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武道館爆破事件から4ヶ月が経過したその日まで、話はさかのぼる。 事件直後の加熱した報道合戦はある程度沈静化したものの、いまだに熱狂的だったファンたちの後追い自殺が続き、武道館症候群(ゴールデンオニオン=シンドロームと呼ばれた)といった形の社会問題として強く人々の心に根付いていた。直接事件の被害を受けなかった一般の人々にも、(かつての地下鉄サリン事件に代表されるような)深刻な心の病を植え付けた。
石川は爆破による怪我は完治したものの、しばらく実家に引きこもり療養する生活が続いていた。
そんな折、石川の母親は初めて自分の娘の身体の異変に気がついた。
しかし5ヶ月目ともなると、言い逃れは出来ないくらい石川の下腹部はハッキリと「それ」と分かる程にまで膨張していた。
―――妊娠。
「何考えているのよ、梨華! 「違うのよ、お母さん! 私は、私はこの子たちを産まなきゃならないの!」 「何が違うのよ、馬鹿なこと言っているんじゃないの! 「違うの・・・違うんだったら!! 理解して! お母さん!」ヒステリックにわめき散らす。 話し合いは平行線をたどるばかりだった。 実際、法的に妊娠中絶が認められているのは5ヶ月まで。無情にも、刻一刻と時は流れてゆく。 誰の目から見てもボーダーラインギリギリであることは確かであった。しかし、石川本人はあくまでも産むといって譲らない。姉や妹の説得も実を結ばなかった。 ついには自分の部屋のドアの前に家具を高々と積み上げて、完全に中に閉じこもり外部からの干渉を一切拒絶した。
追いつめられた石川の家族は、最後の強行手段に出ることにした。
だが天井裏から侵入する等といった綿密な作戦を立てたうえで、いざ家族が彼女の部屋に踏み入ったとき―――そこはすでに、もぬけの殻と化していた。
神奈川県警に、石川梨華の捜索願が提出された。 |
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