盲腸日記:第18話



第18話
小便は流れ続けた。
何回か尿道に痛みを感じたが、大したものではなかった。
何も考えずただ天井を見つめ、ひたすら小便を垂れ流す
俺のもとに、看護婦が戻ってきた。

「出ましたか〜?」
「はい」
「じゃあちょっと失礼しますね〜」
俺の股間からしびんを取り出しながら、彼女は
「あら、管抜けちゃってますね」と言った。
あの痛みは、管が抜ける際のものだったようだ。
彼女はしびんの中の尿を確かめ、
「はい、それじゃあ後はゆっくり休んで下さい」と言い、
俺の着衣を直して帰っていった。

地獄からの解放。安堵。
そこに「嬉しさ」なんぞは微塵もなかったが、
とりあえず気持ちは落ち着いた。
後は、もう眠るだけだ。
静かに目を閉じ、俺は眠りについた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

熱い。痛い。体中が悲鳴をあげている。
たまらず目を開ける。真っ暗な部屋。そして天井。
どうやら、何分と経っていないらしい。
眠る前と全く同じ景色。老人の呻き声。血圧計の音。
ただひとつ違ったのは、俺の体の痛みだった。
麻酔が完全に切れたようだ。腹が猛烈に痛い。
背中の痛みも増している。熱も上がっているようだ。
息を吐く際に呻き声をあげる「あの呼吸法」を、
再度開始する。
が、前ほどの効果はあがらない。

背中の痛みだけでも和らげようと思い、脇腹の激痛に
耐えながら体を左に向け、支えの枕をセットする。
が、これも効果はなかった。
枕を当てた所が猛烈に熱くなる。あわてて枕を外す。
その勢いで、枕はベッドの下へ。
右腕を使って背中を必死にさする。
血圧計のコードが根元から抜け落ち、音が止まる。
俺の呻き声が、老人のそれよりも大きく部屋に響く。

もう俺だけではどうにもならない。
たまらずナースコールボタンを押す。
呼んだところで「我慢して下さい」と言われるのが
オチだとわかっていても、押さずにはいられなかった。
反応はなかった。
多分、他の事をしていて忙しいのだろう。
そう思い、しばらく待ってみることにする。

遅い。来ない。
もう一度押してみる。
やはり反応はない。
もう少し待つ。

来る気配が全くない。
「もう、遠慮はいらないな」
俺はそう思い、ボタンを連打した。
ありったけの怒りを、その指に込めて。

〜続く〜


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