盲腸日記:第15話



第15話
速かった。
看護婦が、しびんを持ってやってきた。

俺はしびんが嫌いだ。
何と言うか、重病人専用器具みたいなイメージが
あるのだ。
使っている時の、周囲の哀れむような目。耐えられない。

よほど嫌そうな顔をしていたのだろう。
彼女は俺の顔を見て「、、、自分でやりますか?」
と聞いてきた。
自分でやった方が、ちょっとは哀れさも減少するだろう。
とりあえず「ええ」と答える。
彼女にしびんを渡され、手術着の前をまさぐる。
パンツを履いていない事に始めて気付く。
何やら、包帯のような生地の布が巻かれているようだ。
辛うじてチンコは隠れているが、かなりゆるめに
巻かれているため、下着の意味は殆ど成していない。
横からチンコを出し、股間に置いたしびんの口に
当てがう。

最初は脇で待っていた彼女だったが、気を使ってか
席を外す。
しかし、小便は出ない。出るわけがない。
元々出そうな気配もない上に、この屈辱的な姿。
何よりも、背中の激痛。熱。ダルさ。
今の俺は小便どころではないのだ!わかっているのか!

ほどなく、彼女は戻ってきた。
「出ましたか?」
「いや、出ませんね」
困ったような顔をした彼女から、衝撃的な言葉が
飛び出す。
「う〜ん、頑張って出して貰わないと、おちんちんに
管を入れて、無理やり出さなきゃならないですよ」
「ええ?」
何だと?この女、正気か?

いぶかしげな顔をして、焦る俺。
下腹部に意識を集中させるも、まったく小便は出ない。
背中の痛みだけが増していく。
そんな俺を見兼ねてか、彼女から
「ちょっとトイレに行ってみましょうか?その方が
出やすいかもしれないし」という提案が出される。
二つ返事で「はい」と答える。
しかし、俺は歩けるのか?歩いていいのか?
鼻に入れられているコードはどうするんだ?
彼女に聞いてみると、
「少し位なら大丈夫ですよ」との答え。

嬉しい。本当に嬉しい。
しびんやら小便やらの事よりも、背中を布団から
離せる事が何よりも嬉しい。
これで少しは背中も冷えて、楽になるだろう。

〜続く〜


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