広い病院に相応しく、受け付けもデカい。
カウンター内では、10人前後の受け付け係が
忙しく動きまわっている。
とりあえず「初診」のカウンターへ行き、保険証を出し
初診用の紙切れに必要事項を書き込む。
無数の病人達に混じってしばらく待っていると、
名前を呼ばれて「今日は何科ですか?」と聞かれる。
迷った挙げ句、内臓関係だから内科だろうと思い、
「内科」と答え、内科受け付けへまわされる。
内科受け付けに診察券等を提出し、さらに待つ。
40〜50分程待たされ、ようやく名前を呼ばれる。
診察室に入る前に、看護婦に「どうしました?」と
聞かれ、「盲腸なので、切ってもらいにきました」と
答える。
目をまるくして驚く看護婦。
「盲腸なんですか?」
「今は大丈夫?痛くないんですか?」
等など、矢継ぎ早に質問を繰り出してくる。
とりあえず一通り説明した後、「手術するなら外科に
いかなきゃ」と言われ、外科にまわされる。
その看護婦が外科の診察室に入り、カーテンの向こうで
何やら話している。
「手術希望の盲腸患者(アポなし)」がやってきた事を
医者に伝えているようだ。
看護婦が振り向き、俺に中へ入るように促す。
カーテンを開けて中に入ると、白衣を着た小柄な人物が
椅子に腰掛けていた。女のようだ。
「ええと、盲腸だそうですね。今は痛くないですか?」
そう聞いてきた女医の顔は、山下達朗そっくりだった。
双子かと思うくらいにそっくりだ。
今後彼女の事は、山下達朗のアルバム名から取って
「コージー」と(心の中で)呼ぶことにしよう。
コージーは、先ほどの看護婦と同じ質問を繰り返してきた。
俺も先ほどと同じように答える。
そして「別の病院で診察を受けた」という事についての
話になった。
「紹介状は?」
「ありません」
「今日こっちに来ているという事を連絡した?」
「してません」
しばらく黙り込んだ後、コージーは俺に
待合所で待つように言った。
その表情はやや曇っているように見えたが、なにぶん
山下達朗なので、表情から気持ちを読み取るのは
難しかった。
とりあえず俺は言われた通りに診察室を出て、診察室前の
ベンチに腰掛けた。
しばらくして、外科から再度声がかかる。
診察室に入ると、メガネをかけた短髪の中年男が
笑みを浮かべて待っていた。コージーはいない。
何やら「自信」を感じさせる笑みだ。少々気に食わない。
いやに黒々とした顔色も鼻につく。
「私はね、世間で”盲腸”と診断されたものの殆どは
実は盲腸ではない、と、そう思っているんだよ」
訳のわからない持論を繰り広げる。知ったことか。
「ウチでも詳しく検査させて貰うよ」
さっさとやってくれ。盲腸に決まっているのだから。
「レントゲンと採血、再び、か」
そう思いつつ、またもや外で待つ。
だが、この病院の検査は、俺の想像を遥かに
越えるものだった。
〜続く〜
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