第20話グラデ左 グラデ右新垣

 結局、新垣はモーニング娘。解散後は芸能界を引退することになった。

 解散記者会見では現役メンバー全員が顔を揃えた。
 輝かしい成功を収めたグループの歴史を物語るかのように、絶え間なくフラッシュがたかれ、それぞれが娘。時代の思い出、ソロ活動への抱負等を語り、マスコミも拍子抜けするほど和やかな雰囲気が続いた。
 しかしそんな中、新垣は自分に話が及ぶと堰をきったように泣き崩れてしまったのだ。
 周囲のメンバーが慌てる中で、声を詰まらせながら新垣が言った言葉。

「モーニング娘。が大好きです」
 それだけだった。そしてそれが新垣の芸能活動のすべてでもあった。
 誰の目からみても、未だに解散の事実を受け入れていないのはあきらかだった。
 後にリーダーの飯田は、彼女ほど純粋にモーニング娘。という存在を愛した人間はいない、と周囲に漏らしている。

T E N

 そして武道館での、モーニング娘。ファイナルライブで事件は起こった。
 コンサートもクライマックスを迎え、ステージ中央の階段からメンバー全員が歌いながら降りてくる。
 その瞬間、大きな光と爆音が交錯し、熱風が会場内を包み込んだ。

 2階ロビー最前列から鑑賞していたカメラマンは、事件直後にその時の様子をこう語った。

「なんか一瞬顔の10センチ前で自分に向かってカメラのストロボをたかれたような感じになって、そのあとなんかステージがタマゴを電子レンジの中に入れたかのように木っ端微塵にふっ飛んで・・・目が慣れてもう一度見てみたら黒コゲでほとんど原形を留めてないんですよ・・・炎と煙と爆音と人間とその血飛沫が滅茶苦茶に入り乱れて何が起こったか分からずに茫然とその場で3分ぐらい見つめていました・・・パニックと傍観者のギリギリ境界線上にいたんだと思います・・・」
 阿鼻叫喚。
 まさにその言葉がふさわしい1階席では、暴徒と化したファンがメンバーに襲いかかったり、あちこちで乱闘が起こったりといった地獄絵図が展開されていた。
 芸能界であらゆる汚いことを見てきたつんく♂も、まったく次元の違うこの様子を目の当たりにして、そして何も出来ない自分の無力さを悟り、愕然とその場に崩れ落ちたという。

 そんな中で新垣は、ある意味幸運だったといえる。
 その凄惨な光景を目にすることは、決してなかったのだから。

 ほぼ爆心地に位置していた新垣は、爆風でほぼ真上に吹き飛ばされそのまま床に叩きつけられた。

 モーニング娘。最後の日は、そのまま、新垣里沙の人生最後の日となった。

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