2001/09/01 this ic ワンマンLIVE@On Air nest

- 東京デージネーランドVol.4 -

 

SET LIST

01

 悲しくてやりきれない / フォーク クルセダーズ

02

 Dark path love

03

 金の星

04

 のち晴れ

05

 Don't let me be lonely tonight / James Taylor

06

 アレ

07

 宇宙

08

 sympathy

09

 like a bird

10

 Listen to the music / The Doobie Brothers

11

 Shake - 愛の招待 -

12

 No more noise

13

 アイタイ/キモチ

14

 Wow wow wow

ENCORE
15

 Superstition 迷信 / Stevie Wonder

 

 

 まずはステージにヴォーカル伊良皆誠が1人現れ(正確には謎の笑いの場面があったが、それはレポの流れ上省略する(笑))キーボードに向かい『 悲しくてやりきれない (フォーク クルセダーズ)』弾き語りした。これは前回のライブでの約束だった。 やさしく鍵盤にふれる。静まりかえるnestにピアノ音が響く。歌声はあまりに切なく美しい。言葉がひとつひとつ空間に染み渡り、胸にぎゅっと来る。息をのむ。ため息がもれる。 キーボードの前に「ピアノリサイタルにようこそ」なんてジョークめかした張り紙をしたりして「ワンマンのお楽しみコーナー」が始まるのかと思えば、とてもそれではすまされない1曲。ワンマンLIVEの最高にドラマティックなオープニングである。

 

 そしてギタリスト知念輝行登場。アコギ(Godinの)を抱いてバララ〜ンと弾くその音はド迫力の美しさ!澄みきった強く深いギターの音。一瞬にして鳥肌が頭のてっぺんまで駆け登る。奏でるは『Dark path love』。魂持って行かれそうなほどいい音だ。複雑で気持ち良いリズムを刻むカッティングの鮮やさ、独特のコード使い、知念ギターの色が空間を染める。普通ライブクライマックスの爆発ソロ等で味わいそうなアドレナリンを、最初のアコースティック曲で感じてしまった。

 -月の光の中で心が静かに叫んでいて空気を振動させる-『Dark path love』はそんな感じの曲だ。そして今日伊良皆ヴォーカルのそれは一段と生々しい。…そう、とても生々しい。ひそやかに激しい。なんとなく声が違う。ギターとヴォーカルのみのライブで感じる、清々しい緊張感のなせるわざなのか? オーディエンスは呼吸も忘れて曲にすいこまれているみたいだ。曲の鼓動に同調して体がリズムをとっている。

 

 続いて斉藤光隆登場。ベースが加わって金の星となる。華やかでやさしいてるぼーギターと低く甘いみったかベースとが合わさると、艶やかな音の厚みが生まれる。その美しさよ! んー、大人の恋の歌だ。極上のしゃれたラブ・ソング。ハッピーなスウィングに手拍子をとる聴衆の口元にはつい微笑が浮かぶ。…なんて暗くて見えるはずはないけどね、絶対そうだと確信する。JAZZで踊る彼女達のロゼ・ワインが似合いそうな微笑が肌に感じられるのだ。

 それにしても今日の伊良皆ヴォーカルの印象だが、やはりいつもと少し違うみたい。何か語りかけるものが一層強い。どう表現すればよいのか・・・単語を発音する息遣いのきれはしまでもが完ぺきな音楽の1部みたいな表情の豊かさ。言い換えれば一言・・・すごい。

 

 さらに助っ人パーカッション田辺シンイチ氏が加わってのち晴れ。ラテンな明るさとノリが気持良いこの曲に、クールさが加わってきた感じがする。「クール」という言葉も色々なニュアンスで使われるが、私が言いたいのはアメリカ映画なんかでイカしたやつを見て、ちょっと目を見開き思わず口にしてしまう「Cool!」という感嘆詞だ。軽快なパーカッションと、情熱的リズムを刻むギター。 クーール!  そしてイラミンの声。 ワオ!! どうも今日のこの人の歌声、特に低音にクラクラくる。もともとどちらかと言えば中〜高音の素晴らしいヴォーカリストなのだが、今夜は低音の甘さに何度もドキッとさせられる。

 

 そして本日風邪のためお休みのドラマー浜崎大地にかわって高尾トシユキ氏登場。『Don't let me be lonely tonight / James Taylor』 ぐっと大人のバラードを聴かせまくる。(さっきまでの大笑いMCが嘘みたい(笑))ドラムスが、アダルトなみったかベースがゆるやかなリズムを印象的に渋く響かせる。

 イラミン、ささやくように、ある時は "歌声を泣かせたり" … 変な表現だけれど、伝わるかな。本当に泣くわけじゃなくて… 繊細な表情豊かなその歌声にオーディエンスは静まり返って聴き入る。

 

 ここで新曲登場!!(この時点でタイトルは無かったが、後に『アレ』と発表) どんな曲かって?何風なんて説明は出来ない。まぎれもなくthis icそのもの。イントロからリズミカルで思いきり「らしい」コード使いのカッティング。らしいと言ってもそれは「this icの他の曲と似ている」って意味じゃないですよ、もちろん。わかっているとは思うが念のため。それどころかすごく新鮮で今までに無い感じだ。メロの良さ、グルーヴ感、何もかもがすごい曲だぞ。 なるべくこの言葉を使わずに説明したいと思って書いてきたけれど、こう言うしかないな。 かっこいい!! 非常にかっこいい。 イントロ〜Aメロ(歌いだしの部分ね)のかっこよさなんてちょっとキザな位に決まっている。それがサビにかけて自由にガンガン歌い出し、ごっきげんな熱さに気持ち良くはじけていく。

 初めて聴いてこんなにも歌詞がすんなり飛び込んでくるのもさすがだ。その言葉にあっという間に夢中になっている。誰もが「これは自分のことなんじゃないか?」と思える真実がある。あまりに日常的でしかもあまりに大切なことで、陳腐な表現でだいなしにしてしまうのがこわいような類いのものを、this icは最高にいかした音楽にして見せたのだ。

 

 5曲をアコギで弾いたてるぼーは、ここでようやくストラトに持ち替え『宇宙』のイントロを弾き出す。this icが、LIVEが全力疾走しはじめる。

 曲のラストにたっぷりソロ・コーナーとなった。まずはギターソロ。軽めに入って絶妙なニュアンスと音で楽しませて徐々に激しく盛り上がっていく。指が走る、すべる、チョーキングする。ハートをわしづかみにされてめちゃくちゃにぶんまわされてガシガシ揺さぶれているような気分にさせられる音だ。そのワイルド系の音使いとプレイに、最近見たジミヘンのLIVE映像が一瞬頭をかすめる。息が詰まる。大きく息を吐く。てるぼーギターを1度広大な野外ステージで聴いてみたいなぁ。のどかなのもいいが、こういうハードな音が何万という聴衆の頭上空高く響くのが見たい…そう思わずにはいられないギターソロだった。

 さらにパーカッション、ドラムスのかけあい。しまいにはベースが入ってオリエンタルなムードで遊んでくれるのがかっこいい。ギターがさらに加わりアドリブが続くが、いつの間にか『宇宙』のエンディングに鮮やかに戻った時にはただただ拍手拍手。

 

 続くは『 sympathy』である。最初のギター・コードが1つ鳴らされただけでオーディエンスは歓声をあげる。最初からレベルMAXまでふりきっている今日のライブの盛り上がりだが、『宇宙』途中からこの曲のあたりでふんわり大空に舞い上がった感じだ。気持ち良くラフな伊良皆ヴォーカルが翼を広げたのだ。力強くはばたくのではなくて、すいっと上昇気流にのるかのように自然な歌声。そしてリズムにおぼれ、シェイクし、ジャンプするオーディエンス。音の洪水。リズムの奔流。

 

 アップ・テンポの後はスローな『like a bird』。最近聞き慣れたしぶいブルース・バージョンでなく正調バラードで始まった。デリケートなタッチの美しいギターの音。たまにUK ROCKみたいに聞こえると思えばいつものJAZZでも始まりそうなギターに戻ったり。知念ギターの多彩な表情がキュートにあらわれている。そしてアレンジがやさしければ歌声も柔らかく聞こえる。 間奏で歌うベースのソロがたまらない。ドライさと甘さと、大人の音だ。パーカッションと重なると昔のAORっぽいというのかな、とても素敵だ。 ラストのヴォーカルのフェイクがしみこんでくる。いいっ!!とにかく美しい。そして大きなバラードだ。

 

 ここでカヴァー曲『Listen to the music / The Doobie Brothers』。理屈ぬきにごきげんだ。ミドルテンポのリズムに誰もが体をあずけてノリノリに。だってこのグルーヴ感!!このイカしたバンド! カヴァー曲をやると顕著に現れるthis icらしさがこの曲でも気持よかった。 伊良皆誠らしい歌声。知念輝行らしいギター。ガンガンにのって自由自在。で、こういう言葉が口をついて出る訳だ。 - this ic ってかっこいいよなぁ、本当に。 (この曲の後でノリの興奮さめやらないMCがまた楽しくてよかったね。)

 

 待ってましたのダンスナンバー『- Shake - 愛の招待 -』… nest はディスコと化す。あっちでシェイク、こっちでシェイク、目の前ではモンキーダンス。ところが私としたことが踊れませんでした。(と何故に突然ですます調) 何故って?仰天のリズム感に満ちたカッティング。かと思えば悩ましげなフレーズ。そこここに超好みな70年代ROCKテイストが見え隠れするこのギター!ワイルドでセクシーで、思いきりコロされて身動きもままならず、立ちすくんでしまったのだ。(その後よろよろしたり拳ぶんまわしたり頭を振ってたりはしたかもしれないが記憶にございません)ソロの早弾き、チョーキング。泣くわ吠えるわてるぼーギター。この音なに〜!!?次から次へと押し寄せてきて… と、それはもうメロメロだったのでございます。

 一方あまーいイラミン・ヴォイス。ラフに軽い感じで歌うのがファンキーにさらりとセクシー。実にかっこいい。いつもこの曲をレポする時「いやらしい」という形容詞を使うが、今夜の『シェイク』にはその言葉がどうも出てこない。ちょっと違うんだな。いやらしいっていうより… "ワイルド"。あんな感じよ。わかるかな?

 

 そして No more noiseだ。イントロがドラマティックにかっこいい。あーあ。結局はこの言葉を連呼する以外書きようがないのだ。波に乗ったてるぼー、かっこよさが止まらないという感じか。一方何故か『シェイク』以上に色っぽい気がする本曲での伊良皆ヴォイス。こちらは色っぽさが止まらない?幅のある声の響きにオーディエンスもライブハウスも、時間も何もかもが溶けていく。

 そこへベース・ソロ。ドカーンと超クール!さらにパーカッション&ドラム合戦。これまたかっこいいぞ〜!と思っていれば、助っ人お二方の掛け合いの可笑しさよ。つかみのうまい芸人…もとい、ライブ・パフォーマンスを心得たエンターテイナーだわ。

 あぁそして、またもやワイルドなギター・ソロ!回を重ねるほどにどんテンションが上がっていく。毎度「あれ以上は無し」と思うのにさらにいってしまうのだ。もう言葉に表すのは無理。ハードにダーティーに激しく激しく激しく!これでもかのチョーキング。壊れる〜〜!!!っきゃーーーーーーー!!!!・・・・・

 

 MCをはさんで遂にこの曲、『アイタイ/キモチ』になってしまった。パーカッションが入るとまたいいなぁ。いつもより少しアップテンポで雰囲気が変わる。いとしい歌詞が元気よく響いてくる。言葉無きラストの「ララララ〜」が何よりもハートにずしーんとつきささった。歌の天使が降臨しているみたいだ。

 基本形としては『アイタイ/キモチ』はライブのラスト曲な訳だ。いつもそうとは限らないが、今日はもうthis icの持ち曲すべてやっているはずだし…という所で『Wow wow wow』のイントロとなったから、ファンの大歓声がどれだけすごかったかは言うまでもない。早いテンポにはじけまくるオーディエンス。ここでこの選曲、にくいねthis ic。楽しくって気持よくてパーティー!なライブのエンディングだ。しかしやがてどこまでも広がるような「Wow wow wow 〜 wow〜♪」の歌声の迫力にすべてがのみこまれて行く。のびやかにド肝をぬくような歌声。this icはすべてをのみこんで「音楽の夜」という1つの絶対的な存在をそこに出現させたのだった。

 

 アンコールの声援にメンバーが戻り、本日のメンバーを改めて紹介。ほとんど1回のリハでの参加という今回の助っ人、ドラマー高尾トシユキさん、パーカッション田辺シンイチさん。今まで以上に緊張のワンマンだったと想像する。それをことごとくプラスのパワーに変換して最高のプレイに発散する彼等は、単にテクだけでなく音楽を楽しみ愛する最高のミュージシャンなんだなぁ、とつくづく思う。

 そうして始まったアンコール曲『 Superstition 迷信 / Stevie Wonder』とは!大好きな曲が嬉しくて心臓を吐きだしてしまいそうだ。バキッと決まったリズムにぶんなぐられ、音のシャワーにおぼれる。ギターが吠える!歌声がビッカビカに輝きわたる。ROCKなドラムスが炸裂する… 気持の中では頭上に花火があがった。無数のスターマインだ。劇的なワンマンのラストシーンだ。多分その場にいた全員が、花火じゃないにせよそれと似た感覚を味わっていたことは間違いない。

 


最後に私的感想コーナー。

 今回は本当に、胸にハート(心臓含む)にクるライブでした。とにかく印象的だったのは、イラミンの声。「何を今更」でもあるし、ライブを重ねるごとに輝きを増すその声ですが、レポ中にも書いたようにさりげない低めの声の良さにドキッとすることが何度もありました。自然で深みがあって、おだやかなのに迫力のある声。こういうのが最高のヴォーカリストの声ってやつなんだなぁ、きっと。

 そしてギター。前回「グルーヴ感あふれるフュージョン」と感じられたてるぼーギターが、今回はHard にRock!きっと本人に聞くと「そうだった?いつも同じだよ」なんて言葉が返ってくるんでしょうが、それもまた真実。いつも正真正銘知念ギターそのものなんですね。とにかく彼のギターの世界のとてつもないデカさにひたすら驚きなのです。まさに驚異のギタリスト、知念輝行。

 

 さらに今回ライブから感じる1つのイメージがありました。それが丁度新曲とそっくりオーバーラップして驚いたのですが、よく考えてみたら当たり前。彼等がたった今やりたい音楽として生まれたのがあの新曲なんだから、LIVEにそれが現れるのは当然だよね。

 つまり、最近めっきり音が大人っぽくなったということなんです。深くて情熱的だけど、頭がクリアな状態。例えば新曲歌詞にあるみたいな、すべての現実を受け入れながら自由でいようと出来る力。ここで適切かどうかわからないがかなり近いと思うその単語は「成熟」。成長が終わった安定期という意味ではなくてね。さなぎから抜け出た揚羽蝶が今まで見たことのない大きな世界に飛んで行ける、そういう意味での成熟です。テクニックもセンスも精神的な部分も何1つ足りないものがない彼等の音楽が、これからさらに大きな世界へ飛び立つんだ、そんな感じがするライブでした。 … 大人だからこそ歌える新曲『アレ』が、目下1番のお気に入りソングになったことは言うまでもありません。


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