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「ののォ、まだあいぼんと喧嘩しているの?」うつむいている辻希美に、心配そうに話かける。 「ん〜」イエスともノーとも取れる返事を貰い、表情から確かめようと安倍なつみは下からのぞき込んだが辻はすぐに目を逸らす。 答えは「イエス」だったようだ。
ここは日本武道館。
そしてこの日はモーニング娘。解散の日。
このあと、プッチモニ、ミニモニ。と続くのなか辻もその準備に追われていたが、ユニット参加の無い安倍は比較的余裕があるので、目がうつろな辻を心配し話しかけてきたのだった。 「あいぼんもね、悪気があってあんなこと言ったわけじゃあないと思うよ」 「・・・・・・」 「今日でもう最後なんだよ? ここで仲直りしなかったらこれからずーっと、ずぅぅーっと、あいぼんのこと嫌いなまま毎日を過ごさなきゃなんなくなるよ? それでもいいの?」 「・・・・・・」目にいっぱいの涙をためて、辻は下唇を噛んでいる。
辻と加護が、楽屋の廊下でつかみ合いの喧嘩をしているのを見かけたのは3週間前。 「何ゆうとんのやオチコボレのくせしてボケがぁ!」 「うっせぇ、デブデブ言うんじゃねぇよ!」 「音程外しとってエライ歌いにくかったわアホ!」安倍が聞いたときは、すでにそういった罵倒合戦になったので喧嘩の原因はよくわからなかった。 あとで保田から聞いた話によれば、きっかけは些細なことだったらしい。 「ののはええなぁ、ユニット少ないしヒマやろ」そう加護が漏らしたことから、辻の中に長年累積していたコンプレックスが爆発したらしい。
確かに加護は、娘。本体のソロパートでも4期メンバーの中では特権的地位が与えられていた。それに加えてユニットであるタンポポ、ミニモニ。でも新規ファンの獲得に大きく貢献していた。
予期しない言動で周囲をハラハラさせたり、甘え上手のようなところは辻の十八番であり、それはグループの中で見事にキャラ立ちしていた。しかし辻本人にとっては、モーニング娘。という世界が解体されたら、そのキャラは通用しなくなるのではないかといった焦りがあった。
加護も辻も解散後は芸能界に残ることが決定していた。 「ののはええなぁ、ヒマやろ」
安倍は静かに語りかける。 「なっちもねぇ、中学校のころ仲良かった友達が、片想いだった男の人とつき合いだしたときなんかはシットしてねぇ、その友達が嫌いになりかけたこともあったよ。でもやっぱり嫌いになれなかったなぁ。最後まで。 「あべさん・・・」 「ごっちんが加入してきたときも、なっちと比較とかされて落ち込んだときもあったけど、色んなトコロで活躍しているごっちん見るのはヤッパリうれしかった。安倍は辻の頭を包み込むように撫でた。 「仲間じゃない」 |
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