盲腸日記:第12話



第12話
暗闇。
人の声が聞こえる。男と女のようだ。
近くにいるのか。遠くにいるのか。何を喋っているのか。
よくわからない。

働こうとしない神経を無理やり集中させる。
目はまだ開かない。だが、うっすらとオレンジ色の
光を感じる。
そしてゆっくりとだが、次第に声がはっきりしてくる。
男1人、女2人。女2人の声には聞き覚えがある。
1人はおふくろ。もう1人は、、、親戚のおばさんだ。
男から、何かの説明を受けているようだ。

目を開けることに集中する。ゆっくりと目が開いていく。
3人の影が俺を取り囲み、見下ろしている。
視力の低い俺には、誰が誰だかわからない。
おふくろの声が何か話しかけている。よく理解できない。
緑色の影が、おふくろに何か説明している。
どうやら医師のようだ。

だんだん意識がはっきりしてきた。
体の感覚も戻り始めた。と同時に、背中全体が強烈な
ダルさに襲われているのに気付く。
おそらく、全身麻酔のせいだろう。
3人が次々に「傷は大丈夫か、痛くないか」と
問いかける。
「傷は痛くない。背中が物凄くダルい。痛い。」と
答える。
医師に「これは麻酔のせいか」と問うと、「おそらく
そうだろう。心配ない」との答えが返ってきた。

3人との会話はしばらく続いた。
とにかく背中が痛いので「ああ」とか「うう」とか
適当な返事を繰り返す。
そうこうするうちに医師がいなくなり、おふくろも
おばさんに送られて帰っていった。

顔を左に向ける。窓がある。外はもう暗い。
地獄の夜の始まりだった。

〜続く〜


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