|
|
|
|
しばらくすると狭くて薄暗い密林に包まれた山道が突然ひらけて、ポッカリとした空間が広がった。 西に傾いた陽光が運転する矢口の目に突然飛び込んできたので、慌てて額に留めてあったサングラスを再びかけなおす。はるか前方に緑色のなめらかな稜線を背後に控えた、(それとは対称をなす)直線的な建物が二人の視界に飛び込んでくる。 つんく♂邸だ。
安倍が手をたたき、大はしゃぎしている。 「なっち、ココは初めてだったよね?」 「うん!」本当にこんなところに元モーニング娘。(自分もそうだが)が集まっているのだろうか、と同じく初訪問の矢口は不安になる。
密林を抜けても、屋敷まではまだかなりの距離がある。
車のスピードを緩め、じっくりと矢口もその洋館のたたずまいを目に焼き付ける。
顔は・・・確認する前に奧に消えてしまった。 「なっち、見えた? 誰だろ?」 「何がぁ?」 「いや・・・なんでもない」屋敷のそばの木陰に3台の車が駐車してある。 矢口のRVもそれに並べるように停車した。 「すっげぇ・・・」車にロックをかけた矢口が屋敷を見上げる。 遠目には大自然の中にひっそりとたたずむ小さな箱という印象を受けたが、いざ屋敷の正面に立つと、ミニマムな矢口はその巨体に圧倒される。
入り口は正面の大きな扉だろう。短い石階段と緩やかなスロープ、そして両脇には青銅製の手すりが添えられている。 (えーっと、呼び鈴はどこだろ?)あたりを見渡したが、それらしきものは見あたらない。 ボストンバックを肩に掛けた安倍がタッタッタと小走りにその手すりまで寄り、その一番前に申し訳程度に付いているような白くて小さなボタンを押した。 あとから聞いた話だが、もともとホテルだったこの建物は外に呼び鈴を備え付けておらず、改築の際に設置したインターホンには若干手を加えて、屋敷全体に音が響き渡るようにしたそうだ。 「ピンポ〜ン♪」柔らかい音色が、小さな箱の中にこだました。 |
|
|
next to ... 第46話 吉澤 |
|
|
最初に戻る ■ トップページ |