|
|
|
|
同窓会の集合時間は午後4時となっていたが、時計の針はまだ1時を差したばかり。 ただ一週間前から石川と加護が2人きりで屋敷に住み込んでいるため、事前に連絡を入れれば来る時間は別にいつでも問題ないとは、2通目の招待状に書いておいた。 しかし、お昼前に到着すると今朝電話してきたリーダーたち以外に、今のところそういった連絡は受けていない。
結局、その飯田もいまだに到着していない。 「お昼ごはん、何食べたんだろう・・・?」
そんなことを考えながら昼食の後片付けをしている石川だったが、皿洗いが終わり水道の蛇口を締めた瞬間に玄関の呼び鈴が広い屋敷内に鳴り響いた。 (やっと来たみたいね、リーダー)そう思いながら、石川はエントランスへと走った。
玄関口には白いスーツに赤いバラの花束を抱えている、ホスト風の男が立っていた。 「よっすぃー!!」石川は、急いで駆け寄り再会の抱擁をした。 「何?何?何? この格好!?」抱きしめながら、何度も小刻みなジャンプをくり返す。 興奮した石川は、吉澤ひとみの身体のあちこちを触りまくった。 「いやぁ、これが普段着なんだけど・・・」サングラスを外しながら吉澤はやれやれ、といった表情を浮かべる。 「もうっ! 今日は仮装パーティじゃないのよっ!」と相変わらずの女の子らしい仕種で胸を小突く。 ・・・そうゆう石川もメイドみたいな格好してるじゃねーか、なんかフリルフリフリでコミケ会場にいそうだぞ、と吉澤は思ったがけっきょく口にすることはなかった。 「ちょっと待ってね、今あいぼん呼んでくるからっ!」 「俺の他には誰も来てないわけ?」 「ううん、よっすぃーが今日は最初」そう言い残して石川はタッタッタ、と玄関を出て屋敷の裏側の庭園に走った。 (変わってないなぁ、石川も・・・)あの事件以降、変わること余儀なくされたモーニング娘。メンバーの中で、最も周囲を驚かせる変化を見せたのがこの吉澤だった。
事件から半年後、マスコミ各社に送られてきたFAXには、そういう書き出しで始まっていたという。
現在でも「元アイドルの男装タレント」という全く前例の無い経歴を持つ芸能人としてちょくちょくテレビに出演し、また週末には自分がオーナーの新宿二丁目のおなべバーに顔を出し、店はそれなりに盛況している。
今でも底意地の悪い週刊誌やネットでは「頭の打ち所が悪かった」とまで言われる。当の吉澤は周囲の喧騒などはあまり気にしないように努めた。
「ああ! そうだ、よっすぃ〜!!」突然、背中に突き刺さるアニメ声。 「なっ・・・何だ! まだいたの?」 「お腹すいたら、キッチンの冷蔵庫にパスタ入っているから、食べてい〜よ♪」 |
|
|
next to ... 第5話 吉澤 |
|
|
最初に戻る ■ トップページ |