1階からエレベーターに乗り、何階かに到着。
1階と違い、フロア中に消毒薬の匂いが充満している。
黄色っぽい壁の廊下を、点滴を転がしながら
看護婦と二人で歩いていく。
急に正面が明るくなる。その一角だけが妙に白い。
先を行く看護婦について行く途中、「特1」「特2」と
書かれた部屋を見つけ、「特1」の中に目をやる。
神々しい光に包まれた部屋の中央に、骨と皮だけの
老人が1人、こちらを向いて寝かされていた。
そのベッドからは無数のコードが伸び、周囲を取り囲んだ
機械類に繋がれている。
人生の終末。彼は何を想うのか。
「特2」も全く同じ状況だ。鏡に映したかの様だ。
「生きている人間の来るところではないな」
そんな事を考えていると、通路行き止まりにある扉が
おもむろに開き、中へ促された。
光溢れる手術室へ、足を踏み入れる。
オペ着に身を包んだ看護婦に案内され、手術台に乗る。
周囲には、同じくオペ着の医師・看護婦が
少なくとも6人はいるようだ。
「え〜っと、誠!さん、盲腸ですね〜。
今は痛くないですか?」
妙に高いテンションだ。恐らく患者をリラックスさせる
ためだろう。室内には有線らしきBGMも流れている。
J-POPだ。これは、、、浜崎あゆみか。
「ええ。でもうっとうしいんで、ズバッと切っちゃって
下さい」
室内に笑いが起こる。
「威勢がいいね〜。じゃズバッと切っちゃいましょう」
会話の相手が男の医師に変わる。
書類を見ながらいくつかの質問をし、本人であることの
確認をとる。
その後も質問は続き、
「過去、大きな病気をしたことは?」
「麻酔を使って、異状が起きたことは?」
ガキの頃、歯医者で治療を受けた際に、麻酔が全く効かず
何本も打たれた挙げ句に高熱を出した事を告げる。
それを受けてか、医師は全身麻酔を選択。
酸素マスクのようなものを顔に当てがわれる。
「だんだんと、まぶたが開かなくなりますよ」
その声と全く同時に、急激にまぶたが重くなる。
だが、意識はしっかりしている。
周囲で、準備が着々と進められているのがわかる。
「パンツ脱がしますよ〜」
看護婦の声に「はい」と答える。脱がされる。
まぶたはどんどん重くなる。
その時。
あろうことか、BGMが「ダ・パンプ」に変わる。
「やめてくれ!ダ・パンプだけはやめてくれ!」
必死に叫ぼうとするが、口が動かない。
ダ・パンプの甲高い歌声にのって、俺は意識を失った。
〜続く〜
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