|
|
|
「ねぇ、さっきの話どう思う?」 「話って?」 「ニブいわねぇ、のの・・・いや辻ちゃんのことッ!」矢口は眉間にシワを寄せながら、居間のソファで向かい側に座っている紺野に詰め寄る。 紺野はさきほどのディナーの直後に出される予定だった、デザートのチーズケーキを一口頬張るごとに恍惚の表情を浮かべている。その最中のことだった。
晩餐会は終わった。
結局食堂の隣室である居間に腰を下ろしたのは、意外にも矢口と紺野のたった二人だけだった。
テーブルの上には5時間前の「おやつの時間」同様、お茶とデザートが並べられている。
矢口もさきほどそのケーキをひと切れ食べた。安倍がお土産で持ってきた、老舗「明治の館」ニルバーナの手作りチーズケーキは、ふわっとした舌触りで確かに絶品と呼ぶに相応しいデザートだった。
それにしても、あれほどのディナーを食べた後でもなお治まらない紺野の食欲。昔から女にとって甘い物は別腹とは言うものの、紺野の体調とは別に矢口はあることが気にかかる。 「・・・紺野? ちゃんと石川と加護の分は残してあるよね?」彼女の喰いっぷりを見て、果たして残りのメンバー全員の分を残すよう計算しながら食べているのか、矢口は心配になってきたのだ。 かつてモーニング娘。であった頃に楽屋に置いてあるメンバーのお菓子を、勝手に食べ尽くしたという「前科」がある紺野だけに。 「あたりまえじゃないですか〜、これは保田さんと吉澤さんから貰った分ですよぉ」 「紺野!」矢口は、ようやくこの紺野がどんな娘だったか徐々に思い出してきた。 「ねぇ、それよりおかしいとは思わない? ホントにののなんていたのかなぁ?」 「モグモグ・・・んん〜私もあんまりユーレイとか信じるタイプじゃないですけど」 「そっかぁ、やっぱ紺野も幽霊だと思うよね? 「・・・」頭を引っかき回す矢口とは対称的に、黙々とケーキをむさぼる紺野。 動と静。陽と陰。昔から様々な意味で正反対だった。二人だけでいると、そのコントラストがより一層際だつ。 「紺野、あなただけはマトモだと思うから言うけどね、やっぱりなんかこの同窓会ってキナ臭くない? ここだけの話。なんか久しぶりにモーニング娘。が集まった!!って感じがしないんだよねぇ」 「んご・・・何が言いたいんですか?」 「いや私の気のせいならいいんだけどね・・・なんだろう、不気味ってのか恐いってのか・・・もちろん懐かしいとか嬉しいとかもあるんだけど、素直に楽しめないってゆーか」 「・・・そんなことより矢口さん、石川さんのことは・・・何とも思わないんですか?」口の中に常に何かを含みながら喋っていた紺野が、急にかしこまって投げかけたその一言に矢口はドキっとした。さきほどまでの幸せそうで虚ろな目とはうって変わって、上目遣いの鋭い眼光が矢口にまっすぐに向けられていたからだ。 |
|
|
next to ... 第103話 加護と石川 |
|
|
最初に戻る ■ トップページ |