Last Updated:2000.06.01

     

 

「フィルズジェネシス」

  

 初期ジェネシスのカリスマ、ピーター・ガブリエルの脱退によって、バンドは存亡の危機に陥ったわけであるが、フィル・コリンズ主導のバンド運営によってこれまで以上にバンドとしての知名度が向上することになる。
 しかし、「静寂の嵐」を最後に、ギタリストであるスティーヴ・ハケットが脱退。バンドは最小ユニット3人となってしまう。ところが、ここでもフィル・コリンズ主導のバンド運営によってバンドはより一層、認知度を高めていく。そして3人編成になったあたりから一段とフィル・コリンズが主導するポップ路線へとバンドは突き進むことになる。アルバムを出すごとに従来のジェネシスの持ち前である叙情性は薄らぎ、ポップでキャッチーな作品へと変わっていくのであった。
 一方、こうしたバンドの変遷にオールドファンからは批判の声も聞かれる。つまり従来の叙情性を無視し、産業ロックへ成り下がったというものである。しかし、ちゃんとそれぞれのアルバムを聴けば、そうした批判は当たらないということが分かろう。つまりフィル、マイク、トニーのポップ性が叙情性と組み合わさって新しいバンドの世界を構築しているだけであり、ただ大衆受けするようなチープな曲は一曲もないということである。
 フィル・コリンズが主導したジェネシスは、アルバムを出すたびに独自のポップでヘビーな世界を表現し、シーンを賑わすことに成功する。それは、フィルを始めとするバンドメンバーの音楽的方向性が正しかったことと、ヴァリ・ライトを駆使した大規模なツアーが脚光を浴びたこともその一因と考えられよう。「そして3人が残った」「デューク」「アバカブ」「ジェネシス」とクオリティーの高いアルバムを次々と世に送り出し、いつの間にか超メジャーバンドへと進化していった。そして超ヒットアルバム「インヴィジブル・タッチ」を発表。バンドは頂点に達する。
 前作のヒットを受けて発表された「ウィ・キャント・ダンス」はクオリティーの高さでは他のアルバムに引けを取らない出来であるが、商業的には必ずしも成功したとは言えなかった。そうした影響と、ソロ活動での多忙を理由にフィル・コリンズは脱退。メンバーの顔の脱退によって、バンドは再び窮地に立たされることになる。
 しかし、ジェネシスは新メンバー、レイ・ウィルソンの加入によって甦り、「コーリング・オール・ステーション」を発表。バンドの存続を世に知らしめた。現在も息づいているバンドジェネシス。今後の展開が非常に興味深い。

 

 

 


ジェネシスの顔だった、フィル・コリンズ
現在超売れっ子のソロシンガー

 

And Then There Were Three <そして三人が残った> 

 

 以降のポップ化していくジェネシスの転機となった作品。ギターのスティーヴ・ハケットの脱退により3人となったジェネシスであったが、フィル・コリンズのポップ性、トニー・バンクスの叙情的かつモダンなキーボード、マイク・ラザフォードのギターさばきが絶妙な一体感をかもし出し、聴き応えのあるアルバムとなっている。しかし、それまでの大作志向は影をひそめ、より一般のリスナーを意識した作品に仕上がっている。

 アルバムから「フォロー・ユー・フォロー・ミー」というヒットシングルが生まれ、全体的に軽めの曲が目立つ。これに対して、オールドファンからは批判の声もあったが、こうしたスタイルに惹きつけられた新しいリスナーも数多く生まれた。

メンバー:フィル・コリンズ(vo,ds)、マイク・ラザフォード(b)、トニー・バンクス(key)

私の思い出:まさに受験時期に聴いていた曲ですな。…現役の頃の。田舎から都会の大学を目指して上京した頃を思い出しますな。個人的には冒頭の「ダウン・アンド・アウト」が好きですな。


1978年発表

Duke <デューク>

 

 ジェネシスで最も好きなアルバムを挙げろと言われれば、私はこのアルバムを挙げる。アルバム全体に流れるコンセプト、エネルギーは他のアルバムを圧倒する。より大胆に、ポップになった本作はもはやひと昔の叙情性はすっかり影を潜めてしまったが、フィル・コリンズが主導するポップ路線は世に認知されることになる。
 ジェネシスというと、アルバム「インヴィジブル・タッチ」がまず頭に浮かぶが、アルバム全体の構成力から考えるとこの作品がずば抜けているように思う。とにかく一人でも多くの人に聴いてもらいたい傑作アルバムである。
 このアルバムは、本国イギリスでヒットチャート初の1位に輝き、アメリカでも商業的に大成功を収める。

 冒頭の「ビハインド・ザ・ラインズ」から「ガイド・ボーカル」までの組曲といい、途中のシングルヒット曲「ターン・イット・オン・アゲイン」といい、最後の「デュークス・トラベル」から「デュークス・エンド」までの展開といい、文句のつけようがない。今でも聴くとアドレナリンがどくどく状態になる。

メンバー:フィル・コリンズ(vo,ds)、マイク・ラザフォード(b)、トニー・バンクス(key)

私の思い出:このアルバムに出会ったのが高校3年生の終わり頃。この年の下半期に最もハマったアルバムである(…ちなみに上半期はイエスの「トーク」)。それから何度となくこのアルバムを聴きまくり、そのつど期待以上の感動を与えてくれる名作。一生ものの作品といっても過言ではない。…ちなみにここのホームページのタイトルの由来はこのアルバムから。既にお気づきの方も多いと思いますが(笑)。


1980年発表

Abcab <アバカブ>

 

 フィルズジェネシスの怒涛のポップ攻勢は止まるところを知らず、ついにここまで来てしまった。この作品はホーンセクションの導入など、大胆な趣向を取り入れた、斬新なアルバムに仕上がった。もはや、昔のジェネシスとは全く別のバンドとなっていた。
 本作がこのような展開になった背景には、フィル・コリンズのソロアルバム(「夜の囁き」)の成功があるように思われる。持ち前のポップ性を表現したこのアルバムは、それまでのジェネシス以上の大ヒットとなった。この成功を背景にフィルは、ジェネシスにおいてでも、ポップで現代的な音楽を作りたかったのではないか。
 ただ、それまでの音楽キャリアと技巧によって、非常に綿密なポップアルバムとなった。ジェネシスはプログレという枠から飛び立ち、自らの音楽世界を構築し始めたのであった。
 もう一つこのアルバムの特徴を挙げるとすれば、本格的なアメリカ進出とその成功である。「トリック・オブ・ザ・テイル」(31位)から全米で着実にヒットチャートを上げていったのであるが、「そして三人が残った」(14位)「デューク」(11位)を経て、本作では7位にまで上ることになる。その後のアルバムは、発表する度必ずヒットチャートを賑わすことになり、ジェネシスの人気はアメリカにおいても不動のものとなる。

メンバー:フィル・コリンズ(vo,ds)、マイク・ラザフォード(b)、トニー・バンクス(key)

私の思い出:「アバカブ」の名前の由来は、アブストラクト(抽象的な)という言葉の造語だという。私の別サイトの名前の由来はこのアルバムから(笑)。


1981年発表

Three Sides Live <スリー・サイズ・ライブ>

  

 「アバカブ」発表後に出したライブアルバム(二枚組)。81年のワールドツアーの模様を収録したものである。ジェネシスの特徴の一つとして、ライブにおけるパフォーマンス、演出のすばらしさが挙げられよう。ヴァリ・ライトという舞台装置を使って繰り広げられる演出は、ピンクフロイドと並ぶ壮大なもの。フィルのエンターテイナーぶりが遺憾なく発揮されている。

 アルバムの内容は、「アバカブ」「デューク」からの楽曲が多数を占めている。その中で、メドレーでガブリエルズジェネシスのナンバーを二つ演奏している。「イン・ザ・ケイジ」(アルバム「幻惑のブロードウェイ」)〜「アフター・グロウ」(「静寂の嵐」)〜「ワン・フォー・ザ・ヴァイン」(「静寂の嵐」)のインスト、「サルマシスの泉」(「ナーサリー・クライム」)〜「イット」(「幻惑のブロードウェイ」)〜ウォッチャー・オブ・ザ・スカイズ(「フォックストロット」)の展開はこのアルバムの聴きどころ。超絶技巧のテクニックはライブでも健在で、アドレナリンがドクドクになるのは請け合い。お勧めのライブアルバム。

メンバー:フィル・コリンズ(vo,ds)、マイク・ラザフォード(b)、トニー・バンクス(key)

私の思い出:ジェネシスのスタジオテイクよりもクオリティーが高いので昔の曲はこっちの方がいいかなと思ってしまう。怒涛のインストパートを演奏するライブを聴くとジェネシスってまだプログレの世界にいるのかなと思ってしまう今日この頃である。
 このアルバムに収められている、「イン・ザ・ケイジ」のメドレーは、超お勧めである。スタジオテイクはピーター・ガブリエルの世界観から曲のイメージとしてすごく静かな盛り上がりに過ぎなかったのだが、フィルバージョンでは異様な盛り上がりを堪能できる。インストパートで「イン・ザ・ケイジ」から「シネマショー」(「セブン・イングランド・バイ・ザ・パウンド」)、さらに「スリッパマン」(「幻惑のブロードウェイ」)への移りようはたまらんものがある。


1982年発表

Genesis <ジェネシス>

 

 グループ名を冠したこのアルバムは、これまでのポップ化の流れとは違った雰囲気を我々に与えてくれる、ジェネシスらしい作品に仕上がっている。というのも、昔のジェネシスのおどろおどろしさを現代風にアレンジしたような内容になっているからだ。その曲目も、重く深い世界を構築し、絶妙の構成力で見事な表現に仕上げている。従来、オールドファンからポップ化に対して、批判があったものの、そうしたファンをも納得させるまさにジェネシスのアルバムとなっている。

 奇妙なムードで始まる冒頭の「ママ」、組曲「ホーム・バイ・ザ・シー」の深い雰囲気、ポップナンバー「ザッツ・オール」と、従来のポップ路線とはまた違った作品に仕上がっている。

メンバー:フィル・コリンズ(vo,ds)、マイク・ラザフォード(b)、トニー・バンクス(key)

私の思い出:この作品と「アバカブ」は現役時代に受験のために上京したあたりに購入した記憶がある。重いテーマが当時の心境を思い出させてくれる。このアルバムでお気に入りのナンバーは「ホーム・バイ・ザ・シー」組曲と「シルバー・レインボー」かな。重低音が心地よい作品。ラストナンバーの「イッツ・ゴナ・ゲット・ベター」もお気に入り。


1983年発表

Invisible Touch <インヴィジブル・タッチ>

 

 ジェネシスファンならもう何も説明はいらない超ヒットアルバム。エレクトロニクスを駆使し、さらにポップでキャッチーな曲構成を作り上げている。このアルバムに収められた曲のうち5曲がシングルカットされ、いずれもベスト10に入るというモンスターアルバムでもある。しかし、ただのポップバンドのような音作りではなく、ハードでシニカルな、ジェネシス特有の雰囲気は残されている。

 冒頭の「インヴィジブル・タッチ」は、最もヒットしたシングル曲である。プログレファンならずとも聴いたことはあるのではないだろうか。フィルのポップ感が爆発した感じを受ける。また組曲「ドミノ」はシニカルなジェネシス特有の世界が未だ健在であることを我々に教えてくれる。

メンバー:フィル・コリンズ(vo,ds)、マイク・ラザフォード(b)、トニー・バンクス(key)

私の思い出:購入したのは中学3年の終わりか高校1年の初めの頃だったと思う。先述した曲はどれも好きだが、他にも「トゥナイト・トゥナイト・トゥナイト」や「スローイング・イット・オール・アウェイ」もお気に入り。インストパートの「ザ・ブラジリアン」もジェネシスの演奏力の妙が聴けていい。


1986年発表

We Can't Dance <ウィ・キャント・ダンス>

 

 フィルズジェネシス最後の作品。前作「インヴィジブル・タッチ」から5年、これまでのポップ路線から、ちょうど「デューク」あたりの作風を彷彿させる作風で、ジェネシスは戻ってきた。以前のようなバリバリのポップスから一歩下がって、社会風刺をテーマにした作品を発表した彼ら。これまでのようなポップ感溢れる楽曲を期待していたファンにとってはちょっと肩透かしを食わせた格好だが、奥行きのある構成とメロディは傑作と呼ぶに相応しい出来に仕上がっているように思う。
 しかし、満を持して出したこのアルバムの商業的セールスの不調と、ソロ活動の多忙を理由に、メンバーの核であったフィル・コリンズはバンドを去ることになる。ピーター・ガブリエル脱退と同じく、ジェネシスにとってバンド存亡の危機に陥ることになった。

 内容的に、それまでのポップバリバリというものではなく、落ち着いた曲調が中心の作品。ポップ性を求めるファンにとっても、ガブリエルジェネシス的な叙情性を期待するファンにとっても、中途半端に感じたかもしれない。しかし、冒頭の「ノー・サン・オブ・マイン」「テル・ミー・ホワイ」など奥行きのある楽曲や、10分を超える大作「ドライヴィング・ザ・ラスト・スパイク」など昔のジェネシスを彷彿とさせる作品がアルバムに収められており、作品自体のクオリティーは他の作品と比べても必ずしも見劣りがしない。それまでのジェネシスの作品から離れて聴けば、すばらしい楽曲であることを認識してくれるはずである。

メンバー:フィル・コリンズ(vo,ds)、マイク・ラザフォード(b)、トニー・バンクス(key)

私の思い出:実はこれが私のプログレデビュー。出会いは、当時購読していた「FMステーション」という雑誌に、右のようなきれいなジャケットのニューアルバム紹介があったから。興味を持って買ったらこれが大当たり。中学3年の晩秋に何度も何度も聴き直したのを覚えている。実際、これがプログレなんだという認識は当時の私にはなかったのだが、何かに引き寄せられたような感じを受けなくもない。「デューク」とならぶ私のお気に入り。


1991年発表

Calling All Stations <コーリング・オール・ステーションズ>

 

 前作を最後に、バンドの中核であったフィル・コリンズが脱退。ピーター・ガブリエル脱退時と同じく、バンドは存亡の危機に直面する。バンドとしての最小単位、3人すら維持できない状態で、一時解散説さえ流れた。しかしジェネシスはシーンに戻ってきた。レイ・ウィルソンという新人ボーカリストの加入とともに。

 バンド全体に流れている雰囲気は、ポップ性は残しつつもヘビーでハードな感じ。そこ抜けのポップアルバムというよりは、内省的なロックアルバムといった趣が強い。シングルにもなった「コンゴ」もフィルズジェネシスのような大盛り上がり大会みたいな雰囲気ではない。これまでのジェネシスのアルバムから考えてみるとちょうど「ジェネシス」の頃のそれと似ている。
 しかし、正直なところ、バンドの中心メンバーで優れたエンターテイナーであったフィルの抜けた穴は余りにも大きい。そうした面でこの作品はあくまで過渡期のアルバムと考えたい。発表から既に3年近く経つが未だにアルバムが発売されないことに多少不安が残るが、今後の発展を期待して是非ニューアルバムを早く届けて欲しいものである。

メンバー:マイク・ラザフォード(b)、トニー・バンクス(key)、レイ・ウィルソン(vo)

私の思い出:前作「ウィ・キャント・ダンス」以降の新作を待っていた私にとって、フィルの脱退はまさに痛恨事であった。そしてフィル脱退後のジェネシスのアルバムと聞いても正直、不安は払拭されなかった。アルバム自体の内容は、フィルズジェネシスの功績が大きいだけに、必ずしも満足はしていないが、それでもシングルカットされた「コンゴ」や「ザ・ディヴァイディング・ライン」はお気に入りの曲である。トニー・バンクスのキーボードテクはフィル脱退後も冴え渡っているなと。…今後の作品に期待かなと。


1997年発表

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