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「モーニング娘。5年振りの再会と、今後のミンナの活躍を祈って乾杯!」 「かんぱぁーい!!!!」 「ベイベー!」2008年9月23日・午後6時50分。 最初で最後の、モーニング娘。同窓会が始まった。
カチ、カチ、カチ。 「オトナになったよねぇ、ウチらも」 「どーゆーこと? 圭ちゃん?」矢口がグラスを舐めるように口を一瞬だけつけワインの匂いにウッ、といった表情を浮かべ、すぐに隣の席のしみじみした表情の保田に話しかける。彼女は対称的に香りを楽しんだあと、グッと一気にあおる。 「だって、解散したときはウチら未成年が多かったじゃん。こうやってみんなでアルコールの入った飲み物で乾杯するのを、密かに夢見ていたんだ」 「あは、楽屋でライヴの打ち上げのときとかは紙コップだったよね、そういえば。中身ジュースで」 「そ、そ。まさにあの歌のとーり! ・・・久しぶりにやろっか、矢口」矢口はちょっと宙を見上げて悩んでいるようだったが、軽くうなずいた。 「せーの」 「「紙コップでYEAH、いいんじゃない」」矢口・保田のハモリに、4期メンバーの3人も続く。 「「「OH! YES! 気持ちが大事っ」」」 「・・・」その後が続かない。 「!・・・」食堂に気まずい空気が流れる。 誰もが知っている。 次のパートは、ここにいない後藤だということを。 「や、保田さん、ここにはバイクで来たんすか」高橋が沈黙を破る。 とにかく話題を切り替えなくちゃ、という気持ちが精一杯伝わってきた。 「うん・・・舗装していない道路走るの大変だったけど」 「うへぇ、そのカッコでバイク運転してきたのぉ?」石川は、頭に妙な感嘆詞をつけて感心する。 赤と紺。色は違うものの、奇しくもリーダーとサブリーダーは同じようなドレスに身を包んでいる。 「ちっがうよぉ! ここに到着してから、外で着替えたんだって!」 「そ、そこまでして!」 「うん、このドレスじゃなきゃダメだったの」そこで赤いドレスの飯田が、手話で近くの紺野に何か伝える。 「え? そうなんですか?」 「何? 紺野?」安倍が尋ねる。 「うん、保田さん、そのドレスって、あの、解散ライヴ終わったあとの打ち上げパーティに着る予定だった、んですか?」保田は静かにうなずく。 解散ライヴ直後に開かれる予定だった、メンバーや主要スタッフ・お偉いさんなどを招いての高級ホテルでの打ち上げパーティは、結局あの事件によって闇に葬られた。 「こーゆー機会じゃないと着れないから、アタシ。久しぶり―――そう、5年振りに着たんだけど―――けっこうダブダブでね、衣装詰めたんだ」 「うん、細くなった気がする」保田とは逆に、5年前に比べて気持ちガッチリとした体格になった吉澤が、たった今再会したときの彼女への第一印象を素直に打ち明ける。 「でも・・・あんまり人前に出なくなったから・・・けっこう今日は、気合い入っちゃって」照れ隠しだろうか、再びグラスのワインを一気にあおって料理に手を伸ばす。豆腐とエビのパルメザンチーズグラタンを一口食べて、無言でコクコク満足そうにうなずく。 「そだ! 料理冷めないうちにどうぞ!」石川が両手をいっぱいに広げる。そのわざとらしさに、矢口は(台本もないのによくやるよ、アンタ)と思ったが、アツアツのパンプキンクリームスープを口に含むと、その石川の自信のほどに納得するのだった。 「ん、おいひい!」 「ね、ね、梨華ちゃあん、コレどうやるの?」 「あいぼん、それはね、ほら真ん中をこうやってナイフで切れ目を入れてみて」オレンジ色に染まったキャロット風味のピラフの上に半焼卵が載っている。その表面上キツネ色に染まった卵のカタマリの真ん中にナイフでなぞるように切れ目を入れると、中でトロトロになっている黄身が一気に溢れ出してピラフを包み込むのだ。 「うわあ!」石川の周りの席のメンバーから、歓声が上がる。 「何?何?」と、安倍や保田は身を乗り出す。 やがてその「お作法」が石川を中心に伝搬してゆき、みんなが絶賛の言葉を並べながら「キャロット風味ピラフを半熟卵で包んだトロトロオムライス」を頬張る。
そのほかにも、メンバーの目の前には、季節の素材を随所に盛り込んだ特製フレンチが食卓を彩っている。 「おいしー!」 「ねえ、このオムライスの作り方あとで教えて!」 「このグラタン何入っているの?」どちらかというと焼き肉や中華といった「濃い」メニューが好みのメンバーが多い中で、この気品漂うコース料理で賛辞の嵐。石川の腕が、認められている証拠だ。 「ねえ、夕食開始って6時だったよね。もしかして私を待っていたの?」 「違いますです」高橋が首をぶんぶん振る。 「元々ちょっと遅れ気味だったんです。そうそう、保田さんこのフレンチって石川さんの手料理、作りたてなんですよ!」 「えええ! 全部!?」石川は照れ臭そうにテーブルの隅で肩をすくめながらコクリ、とうなずいた。 「そっか・・・」保田はワインを少々自分でも早いペースかな、と思いつつもグッとさらに自分の口へ流し込む。 (梨華ちゃんも、あんなことさえなければ今ごろいい奥さんになってたかもしれないのに・・・)保田はそう思うと石川の手料理は美味しいけれども、どことなく苦い味もするのだ。 |
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