Christmas Eve

 

満ち足りた空気が部屋に漂っていた。
人肌に温まったシーツに包まって愛しい身体と触れ合っているのが、胸が痛くなるほど幸福なことだと感じる。

 

 

「今日、遭えるとは思わなかった…」
呟かれた言葉に伊藤が不思議そうな顔をすると、黒田がコツンと肩に額を押し当ててきた。
「レコーディングが押してたし、事務所出たのが3時過ぎてたし…」
「約束してただろ?クリスマスは一緒にって」
「そうだけど…」
寒くて暗いままのマンションの部屋に帰るのを覚悟していた黒田は、ドアを開けた瞬間暖かい空気に迎えられ、ソファーにうたた寝している長身の男を見つけたのだった。
約束したとはいえ、もうさすがに帰ってしまっただろうと思っていた。
相手も仕事が忙しいことは良くわかっていたからだ。
人の気配に目を覚ました伊藤が黒田を認めて微笑んだ途端、黒田は伊藤の胸に飛び込んでいた。「Merry Christmas…」
そう言われたのは覚えていたが、その後は交わされる口付けに言葉も途切れた。

 

 

「他の日なら我慢してもいいけど、今日だけはね…どうしても黒田と居たかったから」
そう笑う伊藤の瞳に吸い込まれるように黒田は目が離せなくなった。
「黒田に出会ってから、毎年一緒だったろう?こういう関係になる前も」
そうなってからの方が嬉しかったけどと、少し照れたように黒田の額に口付けて伊藤が笑う。
「だから、誰にも譲れない」
その言葉に真剣さに気付いた黒田が顔を上げる。
黒田の問いたげな視線に伊藤が、白状してしまった本音を誤魔化すように笑った。
「それに、今日は神の子が生まれたような奇跡の日なんだよ。恋人同士が遭いたいっていう願いくらい叶えられても当然じゃん?」
「そうだな…」
頷きながら、黒田はそれでも願うだけではだめなのだと分かっていた。
遭いたいといって伊藤が帰らない黒田をずっと待っていてくれたように、黒田もだめかもしれないと思いながらも、収録が終わるとスタジオを飛び出してマンションへ急いだ。
強く願うのと同時に行動をしなければ続けられない関係だった。
だから余計に今の二人の時間が大切だった。

 

 


「ありがとう…」
自然と口をついて出た言葉だった。目を見開いた伊藤が黒田の唇に口付けた。
「それは、俺の台詞。ありがとう…」
伊藤の言葉が終わらないうちに黒田がぎゅっと伊藤の背に腕を回して抱きついてきた。抱きしめ返しながら伊藤は埋めることのできない二人の距離を思った。
数時間でまた別の世界に戻る二人だった。
「きっと来年の今日も一緒だから…」
祈るように囁いて伊藤は黒田を確かめるようにもう一度抱きしめる腕に力をこめた。

a very merry christmas 

 

END