通信業界における業界再編の現状とその課題

                                                  (2000.1.11)

                            
1.通信業界の現状

 現在通信業界を代表するものとしては、既に日本では数年前から持っている事が当たり前となってし
まっている「携帯電話」(PHSを含む)がある。
そして、それら無線移動体通信とは対極に位置し、これから大きな成長産業になろうとしているのが有
線高速通信である。これは光ファイバーケーブルを介して提供されるサービスで、既に都心の一部では
外資系企業の参入もあり、開始しているものである。
 これらのサービスをめぐる企業同士の競争も国内企業だけに留まらず、外資系の企業も多く参入して、
ますます競争が激化している。むしろ外資系企業の方が積極的で、なかなかその重い腰を上げようと
しない日本企業にさきがけてその戦略を展開している状況である。

 このように激しい動きを見せている通信業界ではあるが、いままでの産業構造とは少し違う部分が
出てきている。というのも、今までは携帯電話なら携帯電話事業だけを、CATVならCATVだけを、
という風に新たな事業に参入してより事業を拡大しようとする場合でない限り、単一事業だけの経営
で十分だったのが、これからはそれだけではやっていけないという現実を半強制的に市場の需要か
ら押し付けられる事となってきているのだ。
これはインターネットを中心とする現在のコンピューター社会が、様々な形態でのネットワークによっ
て一つの大きな網に引っかかっていることが深く関係している。消費者サイドからこのインターネット
を中心としたコンピューター産業に関わる事になると、すべての「情報」がつながって見えるため、そ
のサービスを受ける際にすべてのサービスを同時に提供してもらえると勘違いしてしまうのである。
しかし、実際にはその情報、サービスの一つ一つは別々の企業が提供しているもので、同時に同じ
所からそれらのサービスなどを受ける事はできない。
 これが今までの流れであったが、現在そしてこれからのニーズとしてはよりマルチなサービスが求
められており、企業としてもそれに答えて行かなければ生き残れないということで、最近の通信業界
におけるM&A(提携を含む)などを手段とした事業拡大、事業再構築(リストラクチャー)がすごいス
ピードで行われている。


2.有線通信業界におけるM&A

 第一種通信事業者である日本テレコムがBT(英)、AT&T(米)と戦略的資本提携を結ぶ事に調
印した。これはグローバルなシームレスサービスを顧客に提供することを含め、多分野にわたる業務
上のシナジー効果を発揮することにより、日米欧での競争力を強化し、情報通信事業における各社
の地位をさらに確固たるものとするため、包括的提携関係を構築することにしたものである。内容は
BT及びAT&Tが日本テレコムの第三者割当増資を引き受けることにより資本関係をもつこと、BT
及びAT&Tの日本国内子会社を日本テレコムに統合すること、といったものであった。
 日本テレコムは、BTとAT&Tが昨年設立を発表した国際通信合弁会社の日本及びアジアにおけ
る重要なパートナーとして、多国籍企業を中心にサービスを提供する。このことで、日米欧を含む全世
界でグローバルなシームレスサービスをより高度に提供すると同時に、データ通信分野、IP分野、移
動体通信分野などを中心に大きく成長することが期待される日本市場において、より強固な競争力を
確保することができると予測される。
 日本テレコムとそのグループ企業は、企業から消費者まであらゆる顧客層に国際、国内、データお
よび移動体などの通信サービスを総合的に提供しており、その加入者総数は携帯電話の630万回
線、インターネットの30万加入を含めて、約2300万回線になる。また、同社はJR鉄道沿線に敷設
された全長10,000kmにいたる全国光ファイバーネットワークと世界222カ国・地域につながる国
際ネットワークを保有し、またIPベースの次世代型ネットワーク「PRISM」や第3世代携帯電話事業
等、成長分野へも積極的に事業展開を行っている。特に全国に敷き詰められた光ファイバーネットワ
ークを保有している事から、今後様々なサービスが期待され、またそれに付随した様々なコンピュー
ターサービス会社からの提携もあり得るだろう。


3.新通信時代に発生する提携関係

 このように、通信事業での生き残りをかけ提携関係を結ぶその目的には、自社のネットワークだけ
では多用なニーズには対応しきれないために、他社と提携関係を結びそれぞれのネットワーク及びイ
ンフラを共有する事で自社のアイデンティティーを高めていこうといったものがほとんどである。
こうした中で、最近、今までになかった産業が出てくることで新たに発生してきている提携関係もある。
それはもうコンピューター業界だけには留まらないもので、家電メーカー、音楽メーカー、自動車メーカ
ー、また航空会社なども巻き込んでの総合プロデュースである。
 まず、情報家電である。長年言われてきた情報家電がここにきてついに現実のものとして市場に並
び始めた。これは家庭内にある家電製品すべてを家庭内ネットワークとして結び付け、管理していこう
というものである。
その家電の対象は、TV、ゲーム機、VTR、ビデオカメラ、パソコン、電子レンジ、冷蔵庫、エアコン、
照明、洗濯機など考えられる家電製品すべてである。これらの製品はすべて別々の企業の製品であ
ると言っても過言ではない。家庭内にある家電製品すべてが同一メーカーだという人の方が少ないの
ではないだろうか。そうするとまず、これらを結びつけるネットワークを構築するメーカーが出てくるだろ
う。そして、これらのネットワークを管理するものとして電力メーターをサーバーにするという考え方が
最も主流であるが、ここにまた電力会社が関係し、当然セキュリティーのことを考えると、警備会社も
加わってくるだろう。そして最後にこれらネットワークに乗せるサービスを提供する企業がいるだろう。
 このようにこれまで単一で働いていた家電製品すべてをネットワークでつなぐことで、今までやってい
たように自社だけのネットワークやインフラでサービスを提供しつづけることは難しくなってくる。そこに
生き残りをかけた新たな提携関係が生まれるのである。
 そしてそれは当然日本国内に留まらない。情報に関してのみ言えば、アメリカに行きたくても、イギ
リスに行きたくても、インターネットを使えばそこにある情報を簡単に取ってくることができ、またそこで
動く資本を自分の思うがままに金融機関にネットワークを使ってアクセスし流用することができるだろ
う。そうなれば国内の企業が海外の企業と提携し、海外でのビジネスに進出し、海外の企業が国内
の企業と提携し、国内でのビジネスに進出するための制約はかなり減ったと考えていい。これは国
境の壁だけではなく、業界同士の壁をも壊すことを意味し、新たな企業間の関係が生まれるというこ
とを示唆している。
 

4.まとめ

 今回取り上げた提携の事実とタイプはほんのごく一部ではあるが、これらは無線なり有線なり、ま
た衛星なり何らかの手段による通信で様々な「モノ」、「コト」がネットワークでつながれることによっ
て、そこに多種多様のサービスが提供されることになる。そして、それはそこに新たなビジネスチャン
スが発生することを指しており、多くの企業が集まってくることを意味している。これだけのボーダレス
で全くと言っていいほど業界の境目がない世界では、一社単体の持ち得るネットワーク、インフラでは
とても生き抜いてはいけないだろう。とすると、そこに利害関係の一致した企業連合が様々な形で提
携関係を結び、オンリーワンになろうと競争は激化していく。
次に市場では何を望まれているのか、そこをすばやく判断し、自社にあった企業と提携関係を結ぶこ
とで強くなることがこれからのキーワードになるのではないだろうか。