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リーダーご一行様が到着して、さらに賑やかになった。「ちょっとぉ紺野! たった一泊なのに何なのよその荷物の量は!」油断したら引きずってしまいそうなほど中身の詰まった旅行用のボストンバックを肩からぶら下げて、身体全体をナナメにしながら玄関をくぐり抜けてきた紺野。それを見た吉澤が、思わず叫んだのだった。 「修学旅行と勘違いしていない?」目を丸くした石川に、高橋がすかさず告げ口する。 「しかも紺野の荷物の中身って、お菓子とか食べ物ばかりなんですよォ〜」実家から送ってもらった北海道のお土産もあるのに、とちょっとふくれっ面の紺野が負けじと飯田のカバンの中身についても言及する。 「いや〜でもリーダーの荷物もなかなかですよ〜、さっき中を見たら真っ赤なドレスとか入っていたし〜」 「もー同窓会と舞踏会を間違えているんじゃないリーダーは〜相変わらず電波交信しているんじゃなぁ〜い〜」飯田は怪訝そうな顔をして手にしているスケッチブックに何か書き込み、みんなの前に殴り書きの文字を掲げた。 “みんなきこえてないと思っているようだけど、口のうごきを見れば、だいたいわかるんだぞ”吉澤は「え?」という表情で、石川と見合わせた。 仏調面で飯田はさらに書き込む。 “だれがデンパだって? よっすぃー”加護は腹を抱えて笑っている。 高橋がそのどさくさに紛れて言う。 「どうせなら仮装大会にしませんか、もう。 「「これが普段着なの!!」」吉澤と石川は、声を揃える。 「一番動きやすいんですよ〜この服が〜」とメイド服のスカートの端を持ちながら弁明する石川。 (よかった・・・本当に・・・)ほとんどのメンバーが5年振りの―――あの事件以来初めての―――再会にもかかわらず、意外にもあの頃の楽屋の雰囲気となんら変わらず笑いが絶えないことに石川も吉澤も胸をなで下ろした。リーダーの目にも安堵の表情がみてとれる。
その時だった。
ボーン、ボーンと居間の古時計の鐘が二回、大きく鳴った。
立ち話に水を差された形になった元モーニング娘。たちだったが、せっかくだからそれぞれの荷物をまず部屋に運んでからにしよう、ということになった。
エントランスホールの奧の扉を開くと、吉澤たちが今いる大広間。この屋敷は上から見るとそこを中心に十字の形になっている。奧は食堂と厨房があり、その奧には石川が加護を探していた庭園に通じる裏口。
1階の広間の右側の扉を開くと短い廊下の左右に一つづつ扉があり、そのうちの1室は広めの客室になっている。
2階の客室は全部で7部屋。
「ええっと、それじゃあ一応ドアに名前の紙が貼り付けてあるんですけど、部屋まで案内しますよ〜。まず上への階段なんですが、この家はエントランスホール、いま皆さんがいる居間、それに食堂の3つにあって・・・」そう言いながらツアーコンダクターのような石川先導のもと、ぞろぞろとメンバーそれぞれの部屋に向かうのだった。 |
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