Last Updated:2000.05.31

     

 

「90125イエス」

  

 プログレバンドのメンバーは、それぞれが違うバンドへ移籍したり、違うバンドのメンバーと新しいバンドを結成するケースが多い。70年代の終わりごろから80年代にかけてそれは顕著に行われる。ビル・ブラッフォードがイエスからキングクリムゾンに移籍したこと、そしてエイジアの結成などがそうである。
 イエスが「Drama」を最後に空中分解した後、中心メンバーであったスディーヴ・ハウ(g)は、ジェフ・ダウンズ(key)を連れて、キングクリムゾン・EL&Pの残党とともにエイジアを結成。新たな一歩を歩み始めた。
 残されたメンバーは、クリス・スクワイア(b)を中心に「シネマ」というプロジェクト名でニューアルバムの製作に着手。そしてこのメンバーに新たに加わったのが、のちにイエスをヒットメーカーに復活させるのに重要な役割を果たすことになるトレヴァー・ラビン(g)である。彼はギターのみならず、キーボードなどもこなすマルチな才能を持った人材で、イエスを脱退している今も映画「アルマゲドン」のサントラを担当する売れっ子ソングライターである。
 こうして「シネマ」は本格的なアルバム製作に着手した。そこに再びジョン・アンダーソン(vo)が加入したことで、このバンドは再び「イエス」と名乗ることになる。

 80年代イエスはこうして誕生し、音楽性も現代的に生まれ変わって華々しくシーンに戻ってきた。…んが、イエスの歴史はこれ以降、落ち着くどころか混沌の時代へ入っていく。このメンバーで2枚アルバムを作ったものの、商業的な面とのギャップからジョンが脱退。黄金期のメンバーでイエスっぽいアルバム(「閃光」)を作ってしまう。そのメンバーと残されたイエスが合体、「結晶」というアルバムを発表。…その後また90125イエスとしてアルバム「Talk」を発表。それからほどなくトレヴァーが脱退。リック・ウェイクマン(Key)、スティーヴ・ハウ(g)が再加入して新曲を入れたライブアルバムを2枚立て続けに発表。…と思いきや、リック・ウェイクマンが脱退。変わりにビリー・シャーウッド(key、g)が正式なメンバーとして迎えられ(「Talk」ツアーのサポートメンバー)、「オープン・ユア・アイズ」を発表。そして最新アルバムではさらにイゴール・コロシェフ(key)が加入。「ラダー」の発表となる。

 わけの分からん離合集散の内幕には商業的なものがあるとも言われているが、それにしたって無節操極まりないメンバー交代である。しかしそうしたいつどうなるかわからないイエスだからこそ、我々も捨て置けないものがあるのだろうか…いや、そうでも考えないとやっていけないよ、全く(苦笑)。

 

 


現在のメンバー
(左から、アラン、スティーヴ、
ジョン、クリス、イゴール、ビリー)

 

90125 <ロンリーハート> 

 

 新生イエスの華々しいスタートを飾る作品にして、タイトル曲「ロンリーハート」はシングルチャート1位に上る快挙を成し遂げたアルバム。最近、車のCMで流れているから聴いたことがある人も多いかと。
 このアルバムから参加したトレヴァー・ラビンの活躍によってその後のイエスはヒットメーカーの一員となってヒットチャートを賑わすことになる。もっとも、クラシックイエスからのファンには賛否両論あるとは思うけど。
 ただ、このアルバムによって、「究極」以来のイエスの懸案であった、「理想郷と現実世界との融合」は果たしたといってもいいであろう。

 アルバムの内容は、「ロンリーハート」に脚光が浴びすぎていて余り語られないが、「イット・キャン・ハプン」「リーブ・イット」など秀作揃い。あの超絶技巧はそのままに良質なプログレポップが聴けるのだからたまらないものがある。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)、
トニー・ケイ(key)、トレヴァー・ラビン(g)

私の思い出:「Talk」のツアーでは、メンバーがこのアルバムのラインナップと同じだったこともあり、やたらめったらこのアルバムからの選曲が多かった…。しかもトレバー・ラビンくんがやたらめったら歌いまくっていたのを覚えている。


1983年発表

Big Generator <ビッグ・ジェネレーター>

 

 前作、「ロンリーハート」の大成功に気を良くしたメンバーが満を持して世に送り出した、新生イエス第二弾アルバム。今回のアルバムからは、プロデュースもトレバー・ラビンが主導的な役割を果たし、よりポップ感溢れる作品に仕上がった。
 ただ、セールス的には「ロンリーハート」ほどの成功を収められず、またバンドの急激なポップ化に嫌気したリードボーカル、ジョン・アンダーソンはこの作品発表後、メンバーから脱退する。

 「ロンリーハート」の成功が余りにも劇的だったため、このアルバムに対する評価は必ずしも高くない。メンバー間の不協和音や、急激な変化に対するファンの戸惑いもその背景にあると思われる。しかし、この作品は間違いなく「ロンリーハート」の延長上にあると同時に、新生イエスのたどり着いた一つの形でもあるのだ。このどーしようもないポップ感とエネルギーはもっと正当に評価されてしかるべきなのではないだろうか。

 内容的には「ラブ・ウィル・ファインド・ア・ウェイ」というヒットシングルも生まれ、まさにポップ、ポップ、ポップ満開の状況である。個人的に「ファイナル・アイズ」が好きな私はこのアルバムに対する評価も高かったりする。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)、
トニー・ケイ(key)、トレヴァー・ラビン(g)

私の思い出:まあ、トレバーくんがこんなに活躍しちゃったら、大黒柱であるジョンくんから不満の声があがるのも無理ないなと思ったこの作品。上にも書いたように、「ファイナル・アイズ」のバカ明るいコーラスにアドレナリンがどくどくと出ていた若かりし頃を思い出します。


1987年発表

Anderson Bruford Wakeman Howe <閃光>

 

 すっかりトレバー・イエスとなった、新生イエスに嫌気が差したジョン・アンダーソンが企画したプロジェクトは、何とクリス・スクワイアを除く黄金期のメンバー再結集という離れ業である。この時期、イエスは「90125イエス」と「ABW&H」という二大陣営に分裂する。日本的に言えば南北朝時代、世界的に言えば東西冷戦陣営ってとこか。どっちがどっちなんだかは別として。

 内容的には、黄金期のメンバー結集ということで、現在における「クラシックイエス」という形態をうまく表現した名盤といえよう。新生イエスの形について、イエスのポップ化が「90125イエス」の答えだったのに対し、あくまでクラシックイエスにこだわったスタイルで表現したこの作品はもう一つの答えであると言えよう。
 テレビ朝日系列の「ザ・スクープ」(土曜午後5時30分)のテーマソングとして使われている「オーダー・オブ・ザ・ユニバース」を始めとしてどれもイエスよりもイエスらしい作品に仕上がっている。
 まあ、喧嘩別れしてこんなもん作ったために現在のイエスでの公演でこのアルバムから演奏されることはまずないだろう…ああ、もったいなや(苦笑)。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、ビル・ブラッフォード(ds)、
リック・ウェイクマン(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:テレビ朝日の「ザ・スクープ」の曲ってこのアルバムを知る前から気になっていたわけだけれども、ちゃんと聴いてみると、すごく大仰なテーマだなと(笑)。


1989年発表

Union <結晶>

  

 「…アンタ方、喧嘩別れしたんじゃなかったの?」って思わずジョンに伺いたくなる呆気なさでイエスにおける南北朝の対立は解決した。ABW&Hと90125イエスがくっついて生まれたイエスは8人という大所帯となった。
 曲の構成自体は、ABW&Hと90125イエス(ジョンがボーカルで参加)それぞれが別個に行っているため、まとまりのないもの…とも言えなくもないが。それぞれ別個に聴けば二つのイエスを同時に楽しめるわけでもうこうなったらリスナーも無節操にならざるを得ない。
 シングルヒットとなったのは「Lift Me Up」。トレヴァー・ラビンが主導となった。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)、
リック・ウェイクマン(key)、スティーヴ・ハウ(g)、ビル・ブラッフォード(ds)、
トレヴァー・ラビン(g)、トニー・ケイ(key)

私の思い出:この時期になってくると、私もリアルタイムでイエスのアルバムを購入する歳になる。内容てんこもりのアルバムに得した気分になった。
確かイエスのアルバムを初めて買ったのはこのアルバムだったように思う。それからいろいろと購入するようになったんだな、これが。


1991年発表

Talk <トーク>

 

 8人編成イエスは、大々的に行ったツアー終了後にまたしても分解した。そして本作は、トレヴァー・ラビンがプロ根性を発揮して作った大作にして傑作。90125イエス側からのアプローチで作られたクラシックイエスアルバムである。
 プロデュースから作曲までとにかくトレヴァー大活躍のアルバム。1曲目の「コーリング」、そしてこのアルバムの聴きどころ「エンドレスドリーム」は名曲。ジョンとトレヴァーのコーラスも冴え、ポップに仕上がっている。
 このアルバムを最後に、80年代からイエスを支えつづけたトレヴァー・ラビンはイエスから去ることになる。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)、
パトリック・モラーツ(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:このアルバムが発売されたのは、私が高校2年の終わりごろだったと記憶している。3年になる前の春休み、上京したのだが、その時このアルバムをカセットテープに入れていった。この曲を聴くたびにその頃のことが甦る。私の思い出のアルバムである。


1994年発表

Keys To Ascension <キーズ・トゥ・アセンション>

 

 何が何だか分からない無節操メンバーチェンジは続く。前作「トーク」で渾身の作品を残したトレヴァー・ラビンとトニー・ケイはバンドを脱退。そして次なる本作はスタジオテイクを含むライブアルバムで、二枚組というもの。メンバーは、黄金期のメンバー、リック・ウェイクマン、スティーヴ・ハウが再加入。ちょうど、「究極」あたりの雰囲気での新曲を収録した。

 ライブはいわゆる名曲揃い。「シベリアン・カトゥール」やら「ラウンドアバウト」「アウェイクン」など、懐かしい曲が続く。新曲はかなりプログレを意識した曲調である。特に「ザット・ザット・イズ」は19分にも及ぶ大作。こうした大作を作れる世の中になったって非常にいいことだと思うのは私だけではあるまい。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)、
リック・ウェイクマン(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:このあたりになってくると、思い出って言うほど昔じゃないから…。しかし前作「トーク」の続編を期待していた私にとって、ライブアルバムだろうが、スタジオテイクが入った新曲があるのであれば、買うしかないという状況に置かれておりました。


1996年発表

Keys To Ascension 2 <キーズ・トゥ・アセンション 2>

 

 好評を博したのか何なのか、前作のライブアルバムの続編である。今回も二枚組であることには違いないのだか、丸まる一枚をスタジオテイクという代物。メンバーも「究極」の時期と同じだけあって、スタジオテイクもクラシックイエスしている。曲も相変わらずの大作志向。スタジオテイク1曲目は18分を越えるものに仕上がっている。

 内容は、一枚目のライブテイク、「危機」など名曲が入っている。まあこれだけのメンツだからこれだけの曲もライブで実演可能なんだろう。そして二枚目のスタジオテイク。クオリティーの高さはもちろんだが、「閃光」あたりよりもよりプログレ(クラシックイエス)を意識した出来となっている。「理想郷と現実との調和」というよりも昔のような「現実逃避のメリーゴーランド」的な仕上がり。でもそれはこれまでのキャリアに裏打ちされて、かなりハードな部分も聴かせてくれる。前作とのスタジオテイクと併せて、秀作であるといえよう。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)、
リック・ウェイクマン(key)、スティーヴ・ハウ(g)

私の思い出:前作が出て、すぐに本作が発売された(…というか、「オープン・ユア・アイズ」との時間が異様に短かった)のでちょっとびびったってのが本音ですな。


1997年発表

Open Your Eyes <オープン・ユア・アイズ>

 

 「キーズ・トゥ・アセンション 2」から程なく、このアルバムが発売されたわけだが、このメンバーには、リック・ウェイクマンの名前はなく、変わりにクリス・スクワイアと親しいビリー・シャーウッド(key,g)が加入していた。どうやらこのアルバム、クリス・スクワイアの幻のソロアルバムが元ネタになっているらしい。

 曲調は前作「キーズ・トゥ・アセンション」とは違ってポップに仕上がっている。ただ、トレヴァー・ラビン脱退後のイエススタイルを模索している段階で、コンセプトがはっきりしたアルバムとは言い難い。そういう意味では、「開眼」と銘打たれたこの作品ではあるが、当時は過渡期であったと言ってもいいのではないだろうか。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、スティーヴ・ハウ(g)、アラン・ホワイト(ds),
ビリー・シャーウッド(key,g)、クリス・スクワイア(b)

私の思い出:新人のように次から次へとアルバムを出すもんだから大丈夫かとかってにイエスの身を案じてしまった。前作「キーズ・トゥ・アセンション」との作品の継続性が余り感じられず、またゴタゴタでもあったかと曲を聴いて感じたものだ。しかし、「トーク」以来のちゃんとしたスタジオテイクアルバムの登場にまずは喜んだ。


1997年発表

The Ladder <ラダー>

 

 90年代後期からのイエスのゴタゴタはひとまずこのアルバムの完成度で来世紀にまで持ち越すことはなさそうだと考えるのは、甘いだろうか。前作「オープン・ユア・アイズ」から二年経って、イエスは新メンバーを迎え、さらにそのメンバーの潜在力を遺憾なく発揮してすばらしい作品を世に送り出した。目下のところ最新作である「ラダー」の登場である。
 前作「オープン・ユア・アイズ」の批評で「過渡期」と記したのは、この作品のクオリティが相当高いからでもある。80年代のようにいたずらにポップに走るのでもなく、かといって黄金期の真似事をするわけでもなく、本作は新しいイエス像を示すのに十分なものを出している。作品自体、10分以上の大作はないが、それぞれの中にさまざまな要素を入れていて聴くものに壮大な世界観を感じさせるものとなっている。
 今回新しく加入したのはイゴール・コロシェフ(key)。前作からサポートメンバーとして参加していたが、本作から正式メンバーとしてクレジットされた。マルチな才能を発揮するビリー・シャーウッド(key,g)とともに、ライブ・これからのスタジオテイクなどで大きな力となるのではないだろうか。

 このアルバム、捨て曲みたいなものがないのもその特徴だが、敢えて聴きどころを上げろといわれれば、「ニュー・ランゲージ」だろうか。一見アルバム「トーク」の「エンドレスドリーム」のような展開を見せるが、奥行きではこちらの方に軍配が上がるかもしれない。
 ともかく90年代最後の、そしておそらく20世紀最後のイエスのアルバムは質・量ともに高い作品に仕上がった。

メンバー:ジョン・アンダーソン(vo)、スティーヴ・ハウ(g)、アラン・ホワイト(ds),
ビリー・シャーウッド(key,g)、クリス・スクワイア(b)、イゴール・コロシェフ(key)

私の思い出:軽い気持ちで今回の企画を考えたものの、なかなか大変な作業だった。それだけイエスというバンドが奥深いというか無節操なのだろう。しかし、次に何が起こるのだろうというある種の期待を我々に抱かせてくれる稀有なバンドでもある。メンバー交代の度にその作品には新しい挑戦が見られる。
 結成から30年を過ぎた今でもその挑戦する勇気、湧き出る想像力を称えたい。ちなみに、私のメインホームページのタイトル「ラダー」はこのアルバムが由来。


11999年発表

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