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矢口真里は最初、この同窓会に参加する気は無かった。 飯田からの招待状は、何度もゴミ箱に捨ててはまた拾い上げるということをくり返しているうちにクシャクシャになってしまっていた。 いまその招待状を鞄の奧に忍ばせながら、RV車で山道を進んでいる。
あの忌々しい武道館での出来事は、モーニング娘。のメンバー自身にも目に見える形で暗い影を落とした。
だが娘。の中でひときわ明るいキャラクターでムードメーカーとしてグループを引っ張る役割を担っていた彼女にとって、この暗い事件によりその後の芸能活動の方向性を大幅に変えざるを得なくなった。
「運良く生き残ったから笑っていられるかもしれないが、お前を見ると死んでいったあの娘を思い出す」
モーニング娘。が好きだった者も、そうでない者も彼女に対して抱くイメージは大体同じだった。 先日はついにテレビショッピング司会のオファーが来た。ギャラも悪くはなかったが、事務所側に無理を言って断ってもらった。 「でもねぇ真里ちゃん、このまま露出が減るとヤバいよ」とマネージャーにも言われた。 (別に誰を恨むわけでもないけど、自分の現在置かれた境遇はメンバーも分かっているはずだ。あの輝かしいスポットライトを浴びることなんて、今となっては到底かなわない夢と散ったんだ。今、なぜその一番輝いていた時代のメンバーが集まって古傷を舐め合わなきゃならないんだ。冗談じゃない。そう思っていた。思っていたのに、今、その同窓会に参加しようとしている矛盾。 矢口は険しい表情のまま、ハンドルをギュっと握りしめた。 後部座席でいびきをかいて寝ている安倍を、なるべく気にしないようにして。 |
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