黄金鳥と焦げ茶色の虫
作/ 草田 文
むかし、森の奥深く 焦茶色の虫と黄金の鳥が住んでいました
ある枯葉散る秋の日、黄金色の鳥が焦茶色の虫にこう言いました
「なあ、見てみな この俺様のまばゆいばかりの黄金色の羽を
それに比べて おまえの醜いことときたら まるで腐ったごみの様だぜ」
焦茶色の虫は本来飛べる虫なのですが、生まれつき羽が悪かったために
飛ぶことすらできませんでしたので、それはそれはたいそう嫌な思いをしました
けれど自覚していたというのと、鳥と虫の立場ではとうていたちうちできないので、
じっと我慢しているのでした
黄金色の鳥が自分の羽を大きく広げて見せつけながらこう言いました
「 おまえみたいな醜いものがいては我慢ならんのだ 俺様がおまえを食ってやる」
そう言って羽を広げたまま黄金のくちばしを虫めがけて大きく開きました
その時です
草むらがササッと動いたかと思うと灰色の山猫が鳥めがけて飛び付いてきました
山猫のキバは鳥の黄金の長い首に突き刺さり、黄金の血がどくどくと流れ出しました
鳥はあえいでこう言いました
「山猫さん、お願いだから助けておくれ
もし、そのキバを離してくれたら私の黄金の羽を 一枚あげよう
だから助けてえ いたいよお」
灰色の山猫は言いました
「馬鹿言っちゃいけないよ 私はなにもおまえの羽が欲しくて噛みついたんじゃない
おまえの体が、肉が食いたいだけなんだ」
山猫がさらに強く噛みつくと黄金の鳥は断末魔の叫び声をあげ、ついにこと切れました
焦茶色の虫はそばにいたのですが、土の色に似ていたのと、枯葉に隠れられるほど
小さかったので山猫には見つかりませんでした
いや、たとえ見つかったとしても山猫には興味がなかったかもしれません
灰色の山猫は黄金の鳥をたいらげると黄金の羽を自分の尾に付けて
「まあ、これも悪くないな」
と言って、のそのそ草むらに引き返して行きました
あくる日、焦茶色の虫は 山のいただきに登って、神様にお願い事をしました
「神様、きのう黄金の鳥は私のせいで命を落としました
私に見せるために大きく羽を開いたので山猫に見つかったのです
そして私と話していたので注意をかいていたのです
しかも、私はそばにいながら助けてあげることすらできない弱虫なのです
この出来事は私の山猫への憎しみから生まれたと思えてなりません
どうか罪のつぐないに私のこの命をうばって下さい
でも、その前にひとつだけ心残りがあります
お願いですから、一度だけ私を美しい姿に変えていただきたいのです」
すると、神様は慈愛の涙を流し、山に雨を降らせました
その雨は虫の焦茶色の体を流し、美しく透き通るような空色に変えてくれました
虫は満面の笑みを浮かべて喜び、そして不自由なはずの羽をひろげて飛び上がり
そのまま空の色にとけて消えてしまいました