盲腸日記:第9話



第9話
「お尻から管を入れて、薬を注入しながら
レントゲン撮影を行います」
最悪だ。悪夢だ。
たかが盲腸の検査で、何故そこまでしなくちゃ
ならんのだ?

そんな俺の気持ちをよそに、モーター音をあげながら
ベッドが回転していく。
完全に横になったところで、指令室から女医が出てくる。
「向こう向きになって下さい」
言われるままに彼女に背を向けると、彼女は俺の肛門に
何やら塗り始めた。恐らくゲル状の麻酔薬だろう。

そして、激痛と共に管が深く差し込まれる。
薬が体内に流し込まれているのがわかる。
苦しみ悶える俺に、指令室に戻った彼女から
非情な言葉が投げかけられる。
「お腹を圧迫しながら撮影します。痛いですけど、
我慢して下さい」
ベッドから伸びたアームが、俺の腹に近づいてくる。
アームの先端には、マッサージ機に似た半球体のパーツが
取付けられている。

アームがかなりの力で押し付けられ、俺の腹を
踏みにじるかのように動きまわる。
ベッドは休みなく、小刻みに角度を変え続けている。
冷たい室内に、モーター音とシャッター音、そして
俺の嗚咽が響きわたる。

彼女から、引っ切り無しに指令が飛んでくる。
「右を向いて下さい」「左を向いて下さい」
「うつぶせになって下さい」「仰向けになって下さい」
ケツからパイプを出したまま、のたうちまわる。
指令室に目をやると、ジョイスティックでベッドを操る
彼女が見える。そして数人の医師が相変わらず
談笑している。

これは検査なのか?拷問じゃないのか?
絶望、悲しみ、苦しみを乗せて、ベッドは動き続けた。

〜続く〜


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