今のおすすめCD
最近気に入ったCDを中心に感想を書いてます。
したがって、特に新譜だけってわけじゃないですが、お許しを。
Arbor Day/緑化計画(2003:Studio
Wee)
どこまでも自由な音楽がある。
ソロは自然発生し、クラシカルな音像とフリーなサウンドが、いたって自然に同居する。
ジャズのビートすら、ここでは自由だ。
フリージャズは歯を食いしばるテンションを、演者や客席に強要するのでは?という固定観念がぼくにはあった。
ところが緑化計画のライブを見て、ぼくはその思い込みから解放された。
緑化計画のフリージャズは、するりと自由に舞っている。
緊張あふれる音も、もちろん存在する。
だがそれはミュージシャンらの自由なイマジネーションの結果。けっして予定調和の"緊張"じゃない。
美しくほのぼのした音が現れることが多い。
片山広明は強烈なブロウとロマンティックなフレーズを巧みに使いわけ、ムードをひらりひらりと切り替えた。
トシのパルスっぽいビートは音楽を煽り、早川岳晴のベースが力強くメロディアスに動く。
それら変幻自在な音を、翠川敬基のチェロがしっかり支えた。
音が力強い。本作では一つ一つの楽器がくっきり聴き分けられるのも嬉しい。
たぶん事前の打ち合わせナシで、即興的に録音されたと思う。
ところが場面の展開が実に鮮やか。息がぴったり合い、ドラマティックに音楽が変化する。
70年代前半頃なのか。日本のフリージャズ界で、独自の世界を築いたバンドがあった。
名前はNME(ナウ・ミュージック・アンサンブル)。
副島輝人著「日本フリージャズ史」に、パフォーマンスも視野に入れた刺激的なフリージャズの様子が記されている。
このNMEのメンバーだった、翠川敬基が現在率いるバンドが緑化計画。
結成はかれこれ15年に及ぶようだが、詳細はよくわからない。
いずれにせよ今回リリースされたCDが1stになるそうだ。
現在のメンバーは片山広明と早川岳晴、そして石塚俊明。過去の歴史は詳しくないが、少なくともここ数年は顔ぶれが固定された。
もっともライブでは、飛び入りもよく入る。
たとえ顔ぶれが加わっても、スケジュールの都合でメンバーの誰かが参加できないときですら。
それでも緑化計画の音はしぶとく成立する。それが魅力のひとつ。
どんなに状況が変わっても、翠川のチェロは微笑みながら全てを受け入れ、自分の音を紡ぎだす。
そんな緑化の今を、見事に切り取ったのが本盤だ。
緑化計画の定例ライブは西荻の「アケタの店」にて月一回。
だが本作はあえて定番をはずし、その店からほど近い「音や金時」にて、観客を入れないライブ形式で録音された。
定例ライブを全て録音し、テイクを厳選するだけで名盤ができたはず。
ところがそんな「いつもの演奏」の方式すら、録音に際し変える選択したところも面白い。
収録曲はライブでお馴染みレパートリーばかり。2002/9/9、たった一日で録音された。
全て翠川のオリジナル。全6曲"Maltinete"のみ、ぼくは初耳だった。ベースとチェロで美しく奏でられるこの曲、インターミッションってやつだろうか。
ラストの"フルフル"で激しく盛り上がる前、"Maltinete"コーヒー飲んで一息つく印象を受けた。
・・・いや、彼らの場合は焼酎のお湯割りかもしれない。
初めて緑化をこのCDで聴く人は、どんな感想を持つだろう。
緻密に優雅に、しかつめらしくサウンドを積み上げるさまを想像するだろうか。
それほどこの盤での緑化計画は隙がない。
翠川の美しいチェロをしこたま堪能できる。
隈取りした凄みのある豚のオブジェが、緑色の背景をバックにどでんと鎮座ましたジャケットが目印です。
そして気に入ったらなら。ぜひライブを一度は聴くべき。
どこまでも自由な緑化は、ライブごとにまったく違うアレンジで演奏する。
いつも緑化計画でありながら、流れる音楽はいつもちがう。