今お気に入りのCD

最近買い込んで、気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。

SPANKY AND OUR GANG/SPANKY & OUR GANG(1967:mercury/ViViD)
LIKE TO GET KNOW YOU/同上(1968:同上)
Without Rhyme Or Reason/同上(1968:同上)

 phishの新譜(6枚組ライブアルバム!)を筆頭に、この欄で紹介したい盤はいろいろあるけれど、ここのところ遊びまくっていてじっくり音楽を聴けないのが歯がゆいところ。プロフィールを紹介するだけなら簡単だけど、せっかくならどこが気に入ったかをじっくり書きたいからね。
 この盤も入手したのは先週だけど、なんやらかんやらで紹介できるのが一週間先になってしまった。要するに、今週夢中になって聞きまくっていていたってことなんだけども。
 今回はスパンキー&アワギャングのデビュー盤から3枚目までの、一挙再発。日本による世界初のCD化だ。いかにも日本盤らしいつくりがする。
 今までCD化されたのはベスト盤が2回。
 1988年にオリジナルのベスト盤(この表現も変だけど、要するにメンバー自身が、再評価の意味合いはなく、オリジナル版と同様の熱意を持ってリリースにかかわっているという意味で)がリイシューされたのと、日本編集のベスト盤が1996年にCD化されていた。
 もともと僕がスパンキー&アワギャングに興味を持ったのは、山下達郎のラジオ番組を聞いてだ。毎年正月になると、達郎は大滝詠一を招いて対談を数週間にわたってラジオでオンエアする(新春放談ね)。この新春放談を1989年(もう10年前か。早いな)に萩原健太を加えて放送した時のことだ。
 そのベスト版が出たことを受けて達郎がラジオで「ライク・トウ・ゲット・ノウ・ユー」をオンエアしたのを聞いてぶっとんだ。
 上品でありながら躍動するリズムと、複雑でとてもきれいなハーモニー。さっそくCD屋にそのベスト版を買いに走ったことは言うまでもない。
 そういえば1989年にオンエア時の三人の会話は忘れられない。達郎が「ライク・トウ・ゲット・ノウ・ユーをかけようか」と言ったとたん、萩原健太が「この番組では、サンデー・モーニングとレイジー・デイはかかってますよ」ってすかさず受け、大滝が「サンデー・ウィル・ネヴァー・ビー・ザ・セイムはかかってないの?」とさりげなくつっこむ一幕があり、僕自身は聞いていて「とってもかっこいいな〜」と思ったのを今でも覚えてる。
 そのミュージシャンの音楽が大好きな3人の思いと、マニアックなこだわりが伝わってきたからね。

 さて。前置きが長くなったが3枚の紹介に移ろう。
 一枚目はまだ前哨戦という感じかな。後にさらに進化する複雑なコーラス・アレンジの萌芽はすでに見えるが、ジャグやヴォードビルにジャズにボサノヴァといった音楽を消化しきっていない感じがする。
 なんとなく、アメリカの古いホームドラマを見ている気がしてしょうがない。
 アレンジに使われるファズ・ギターや、リズム隊をくっきり片チャンネルに振ったミックスが多少古臭いからかもしれない。
 とっても上品なアレンジだけれども、ぽんぽん弾むリズムが心地よい。多分アレンジは同時代のアメリカにおいてさえ古臭かったと思う。だけど、跳ねるリズムとかぶさるふくよかなコーラスで、みごとにとびきりのポップスとしての魅力を生み出してる。でもまだぎこちないところがちょいと感じられる。

 二枚目になると自分自身の音楽に対する自信が感じられるような、しっかりした音作りを聞かせてくれる。1枚目では取ってつけたような感じがしたストリングスやホーンが、アレンジの一員としてしっかり溶け込んでる。「ゴージャス感をだしたいから、ストリングスいれよ」ってな感じじゃなく、「この曲にふくよかさとヴォーカルの土台をやさしく支えるためには、このストリングスがかかせないね」っていうふうにね。
 タイトル曲の「ライク・トウ・ゲット・ノウ・ユー」を通奏低音にして、しっとりと一本筋を通したかっこいいアルバム。

 三枚目。こんな音を作るまでに、デビューから1年かそこらってとこが信じられない。どこを切り取っても、とびきりのポップスが溢れ出してくる。ライブを彼らがどの程度重要視してたかはわからないけれど、このアルバムは完全にスタジオの多重録音の魅力を十分わかった上で作り上げた音楽だ。ライブでの再現性や生っぽさを無視している。(個人的にはライブ=レコードである必要はまったくないと思ってるけれども)
 メドレー形式で、一枚のトータルアルバムとして効けるつくり。ステレオ録音を最大限に生かし、右に左にコーラスや楽器が定位する。
 皮肉なことに「もっと歌がうまければなぁ」ととんでもないことを思ってしまうほど。緻密で複雑に絡み合う、夢の中のようなヴォーカルアレンジにリードヴォーカルが負けてしまう感じがしちゃうので。
 まあ、とにかく名盤だ。一聴の価値はあります。しっかりしたヘッドホンですっぽり耳を覆って、大きな音で聞くと魅力が倍増する。

 最後に質問をひとつ。この三枚は音がそこそこだと思うけど、ちょっと不満が残る。ちゃんとマスタリングをしたのだろうか。さすがに盤起こしではないようだが、どうも2チャンのマスターをちょっとマスタリングしてリリースしたような、音のしょぼさが気になる。
 もしマルチのマスターから(残っていればだけどね)リミックス・リマスターして出したら、めちゃくちゃかっこよくなって、1999年の今でも十分にリアルタイムの商品として成立すると思う。
 今、オールディーズ業界はレコード会社の付加価値による再評価のみでしか、楽しめない状況(マイナーな新譜もそういうところがあるけど)だ。リマスターやリミックス・新音源の収録を餌に、初回プレスのみを売り切ってそのままってな感じの再発が多い気がして仕方ない。
 だからこそ、せっかく再発するからには世界中のどこにもっていっても恥ずかしくないような再発をして欲しいな。オリジナルの音源を握っている以上、本家に本気を出されたらかなわないんだし。ミレニアムやサジタリアス、ビーチボーイズなんかもそうだけど。頼むよ、ほんとに。

for those who like PoP/Scott Brookman(1999:TWEE KITTEN/ViViD)

 こいつもヴィヴィッドからでた盤。上のスパンキー&アワギャングを買うついでに、物色してて見つけた一枚。
 ライナーノーツによれば、現在36歳で今までカセットテープで3作品とシングルを2枚出しているらしい。
 音楽的には「ペット・サウンズ」に多分な影響を受けたポップスが15曲。しかしハイラマズといい、「ペット・サウンズ」風といえるジャンルがすでに確立してしまった。僕が大好きなアルバムだから、それっぽい音がいろいろ聞けるのは単純に嬉しいけど、あの不安げに漂う浮遊感まで意識してアレンジした音作りを、誰かが実現して欲しいもの。今のところ「ペット・サウンズ」の表面的な感触のみをカバーしてるって感じがする。
 さて、構成的にはアルバムの前後をインストにはさまれて、コーラスを生かしたポップなヴォーカル曲が続く。バッキングは何人かをゲストに招いているほかは、全部スコット自身の演奏だ。
 ミドルテンポの曲を中心に並べていて、なおかつアレンジはゆったりしたキーボードの4つ打ちを生かした曲が続くんで、さらっと流して聞くと長い一曲を聞いてるかにも思える。
 歌声はテクニック的にはまだ努力の余地があるけど、甘くて魅力的な声といえるかな。
 滑らかなメロディもきれいでよい。アレンジの中心はやわらかいキーボードだ。飾り気ないキーボードが淡々とリズムを刻む上に、やさしくヴォーカルがコーラスと舞い降りる。
 しかし、時々妙にリズムがあわなくて不安になる。これは狙ってるんだろうなあ。
 ホームレコーディングっぽい、もこっとした音像も手作り感と孤独感をかもし出して面白い。ミックス的にも意識してもやもやした雰囲気を作り上げてるから、相乗効果でうまい効果を生み出してる。
 僕はこの盤を通勤中に聞いてたけど、やっぱりこれはインドアで聞くのが似あう小品かな。ポップスの密室性にこだわった一枚だ。

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