Last Updated:2000.05.30

     

 

「クラシック・イエス」

  

 「現実逃避のメリーゴーランド」とも呼ばれるイエスのルーツは、1968年の初頭にジョン・アンダーソン(vo.)とクリス・スクワイア(b.)がロンドン郊外にある小さなクラブ「ラ・シャス」で出会ったことから始まる…なんてことはファンの間では余りにも有名な話。その後、メンバーを募り、イエスを結成するのだが、この現実逃避的・かつ理想主義的な楽曲の特徴を説明するには、余り意味のないことかもしれない。
  イエスは一度聴いてみれば分かる事だと思うが、すばらしい演奏技術を持っている。またその歌詞は何だか意味深長で正直よく分からない部分も多い。つまり怒涛の演奏を表現手段として、究極の理想郷を描くというのがイエスの真骨頂ということである。そしてそんな途方もない世界を描いている張本人こそが、ジョン・アンダーソンその人である。音楽雑誌のインタビューでも読んでいるこっちが心配になるくらい自分に(あるいは自分の世界に)酔っている。陶酔した彼にもはや怖いものはない。持ち前のハイトーンボイスを武器に、今までいろいろな理想郷を描いてきた。
  70年代初期は、ジョンの想像力、メンバーの音楽に対する探究心によって、後にプログレ史に残る名作という名の理想郷を次々と築き上げていった。「こわれもの」「危機」などがそうである。「サード・アルバム」から加入したスティーヴ・ハウ(g)とのコンビによって楽曲の想像面が強化され、リック・ウェイクマンら(…もちろんスティーヴも)の相次ぐ加入によってイエスは怒涛の演奏力を確立していく。
 もっとも、「トーマト」あたりからのクラシック・イエス(ここでは、デビューアルバムからドラマまでのイエスをこう呼ぶことにする)は、パンクロック全盛期の音楽界と時代の変遷によって相当苦しんでいることが作品に表れてくる。そして「ドラマ」を前に中心メンバーであるジョンが脱退。バンドもその後空中分解することになるのである。理想を追い求めたバンドが突きつけられたのは、紛れもない現実の世界であったのだ。

 

 


黄金期のメンバー
(左から、ジョン、スティーヴ、
クリス、リック、ブラッフォード)

 

The Yes Album <サードアルバム> 

 

 イエスが本格的にプログレバントとしての地位を確立したアルバム。イエスのギタリストとして現在も一員として活動しているスティーヴ・ハウはこのアルバムからメンバーになった。イエスの楽曲構成などはこのアルバムが原点となっているといって良い。「ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス」や「オール・グッド・ピープル」といった現在でもライブで演奏される楽曲はこのアルバムから生まれた。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、ビル・ブラッフォード(ds)、
トニー・ケイ(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:兄から譲られたテープで始めて聴いた。まだその頃はプログレ的な免疫がなかったため変な感じがしたのを覚えている。その後これほどイエスを聴くことになろうとは…。


1971年発表

Fragile <こわれもの>

 

 次回作「危機」と並ぶ前期イエスの最高傑作の一つ。キーボーディストにリック・ウェイクマンが加入したことで、クラシックの要素と音楽の奥行きが広がったと言われている。アルバム全体に感じられる緊張感はまさに壊れやすい当時のバンドの雰囲気を表しているようだ。
 1曲目の「ラウンドアバウト」やアルバム最後の「燃える朝焼け」もイエス史上に残る名曲。ライブでも必ず演奏される名曲中の名曲。ドラマなどの挿入歌になったこともあるのでご存知の方も多いのでは?またこのアルバムはメンバーそれぞれが中心となって作っている曲がある。例えば、8曲目の「ムード・フォ・ア・デイ」はギタリスト、スティーブ・ハウのソロナンバーだが、スパニッシュ調の楽曲がすばらしい。
 また、イエスのアルバムで欠かせない画家ロジャーディーンジャケットはこのアルバムから登場する。イエスの世界観がリアルに描かれている。
 とにかくイエスを語る上で欠かせないアルバムの一つ。クラシックイエスマニア必携の名盤。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、ビル・ブラッフォード(ds)、
リック・ウェイクマン(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:イエスのライブ(「トーク」時、高松公演)前に予習ということで購入。初めて聴いた時は正直奥深さが理解できなかった(苦笑)。

 


1971年発表

Close To The Edge <危機>

 

 前作「こわれもの」からのメンバーで作られた本作は、それまでのイエスの集大成とも言うべき完成度を誇る。3曲にまとめられたこのアルバムはイエスの最高傑作と言われている。このアルバムに収められている曲もライブでは必ず演奏される。複雑な曲構成でありながら、実際に演奏できるのだからその演奏力の凄まじさは分かるというもの。
 タイトル曲で4部構成からなる名曲「危機」は、18分以上にも及ぶ大作だが、聴くものを退屈させない充実した内容となっている。緊張感を感じさせる雰囲気から最後は安堵感をもたらす構成力は、プログレ史上の名曲と言われているだけのことはある。この曲もイエスファンなら必聴の1曲。
 このアルバムでシンフォニックロックの真髄を堪能できる。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、ビル・ブラッフォード(ds)、
リック・ウェイクマン(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:前期イエスの名盤…というかこの時期のプログレアルバムのほとんどもそうなんだけど、一聴しただけではなかなかその良さというものは分かりにくい。初めてこのアルバムを聴いた時は確か高校一年だったと思うが、「なんじゃこりゃ?」と友達に話したことを覚えている。
でも、高校三年時に行ったイエスの公演でその演奏力のすばらしさに感動して再度聴きなおした。


1972年発表

Tales From Topographic Oceans <海洋地形学の物語>

  

 「アルバムのタイトルはその時のバンドの状況を表すもの」とは「危機」の時にスティーヴ・ハウが言った言葉であるが、実際「危機」の完成を待ってドラムスのビル・ブラッフォードが脱退する。彼はその後、キング・クリムゾンのドラマーとして活躍し、メンバー交代が盛んに行われるも、現在までクリムゾンのメンバーに名を連ねている。
 さて、前作でこの上ない完成度を誇ったアルバムを世に送り出したイエスは、新たにアラン・ホワイト(ds)をメンバーに迎え、超大作とも言うべき作品を発表した。全4曲、二枚組でトータル80分を超える組曲という内容の本作は、ジョン・アンダーソン(vo)とスティーヴ・ハウ(g)が中心となって製作された意欲作である。
 もっとも、80分という超大作のため、楽曲の構成要素である緊張感にかける部分や歌詞の難解さから、当時のイエスファンをはじめとして広く受け入れられることにはならなかったようだ。また、メンバーのリック・ウェイクマン(key)もそうしたことが原因で翌年脱退することになる。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)、
リック・ウェイクマン(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:もともと「とっつきにくいアルバム」と言われていただけに、実際購入したのは、イエスのライブ後だったと思う。確かに80分という長さに違和感を覚えたが、勉強の間かけ続けていると次第に好きになってきた。前作、前々作と比べるとやはり緊張感には欠けるけど。


1973年発表

Relayer <リレイヤー>

 

 先述したように、「海洋地形学の物語」の内容に不満だったキーボードのリック・ウェイクマンが脱退し、イエスメンバーは軌道修正を迫られていた。そこで白羽の矢が立ったのがパトリック・モラーツ(key)。曲調としては、前作の反省からではないだろうが、従来のイエスにはなかったハード・ロック調の演奏がなされている。
 本作のテーマは「静」と「動」といった相反するものの対立と調和であろう。そのテーマが如実に現れているのが1曲目の「倒錯の扉」である。「戦い」と「平和」という対立軸をテーマに展開されるこの作品は、途中にハードなインストを交え、後に「スーン」として独立して演奏される穏やかなパートへとたどりつく。そうした楽曲の流れのすばらしさが何とも言えず快感である。
 作品全体に、「危機」のような緊張感と開放感を与えてくれる、そういう構成力が甦っている気がする。「こわれもの」「危機」といった作品に隠れがちだが、中期イエスの名盤であることは間違いない。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)、
パトリック・モラーツ(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:高校時代、登校するにはまず山を自転車で越えなければならなかった。そういう時に力を発揮するのが、このアルバムに収められている「倒錯の扉」のハードなインストパートである。朝っぱらからアドレナリンがドクドクと出て私の山越えに必要以上の力を与えてくれた。そして3曲目の「トゥ・ビー・オーヴァー」の穏やかな曲調が私の睡眠欲求を刺激するのだった(苦笑)。


1974年発表

Going For The One <究極>

 

 前作が発表された後、メンバーはそれぞれソロ活動のため、バンド活動を休止することになる。そして76年からレコーディングを始めるものの、パトリック・モラーツ(key)が脱退。その後釜に選ばれたのは、元のリック・ウェイクマンであった。
 プログレムーブメントが終焉を迎えつつあるこの時期、作品は比較的コンパクトに、しかし非常にまとまめられて作られている。イエス自身、このアルバムを「The New Yes Album」として世に送り出す予定だったという逸話が残っているように、新しいイエス像を確立させようとした意欲作である。特に最後の「悟りの境地」の曲の展開は圧巻で、チャーチオルガンにのせて展開されるイエスワールドは、確かに新天地に到達した感がある。
 バンドの関係もきわめて良好だった本作。ジャケットがモダニズム的な作品で有名なヒプノシスに変わっているところからもその意欲が感じられる。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)、
リック・ウェイクマン(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:最後の「悟りの境地」にある大盛り上がり大会的なフレーズを何度も聴いて1人悟りの境地に入ったような気分になっていた。この現実逃避のため、待っていたのは厳しい浪人生活であったという…。

 


1977年発表

Tormato <トーマト>

 

 パンクムーブメントの到来と産業ロックの台頭によって、現実から乖離した理想郷をテーマにしてきたイエスは、より現実的なものへと変革を余儀なくされた。そのターニングポイントとなったのが、前作の「究極」であり、それを大胆に推し進めていったのが本作「トーマト」である。
 したがって従来のような、クラシカル的な音楽性、叙情的な歌詞は全く影をひそめ、変わりにより現実的なテーマを現代的な音楽に乗せて歌うというスタイルなった。…良くも悪くも、従来のイエスの特徴は彼らが捨てた叙情的な世界観であったはずである。そうした特徴がなくなったイエスにそれまでのファンの多くは首をかしげたに違いない。…まあ裏ジャケをご覧になれば分かると思うが、あのイエスのメンバーがサングラスに皮ジャンって…そりゃアンタあんまりでしょって感じが今こうしてアルバムを聴きながら執筆している私自身感じているんだから、容易に想像できる。…もっとも社会が複雑化してくるこれ以降、「現実逃避のメリーゴーランド」イエスは浮世離れした理想郷と現実世界とのジレンマに毎回直面する事になる。
 ただ、既成の音楽の閉塞性を打破しようと生まれたプログレの精神がこのような状況でこうした作品を生むことになったことを考えると非常に興味深い。
 作品は、非常に軽快で率直なテーマを歌い上げたものが多い。かつての大作主義も意味深な歌詞もそこにはない。しかし、未消化ではあるものの、80年代イエスのやろうとしたことを不器用ながらやっているそんな印象を受ける。曲が軽くなった分、力を抜いて聴くことができる。
 

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)、
リック・ウェイクマン(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:確かに大作は減ったけど、このアルバムで好きな曲って意外と多いんだよね。高校時代の自転車による山登りにはこうした軽快な曲の方がアドレナリンがよく出るもので(笑)。

 


1978年発表

Drama <究極>

 

 世の変遷に組織がついて行かないってことはよくあること。例えば第一次世界大戦におけるイギリス。黒船来航、近代化に着手した江戸幕府。現実から乖離し、理想郷を描くといったテーマを堅持しつつ、より表現方法を現実化するという自己矛盾に陥っていたクラシックイエスもその例外ではなかった。結局のところクラシックイエスによる「ポップアルバム」へのメンバー間の考え方の違いにより、バンドの中心人物であるジョン・アンダーソン(vo)とリック・ウェイクマン(key)が脱退。変わりにテクノポップバンド、バグルスからトレヴァー・ホーン(vo.)とジェフ・ダウンズ(key)が加入し、そのメンバーでアルバムを作ってしまうという離れ業がなされた。しかしそうした応急手当の甲斐なく、クラシックイエスはこのアルバムを最後に活動を休止、解散してしまう。
 作品の構成だが、テクノ系人材の加入によりクラシックイエスにおけるポップという命題が少なからず達成できているように思える。楽曲自体も前作の「トーマト」よりもイエスしている感じがするから不思議だ。トレヴァー・ホーンの声がジョンに酷似しているのも違和感を感じさせない一要因となっているせいもあろう。しっかし、スティーヴのギターがやたらめったら元気がいいのがちょいと気になる。

メンバー:スティーヴ・ハウ(g)、アラン・ホワイト(ds),
トレヴァー・ホーン(vo)、ジェフ・ダウンズ(key)、クリス・スクワイア(b)

私の思い出:このアルバムの作品はジョンが復帰した90125イエス以降、決してライブなどでは演奏されていない。そんなわけでファンにはなじみが薄いのではないかという気がする。私自身もイエスなんだけどイエスじゃないなという感じがするアルバムである。メンバーが入ったり出たり、喧嘩別れしたり戻ったり、この無節操さもイエスである(苦笑)。

 


11980年発表

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