盲腸日記:第14話



第14話
熱い。背中が熱を持ち始めた。
ダルさ、痛さに加えて、どうしようもない程の熱さが
背中一面を襲う。
まだ麻酔の残る足をなんとか動かし、かけ布団を
足元へと追いやるが、気休めにすらならない。

熱い。痛い。ダルい。息が荒くなる。
思わず「あぁ〜」と呻き声をあげる。
気のせいか、ほんの少し楽になったように感じる。
これからは、息を吐く時に必ず呻き声を
あげることにしよう。
暗い部屋の中に、俺の呻き声と老人の呻き声が
張り合うかのように交互に響きわたる。

ふと左腕に目をやると、腕から伸びた管の中に
色のついた液体が溜まっている。血液が逆流したらしい。
点滴はすでにカラになったいた。
ナースコールボタンを押し、看護婦を呼ぶ。

看護婦はすぐにやってきた。
「どうしました?」
「点滴が、、、」
彼女は「あら」と言い、新しい点滴と交換し始めた。
淡々と作業をしながら、彼女は
「おしっこはまだ出ませんか?」と聞いてきた。
呻き声をあげながら「ええ」とだけ答える。
「そうですか。おしっこがしたくなったら
言って下さいね。ちゃんと出さないと
内臓に悪いですから」
"盲腸の後は屁"だと思っていた俺には意外だった。
どうやら、屁よりも小便の方が重要らしい。
彼女は作業を終え、そそくさと帰っていった。
そして再び、呻き声合戦が始まる。

何分経っただろうか。全くわからない。
10分と経っていないように思えるが、実際には
かなりの時間が経過しているのかもしれない。
背中が異様に熱い。痛い。ダルい。
限界を感じ、再度ナースコールボタンを押す。

やってきた看護婦に、背中が辛いと訴える。
今度は右を向かされる。
一瞬だけ楽になるが、すぐに熱と痛みとダルさが
襲いかかる。
やはり辛い。もう寝ている事自体が耐えられない。
その旨を伝えるが、彼女は面倒臭そうな顔をして
「我慢してもらうしかないですねぇ」と
答えるだけだった。

そして彼女は、また小便の話を始めた。
どうやら今の彼女には小便の事しか頭にないようだ。
「しびんを持ってくるから、ちょっと
頑張ってみましょう」
そう言って、しびんを取りに帰る彼女。
「マジかよ。小便マニアめ」
逃げ出したい気分だったが、今の俺には
そう思いながら天井を見つめる事しか出来なかった。

〜続く〜


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