため、あるいは他の施設への入居待ちの間、一時入居として行われる。

8.補助器具  身体機能の低下や障害などのために日常生活が困難な人に、補助器具を貸し与えることにより本人の自立生活を援助する。

9.住宅改造補助  障害者/高齢者などが自宅にて自立した生活が送れるように、必要な住宅の改造を行う。

10.高齢者住宅手当て  高齢者の収入に応じて家賃の一部を援助するもので、1995年からは国から支給されるようになった。

11.近親者有給介護休暇  親族などの介護の(看取る)ために仕事を休まなければならない場合、最高60日まで、休職中の収入が一部補償される。

12 . 家族ヘルパ−・介護手当  家族などが高齢者を介護している場合、市より介護手当をもらうことが出来る。


 施設サービス
 1992年からのエーデル改革により、サービスハウス、老人ホーム、ナーシングホーム、グループホームなどは「介護つき住居」と呼ばれるようになった。なお下記のうち、シニア住宅以外の入居は市の福祉事務所によって決定される。なお高齢者住宅という言葉の使い方が市、人、国によって異なるので、注意が必要である。
1.シニア住宅  普通、55才以上の健常者を対象とした利用権買い取り式住居で、すべてが民営である(一部賃貸もある)。日本の一般型有料老人ホ−ムに近い。

2.サ−ビスハウス  自立して生活できる高齢者(および障害者)のためのアパ−トで、日本のケアハウス型軽費老人ホームに近い。1LDKから2LDKが多く、自分の家具と共に引っ越す。デイセンタ−、図書室、美容室、レストランなどのサービス機能が付いているいるのが普通である。介護職員は24時間勤務しており、必要に応じてヘルプを受けることができる。

3.老人ホ−ム  ケアが必要な高齢者のための住居で、すべて個室で、食事は食堂で一緒にとるため台所はついていない。サービスハウスに比べて入居者の介護の必要度は高く、日本の特別養護老人ホ−ムに近い。私物の家具を持ち込むことができ、職員は24時間勤務している。

4.ナ−シングホ−ム  日本の老人病院/老人保健施設に近いが、現在は介護が重度の人のための住居であって通過施設ではない。1992年のエ−デル改革により県から市に移された。施設長は多くの場合、看護婦で医師は常駐していない。

5.グループホ−ム  少人数を対象とした介護、住居形態で、居住者の居室と共有スペ−スがあり、職員は24時間勤務している。対象は痴呆性老人、他の高齢者、身体障害者、知的障害者などの介護を要する人である。(なお日本で使われているグループハウスという言葉と同じではない)


苦情処理
 在宅におけるホームヘルプでもあるいは施設におけるケアでも必ず苦情が出てくる。同時に行政機関には監督責任がある。まず認定内容に対しての苦情(不服)は行政訴訟が行われる。スウェーデンにおいてはいわゆる認定は行政権の行使であり、このような行政権の行使にあたっては必ず行政側は不服の場合の申し立て方法を個人に通知およびこれを手助けしなければならない。


 スウェーデンは「在宅介護」か
  スウェーデンは「施設介護」から「在宅介護」になったと日本で紹介されるだけでなく、スウェーデンでもそう表現されることがある。しかし日本ではこの意味が誤解されていることが多い。
 まず第1に、スウェーデンにおいても今までいくつかの施設/住居形態が発達してきた。このため「施設」の定義に何を含めるかによって、状況が変わってくる。
 第2に「施設」に対する批判のため「施設」が無くなったのではなく、「施設」が住居化あるいは「在宅型施設」に変わりつつある。現在ではこれらの介護つき住居は死ぬまで住める住居であり、一時的に入所する「施設」ではない。この意味において介護つき住居である「施設」は「在宅」なのである。
   第3にスウェーデンにおいても「在宅にて住み続けること(kvarboende)」と、「自分の住居に住む(eget boende)」ことが区別されずに議論されていることが多い。スウェーデンにおいては「施設」での介護から「在宅」での介護に移ったのではなく、介護度が高くなっても「在宅」に住み続けることが可能になり、また「在宅」あるいは「施設」を問わず、居住環境の向上ということが最大の問題点なのである。
 第4に「スウェーデンでは在宅介護に力を入れています」と説明するスウェーデンの関係者は多い。重度の介護が必要でも、訪問看護などの充実で在宅に住み続けられるようになったという意味では、これは正しい。
しかし1970年代中期からホームヘルプ受給者の総数および割合は減っているので、相対的に在宅で介護されるようになったという意味では正しくない。また最近では新しくホームヘルプを受けることが、以前に比べて難しくなってきていると多くの報告書は指摘している。

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