■護戦傷泣■


光が次第に闇に侵され
綺麗なオレンジが広がり
そして鮮やかな蒼は黒く染まっていく。

「ここまでにしよう」

護衛の剣豪は倒れたソールへ手を差し伸べる。

「もう少し…もう少しだけお願いします!」

そういうと自力で立ち上がる。
護衛の剣豪は仕方ないといわんばかりにソールから離れ
剣を構える。

「その根性はいつか役に立つ」

「いつかじゃダメなのです」

硬い意思の元言い返す。
それと同時に切りかかる。
軽く受け止められると受け流される。
受け流された勢いでそのまま回転し切り返す。
が、矢張り受け止められ押し返される。

次の瞬間剣が弾き飛ばされる。

「ゲームセット」

全く息の切れていない剣豪はソールを起こす。

「まぁ、そんなに早く強くなられると俺の立場が無いからな」

そういって不肖にも笑う。
ソールも顔に穏やかな笑みを浮かべて首肯する。

「さて、屋敷に戻ろうか」

そんな言葉がいつもどおり繰り返される。
しかし、いつもと森の気配が違っていた。

「何か…嫌な予感がするです…」

そういうと疲れきった身体を押して駆け出した。
走れば3分程でつく屋敷が今は凄く遠い。

屋敷につくと酷く静まり返っていた。
途端に屋敷の窓の一つから魔法の火炎弾が飛び出す。

「シルキア!!」

勢いよく扉を蹴り開けると大広間に3人見知らぬ顔が
シルキアと対峙していた。

「何者!!」

3人の男達は不気味な笑みを浮かべて
ソールへと振り返る。

「貴様らがここの主だな?大人しく死んでもらう」

そういうと一人が切りかかってくる。
剣を構えようとしたが剣は剣豪が一緒に持っているのを
刹那に思い出すと、身体を捻って一撃を交わす。

「お姉ちゃん!!」

駆け寄ろうとしたシルキアを阻むように残りの二人が襲い掛かる。
辛うじて体術で対抗するも段々追い詰められる。

「ソールの嬢ちゃん!!」

怒声ににも似た声とともに一つの剣が勢いよく飛来する。
相手がかわした剣を掴み取ると間合いをさっと取る。

「シルキアを援護して!!」

「わかってる!!」

二回の踊り場で悪戦苦闘しているシルキアの元へ剣豪が駆け出す。

「ここからです…」

一対一になったソールは疲れを吹き飛ばそうと集中する。

「勝てると思ってるのか?」

にやつく相手を元のともせず素早い動きで切りかかる。
ガキーンという鈍い音とともに剣撃が二三度ぶつかり合う。

――相手の剣筋が見える!

紙一重で相手の攻撃をかわしていく。

「貰ったです!!」

相手の振り降しを鮮やかにかわすと
胴を一閃した。
しかし、激しい金属音と共にソールの剣が砕ける。

「なっ…」

驚いて振り返ったソールは首を掴まれ
上に吊るし上げられる。
そう、相手は鎧を着込んでいたのだった。

「ふふふ…俺達は正規兵さ」

「ぐっ…そんな…」

頭の中にいくつもの疑問が浮かび上がる。

「せっ正規兵であろうと…負けられないのです!!」

指につけていた指輪が光り、黒色の剣が飛び出してくる。
その刹那に相手の顔を蹴り上げ一回転すると剣を取り
相手の喉下に目掛けて突き出す。

相手の悲鳴も無いままに血飛沫辺りを染める。
命を失っていく様をソールは石になったように見つめていた。

――わっ私が、殺した…?

身体が硬直する。
そして奥底から震えが流れ出す。

「ソールの嬢ちゃん!しっかりしろっ!」

いいざまに剣豪が一人切り飛ばすと
シルキアの魔法でもう一人が雷に打たれて崩れ落ちる。
そのもう一人を剣豪がトドメをさす。

返り血を浴びたソールはそのまま呆然とその場に座り込んだ。
愕然と自分の殺した相手の亡骸を見つめた。
駆けつけた剣豪が肩をしっかり掴む。
次第に剣豪の声が聞こえてくる。

「私が…殺したのですね…」

「そうだ、殺らなければ殺られていた」

静かに震える自分の手に目を落とす。

「初めて人を殺したのか…」

ソールは静かに首肯した。
荒れた屋敷の真っ只中、駆け寄ってきたシルキアを抱きしめて
ただ、訳もわからず涙を流した。