シングル・編集盤等にしか収録されていない曲 (ヴァージョン違いも含む)
*AからMの記号の説明は
こちらを* 元の曲に加えて、スタジオでの会話や出だしミスなどまで録音されたもの
編集盤に収録されて発掘されたアルバム未収録音源
以上が、フリートウッド・マックの全キャリアで登場したアルバム未収録曲である。歴史が長いバンドだし、時期によってメンバーも音楽性もかなり異なるバンドなので、このような一覧がどれほど意味を持つのかは不明であるが、マックに少しでも興味をもった人の役に立てば幸いである。
まずは上記のリストの見方を大雑把に説明したいと思う。リストは大きく2つに分かれていて、73までがシングルやベスト盤などの編集盤にだけ収録されたもので、発売とほぼ同時期の音源。74以降は、CDの再発やボックスセットに収録された過去の"発掘"音源ということになる。
彼らのアルバム未収録曲の特徴を挙げると、同時代に出たものよりも、"発掘"されたものが多いことである。"発掘"音源の多くは、CD時代以降、特に90年代以降のボックス・セットやリマスター盤での再発に伴って出されたものだ。そして、同時代に出た音源でも発掘音源でも、彼らの公式音源には一貫したポリシーがあるようだ。
割と知られていないことであるが、彼らはかなり早い段階からデジタル録音をしている(80年のLive以降)など、音質にものすごくこだわるバンドである。そして、曲をほとんど書かないリズム隊がバンド名となっていることからもわかるように、レコーディングの過程での主導権は大方の想定より、リズム隊にもあるようだ。そのため、アレンジに対するこだわりも強くなっている。アウトテイクの多さはそのことにも起因しているのだろう。そして、当然のことながら、そういったアウトテイクにはアルバム収録曲候補まで行っても、最終的に入らなかった類の曲も存在する。しかし、実際は、Rumours前後の頃はシングルのB面などにそういった未発表曲を出すことを極力抑えてきた。一貫して彼らは"質"にこだわってきたところがあるのである。そのポリシーは、90年代以降のボックス・リマスター時代になっても、根本的には変わらないようだ。ポツポツと未発表曲が出てはいるが、結局のところ、その中心はテイク違いである。
それでは、大雑把であるが、簡単な解説をする。最初の8曲は元々シングルのみだったが、もはやオリジナル扱いを受けている、The Pious Bird of Good Omenに収録されているので、特に未収録という感覚はないだろう。そして、この8曲は、いまさら説明するのも不要というぐらいの有名なものだ。サンタナのカバーで有名になった3でさえも、元々アルバムに入ってなかったなんて、この時代がいかにシングル中心だったかがよくわかる。1stや2ndを聞く前に、まずはThe Pious Bird of Good Omenを聞くべきだろう。シングルはヒットチャート向けの軽い曲だから後で……などと考えていると、彼らの重要な一面を見逃してしまうだろう。彼らの初期のヒット曲、特に6辺りまではブルース感覚を巧みに結び付けてヒットさせた好曲揃いだからだ。
9から11は日米で出た編集盤English Roseにのみ収録されたもの。この編集盤はアメリカでの彼らの2ndアルバムとなった。その代わり、当時、アメリカではMr. Wonderfulは発売されなかった。収録曲はなかなかのもので、Mr. Wonderfulから6曲に、上記の3,7,8,9,10,11となっていた。大ヒット曲の3,7を押さえていることにくわえ、9,10,11というイギリスでも出ていない曲が入っていたという点でなかなかの好盤である。このうち、10,11はThen Play Onのイギリス盤には収録されたが、CD化の際に、すべてアメリカ盤ファーストプレスの曲目(詳細は後述)+Oh Well (pt.1+2)に統一されたので、現在ではまた未収録になっている(最近になって、The Complete Blue Horizon Sessions - 1967 - 1969(又は、The Original Fleetwood Macの2004年のリマスター盤)のボーナストラックとして収録されたが、そこでのOne Sunny Dayは別テイクである)。
以上、11までがBlue Horizonレーベルで、14以降はリプライズ、その中間の12,13だけはイミディエイトというレーベル(ストーンズのプロデューサーも務めたアンドリュー・オールダムが主催していたレーベル)から出されたもの。しかし、その割には、12はBで把握できるし、13はリマスター盤にも収録されていることもあり、比較的入手は容易だろう。そして、13がややくせもののトラック。実はこの曲、ジェレミーがよくやる50年代ロックのパロディの一つで、名義もフリートウッド・マックではない。この路線の曲に対して、ピーター・グリーンがあまり乗り気でなかったことから、名義を変えたのだろう。Then Play Onでジェレミーはほとんど役割を果たせず、その穴埋めとして、こういった曲のEPを付録という形で、世に出そうとしたという経緯もあったようだから(ピーターが脱退した直後のKiln Houseで、50年代の影響をモロに受けた楽曲を並べてきたのにはそういういきさつが背景にあったのである)。
この時期のシングルを押さえるのには、当時出たAとB、さらにはCD時代になってキャリア総括的に出たDEF、さらにはこの時期のアルバムにボーナストラックをつけたGなどがあるが、最初の8曲以外のシングルを押さえるのは意外に難しい。個人的にはアンソロジー的なDEFよりも、まずはBがコンパクトでお勧めだ(Bには米国編集ものもあるが、本稿では英国編集で話を進めたい)。BはAよりも発売が後で、彼らがリプリーズに移籍した後の71年に出た。内容は71年前半のジェレミー脱退まで、つまり"ブルース時代"の音源全てからのベストになっている。だから、9以後のシングル音源も網羅しているのだ。しかし、対象とする範囲がAよりも広がっているため、13,16,18といったB面曲がフォローできない。13は後述するリマスター盤に無事収録されたが、残りは今後も入手が難しい状態が続くだろう。近年、輸入盤のみでリリースされたThe Best of Peter Green's Fleetwood MacはBの曲目も押さえつつも、もう少し曲数が多いもの。それにもかかわらず、CD1枚で収めているという編集盤。これまたオススメ盤だが、そこでも13,16,18は未収録のままだった。
それでは、リプライズでの音源を見ていく。リプライズに移籍以降、彼らは徐々に活動の拠点をアメリカに移していく。イギリスに比べ、元々、アメリカではシングル曲もアルバムに入れる傾向が強いことに加えて、時代もちょうどアルバム中心へと移りつつあった。そのため、彼らのシングルはアルバムからカットするものに変わっていく。従って、シングルに残されたアルバム未収録テイク自体が非常に少なくなっていく。Rumours以降はアルバム製作にかなり時間をかけているせいか、実際は確認されているだけでも、かなりのアウトテイクがあるのだが、B面に出してくることはまれになっている。
14については、今ではPart1も2もそろった完全ヴァージョンで、Then Play Onに収録されているので問題ないだろう。ただ、イギリス盤LPあるいはアメリカ盤LPのファーストプレスにはこの曲は入っていない(彼らの初の全米ヒット(55位)となったせいか、セカンドプレス以降には収録されている)。話のついでに述べるが、Then Play Onのアメリカ盤LPには注意が必要だ。ファースト・プレスはイギリス盤から、上記のリストの10と11を抜いた12曲入り。セカンド・プレスには10,11に加えて、When You SayとMy Dreamも除き、Oh WellをPart1と2の両方収録の完全版で収録していた。15,16はピーター・グリーンが参加した最後のシングル。タイトル曲の15は本当の名曲。マック初期の代表曲だ。それはバッキンガム・ニックスの加入後まで、ライブで演奏されていたことからもわかる。この15は各種ベスト盤に収録されている。17,18はバンドの激動の時代の変化の最中で、かろうじてシングルにだけ残されたもの。このシングルの後、ジェレミーも脱退してしまった。その後のボブ・ウェルチの加入で、バンドの方向性が変わってしまったために、新メンバーで製作したアルバム(Future Game)には収録できなかったもの。B面の方が力作だが、聞くにはシングルを探すしかない。同じことは、ピーター・グリーン時代の16の場合にも言える。その後のグリーンの脱退で方向性に変化があり、アルバム(Kiln House)に入らなかったのだろう。この16もシングル盤のみでしか聞けない。
以上が、"ブルース時代"のマックの未収録音源ということになる。ジェレミー脱退後、マックは初めてのオーディションを行ない、アメリカ人のボブ・ウェルチが加入することになる。そして、バンドの方向性は大きく変わる。75年以降の黄金の5人でのヒットチャートの常連化は、この71年からの4年間の蓄積がものを言った結果である。その基礎を作ったボブ・ウェルチが脱退した後でのブレイクは皮肉といえば皮肉だったが、ウェルチもソロでそこそこのブレイクしているし、ソロ作の基礎をこのマック時代に作っていたことを考えると、彼にとって必ずしも悪い話ではなかったはずだ。
しかし、そのような"不遇の4年間"には未収録音源がほとんどない。"発掘"音源に少し存在する(詳しくは後述)が、シングルや同時代の編集盤に登場することはなかった。ただ、1曲、Mystery to Meのファーストプレスにだけ収録されたとの話のGood Thingsという曲について注意しておきたい。この話、実は、誤報である。確かに、Mystery to MeのファーストプレスにはGood Thingsがトラックリストに書かれているが、実際は収録されていないのである!! 言われているように、アルバム完成の直前にヤードバーズのカバーのFor Your Loveと入れ替わった訳だが、ファーストプレスではトラックリストの差し替えの印刷が間に合わず、当初の予定のまま、実際とは違うリストが流通してしまったのだ!! ただ、Good Thingsは実のところ、形を変えて世に出ている。ボブ・ウェルチのソロ作Three Hearts(1979)のDon't Wait Too Longという曲がそれである。この曲はGood Thingsがベースになっているという。やはり、ウェルチにとってのマック時代は後のソロ作の基礎となっていたのである。ただ、やはりファンとしてはGood Thingsも聞きたいというのが心情ではないだろうか?
そして、75年のバッキンガムとニックスの加入で、いよいよ快進撃が始まるわけだ。本リストでは19以降がその時代にあたる。前述の通り、アウトテイクが多いのにもかかわらず、表に出てくるものは非常に少ない。ただその分だけ、クォリティーは申し分ない。Mirage前後までのミックス違いやリミックスを除いた未収録曲は、22,26,27,28,30,31となる。22は元々、Rumoursに収録される予定だった曲。一般的には収録時間の関係で、というのがLP未収録の理由となっているが、どうも違うようだ。実際、この曲を収録しても45分に満たないので、LPサイズでも十分収録できたはずなのだ。問題はその歌の内容だったというのが、真相のようだ。当時、リンジーとスティーヴィーの関係は崩壊に向かっており、ミックとスティーヴィーがそういう関係に向かっている最中だったらしい。そのタイミングで、この歌はまずかった。リンジーとの関係を歌っていたのだ!リーダーのミックが嫉妬をして、結局のところ、収録されずじまいに終わってしまったのも無理はないか?! ただ、スティーヴィーは激怒したという。しかし、この曲、個人的にはスティーヴィー作の中で1,2を争う傑作だと思う。そのせいか、シングルのB面という地位でも、ずっとファンには親しまれていた曲だった。しかし、段々と入手しづらい状況が続いていたのだが…EFなどのボックス関連、さらには2004年のリマスター盤に収録されるなど、本来の位置を復権させつつある(詳細は後述)。
26からの3曲はLiveに収録された"新曲"。どれもリハーサルテイクで、ライブ盤の"新曲"というテイストを出している。26はシングルとしてもヒットしたが、注目は28、なんとビーチ・ボーイズのカバーである。元々、Tuskに収録予定だったものだ。なぜ、ビーチ・ボーイズなの?と思う人も多いかもしれないが、実はここにリンジーの音楽の鍵があると個人的には考えている。恐らく、リンジーはビーチ・ボーイズ(というよりブライアン・ウィルソン)のアメリカ音楽の伝統に向いたベクトルに注目しているのだと思う。ここで言う、「アメリカ音楽の伝統」とはR&Bやゴスペルなどの黒人音楽ではない。ウッディ・ガスリーやレッドベリーなどに代表されるフォークや白人ブルース、あるいは民俗音楽をクラッシックに融合したチャールズ・アイヴスなどのアメリカ白人音楽の伝統である。そのことは、30にも如実に表れている。この曲、Sons of the Pioneersというグループによる1941年の録音がオリジナルだが、Vaughn Monroeのヴァージョンの方が有名かもしれない(1948年)(Monroeのヴァージョンも実はSons of the Pioneersがバックにいる)。こういう隠れたアメリカの名曲を、しかもロックンロール以前のカントリーの名曲をもってくるところが、リンジーという男の奥深さだろう。そして、31、この曲の名義はクリスティンであるが、実際はスティーヴィー以外の4人が参加している。ご存知、エルヴィスの名曲だ。リンジーのエルヴィス好きはあまり知られていないが、リンジーの場合、前述のような文脈からエルヴィスを解釈しているような気がする。そして、この4人の再共演が実質的にマックを再び動かし、Tango in the Nightを製作するきっかけになったのだ。
32から47までが、Tango in the Night関連のシングルに収録された音源。12インチやCDマキシのリリースの影響で数が飛躍的に増えている。しかもヴァージョン違いだけでなく、それなりの数の未収録曲が出てきているのがうれしい。32,36,40,43がそれで、いずれも完成直前までTango in the Nightに収録される予定だったものだ。従って、駄曲はなし。しかも7inchならば、43以外は入手が比較的簡単(12inchはBig Love以外は結構困難だと思う)!ときているのだがら、ファンならぜひ聞くべし!32はpart 2の方がアルバムに入っていることを考えると、元々、この作品はLP2枚組で出す予定だったのかなあとも思ってしまう。当時はCDに完全に移行していなかったので、CDサイズでアルバムを作るのは、なかなか難しかったという事情もあるのかもしれない。もう数年後だったなら、この4曲は間違いなくアルバムに入っていただろう。
Greatest Hits (1988)とBehind the Maskからのシングルにカップリングされているライヴは、Tango in the Nightのツアー(Shakin' the Cageツアー)からのもので、Behind the Maskツアーからのものではない。しかも、Tango in the Nightのツアーのヴィデオとして出ているものと、どうも同じ音源のようなのだが…。Behind the Mask関連での未収録曲は53のみ。この曲はTimeのThese Strange Timesタイプのミックの曲。そういえば、十分か?賛否は分かれるものだろう。
Greatest Hits (1988)とボックスThe Chain(1992)と並びにそのダイジェスト盤に収録されている新曲について。48,49が前者のベスト用の新曲。56,57,58,59がボックス用(59のみダイジェスト盤には未収録)のもの。まず、48,49だが、2曲とも2002年に出た2枚組のベストにも入っているので入手はしやすいだろう。48はHot 100では低調に終わったが、アダルト・コンテンポラリーで大ヒットした名曲中の名曲(クリスティン作)。地味であるがマックのAOR路線の代表曲だろう。当時はこの1曲ためにベスト盤を買っても損しないと思ったものだ。49はスティーヴィー作。元々ソロ作The Other Side of the Mirrorに収録する予定だったものだが、マックのベスト用にエディットして提供したらしい。ちなみに47からリンジーが抜けて、リック・ヴィトーとビリー・ヴァーネットの2人が入っている。その同じメンバーで録音したのが56,57,58である。57はリック・ヴィトーとスティーヴィーの共作曲。ボックスからの1stシングルになった。そして、56,58はクリスティンと近年のパートナー、エディ・クウィンテラの共作曲。そして、驚いたことに、2曲ともプロデュースになんと!パトリック・レナードを迎えているのである。パトリックと言えば、マドンナのバラード路線(Live to Tellはその典型例)を支えている人だ。AOR的であるが繊細なアレンジを得意とし、その腕は名人級と言ってもいい。それだけにクリスティンとの組み合わせは非常に期待できるのだが、この2曲はまだ完成の域には達していない感じ。こんなもんじゃないでしょ。ただ、2曲とも、「この路線でアルバム作ったら興味深いものになっただろうな」と思わせる佳曲ではある。ソロでパトリック・レナードとやったらどうだろうか?
こんな感じで、ボックスからの3曲はマックのというよりも、スティーヴィーとクリスティンのソロ作というニュアンスが強く、ああマックも終わったなあと思わせるものだった。そして、59はご存知、スティーヴィーの大ヒットであるが、マックの87年以降のライブでも、クライマックスに使われたことで収録しているのだろうか?当然、このライブ・ヴァージョンの演奏はマックによるもの(スティーヴィーのソロバンドではない)。
97年以降の曲にも少し触れる。60,61,66はThe Danceのアルバムには入らなかったが、ヴィデオには収録されているもの。オーディオとしてはCDマキシやベストで初の収録となった。65はそのThe Danceツアー中に、アメリカの小売チェーンのBest Buyグループが出した、マック関連の音源を集めたプロモCDからのもの。後に、Say You Willに収録される曲ではあるが、ヴァージョンが異なる。
68,69,70,71はそのSay You Willの初回限定盤のボーナスディスクに収録されていた曲。恐らく、アウトテイクだろう。68はなんとボブ・デュランのカバー(ボーカルはリンジー)である。続く69もなかなかの佳曲ではないか。70,71については、AOLのセッションズでのライヴをそのまま収録している(AOLのこの企画はかつてのMTVのアンプラグドのように、近年、様々なレアトラックを生んでいる)。音質は非常にいい。72以降は、Peacekeeperのシングルヴァージョン。当初はイギリスでもCDマキシが出る予定で、そこにもっとドラスティックなリミックスが入るとの話だったのだが、このリストに載っている2つはアルバム・ヴァージョンとの差は少ない(歌詞が一部変わっているだけ)。そして、このPeacekeeper、実はオリジナル・ヴァージョンというのがある。元々は、この曲、リンジーの4thソロGift of Screws(最終的に未発表に終わる)のために用意した曲。ただ、最終的にそのソロ作に収録の最終候補曲からは漏れたよう。しかし、…である。とあるパーティで500枚だけ配られたCDにリンジー・バッキンガム名義でクレジットされて収録されているのだ。そして、このヴァージョン、演奏はすべてリンジーによるもので、Say You Willのものとは異なっている。元々はボスニア戦争を題材にした曲だったようだが、イラク戦争下という状況になって、Say You Willに収録する候補として再び挙がってきたのかもしれない。また、上記のリストにはないが、Say You Willからアルバムタイトル曲とThrown Downはアメリカでラジオ向けにプロモ盤が配られている。そこでのヴァージョンについては、まだ調査中であることを述べておく。
最後に、リミックスやヴァージョン違いで特筆すべきものに触れたい。まずラジオ・ヴァージョンについて。編集盤によってアルバム・ヴァージョンを収録したり、ラジオ・ヴァージョンが入っていたりするので注意が必要だ。Fleetwood Mac(The White Album)で彼らの快進撃が始まったのだが、19,20,21はそのアルバムからのラジオ向けのヴァージョンである。75年のツアーで火がついたような書かれ方がよくされているが、裏ではラジオ対策もバッチリ行なっていたのである。ただのエディットではない力の入り方だ。このうち、クリスティンの2曲(19,21)はかなり異なっている。2004年のリマスター盤には、184のような結局は使われなかったものもおまけで入っていた。
他のラジオ・ヴァージョンは基本的にエディットと考えてよい。その中で、23には注意が必要。2004年のリマスター盤でアルバム・ヴァージョンに戻るまで、LP2枚をCD1枚にするための収録時間の関係上、TuskのCDにはこのエディットが収録されていたのだ。ただ、CD化後でも各種編集盤にはアルバム・ヴァージョンが入っている。そして、29。オリジナルはリンジーとスティーヴィーがマックに加入する前に組んでいたデュオ、バッキンガム・ニックスのアルバム(未CD化)に収録されているデビュー曲だ。この頃までは、マックのライブでも演奏されており、無事このライブ盤に入ったのだが、大変な曲である。特にギターとドラムが絡むところで、ギターが打楽器のように絡んでいく様子はリンジー独特の演奏だ。デビュー曲でこれだったんだから、恐れ入る。マックに加入するまで、完全に埋もれていたのが信じられない!とつくづく思わせてしまうテイクである。オリジナル収録のアルバムのCD化、なんとかならないんでしょうか?日本だけでも…。そして、リミックスからは35に触れたい。The DanceでBig Loveがアグレッシブな形で演奏された時、多くの人が驚いたが、元々、この曲はリンジーがソロ用に作った曲。恐らく、あのアレンジは当初予定していたものなのだろう。その片鱗が見えるのが、この35。これを聞くと、この曲もルーツ音楽に根ざしたものであること、それでいて、とってもかっこいい曲になっていることがわかる。それを全く感じさせず、当時としてはモダンなアレンジでTango in the Nightに収録した辺りはさすがだった。しかし、その辺りがリンジーには不満だったのかもしれない(その後、彼はマックを一旦脱退している)。
以上がシングルのカップリングと同時代の編集盤に収録されたオリジナル・アルバム未収録曲だが、出来損ないの曲というものはリミックスなどを含めても非常に少ない。ただ、本当の意味での名曲(15,22,48)は各種のベスト盤で聞けるので、隠れた名曲探しというより、マックの隠れた一面を見れる楽しみを、未収録曲に求めた方がいいのかもしれない。しかし、これだけのキャリアの割にはシングルにだけ残された曲は少なく、つくづく彼らはアルバム・アーティストだなあとも思う。なので、シングルで隠れた一面探そうとすると、フラストレーションが残る可能性がある。しかし、幸いなことに、90年代以降に"発掘"された音源がそれにも増して大量に存在する。これを探検することで、隠れた部分はかなり見えるようになるのだろうか?以下では、"発掘"音源について見ていきたい。
上記のリストでは"発掘"音源は、74以降ということになる。このリストでは録音順ではなく、その録音が公式に発売された順に並べられていることを、まずはお断りしておく。従って、解説も編集盤・ボックスの発売順に進めていきたい。
"発掘"音源の口火を切ったのは、結成25周年の辺りで発売された2つのボックスThe Original Fleetwood Mac: The Blues Years (1991)(3枚組(LPは5枚組))とThe Chain(1992)(4枚組)だ。前者には未収録曲は1曲(74)のみ。しかも、このテイクのミックスを従来のヴァージョンと聞き分けるのは相当難しいので、未収録曲狙いという観点では、このボックスの価値は低いといわざるを得ない(しかし、彼らのブルース時代を非常に優れた編集で聞かせてくれる良盤であることに変わりはない)。
従って、この時期で問題になるのは、The Chainということになる。このボックスには、ダイジェスト盤(2枚組)も出ており、実際のところ、未収録曲もかなりの部分はこのダイジェスト盤で追える形になっている。以下、そのことを確認する。75から78がそのボックスに収録されている未発表曲で、56から59の新曲と並んで、このボックスの目玉となっていた。しかし、この中の59を除いては、ダイジェスト盤でも聞くことができる。発売当時、ボックスにはダイジェスト盤に収録されていないString-A-Longという未発表曲がある、と宣伝されていたのだが、これは間違いである。この曲、元々は、Then Play Onに付録としてつける予定だった、前述のEP盤(このEPは全面的にジェレミー・スペンサーの作品で占められる予定だった)に収録予定だったもの。しかし、このEP、その企画自体がボツになり、宙に浮いてしまった。それでも、結果的に収録予定の全曲がジェレミーの1stソロに収録されたのである。しかも、そこに収録されているものと、ボックス収録のこのテイクは全く同じもの!!ミック・フリートウッドらがソロ作に入っていることを本当に知らなかったとも考えられるが、どうも怪しいのだ。"未発表曲"と銘打って意図的に宣伝に使ったのでは?思ってしまう。
それには訳がある。リンジー作の77でも同じようなことが行なわれていたからだ。ボックスの発売当時、77は"新曲"ということになっていた。しかし、実際は、Mirage製作時のアウトテイクである。この宣伝の意図は何か?
ボックスの新曲を録音している当時、リンジーは3rdソロが出た後ということもあり、マックに戻らない意思を固めていた。しかし、それとは関係なく、マックに注目が集まる事態が生じた。92年の米大統領選挙でクリントンが選挙キャンペーンにDon't Stopを使い、結果的に現職のブッシュ(父)に勝利してしまうという事態が起きたのである。そして、その選挙キャンペーン中に、このボックスは出た。そこに収録されている新曲はBehind the Maskと同じメンバーによるもの。しかし、Don't Stopが話題になっている渦中だったので、バンドやマネージメント側としては、リンジーも含めた再結成が成立したという文句が欲しかったことは容易に推測できる。そこで、77を"新曲"として"リンジーもボックスのために集合"という形に持っていった…というのは考え過ぎだろうか?(そして、当選したクリントンから要請を受けたマックは、93年1月の大統領就任パーティーのために、なんと!あの5人で本当に1夜限りの再結成を果たしてしまうのだが…)
いずれにせよ、ボックスThe Chainに収録されているが、ダイジェスト盤には入っていないない未発表曲や新曲は58のみということになる。しかし、58はあくまでも「フリートウッド・マックとしての」という条件での新曲にすぎず、スティーヴィーのソロでの大ヒット曲なので、このボックスを買うような人達がこの曲を目当てにするとは考えづらい。従って、未発表曲や新曲目当てなら、ダイジェスト盤で十分だということになる。このボックスはマックのファンの上級者あるいは完全コレクター向けということになりそうだ。
それでは、ボックス(並びにダイジェスト盤)収録の未発表曲について簡単に説明したい。新曲の方でスティーヴィー、クリスティンの曲が続いたからか、未発表曲で2人の曲は出てきていない。その代わり、リンジーの曲が3曲(76,77,78)フィーチャーされている。面白いことに、いずれもMirageのアウトテイクである。76はいかにもリンジーという曲で、なぜアウトテイクに?という感じさえ受ける。興味深いのは残り2曲。77はTango In The NightのCarolineのような曲。Carolineに比べると使用している楽器の数が少ないので、印象はかなり違うが…。78はリンジーのギターで押しまくる曲。歌詞らしい歌詞はなく、リンジーの声が「アッ、アッ、アー」と時々入ってくるだけの奇妙なもの。普段のマックでのリンジーというより、ソロでやりたいことをやっている状態に少し近いか?ただ、77,78ともしっかり完成させた曲なのかは不明である。ボックスに収録の際、リンジーの了承を得たのかも不明のままだ。
そして、驚きは75だ。71年のBare Tree製作時のアウトテイク。ダニー・カーワン作とクレジットされている。ピーター・グリーン脱退後、あの5人になるまでの時期だけにマックの熱心なフォロワーには驚きをもって迎えられた。そもそも、この時期はアウトテイクの存在自体もよく知られてなかった。だから、非常に貴重。しかも、かなり完成度が高い曲。どこかしら軽快な曲調は当時のカーワンの調子とは異なるし、Bare Tree全体の雰囲気とも少し異なる。その辺りが漏れてしまった原因ではないか。本当に71年の曲なのだろうか?シングルのみのリリースでも、そこそこ話題になった気もするのだが…。こういうアウトテイクがあるのならどんどん聞いてみたいと思ってしまうクウォーリティーだ。
ボックスの残りの未発表テイクはいずれもテイク違いやミックス違いで、アルバムヴァージョンとの差の程度はトラックによってばらつきがある。そして、基本的にこのボックスは全てのトラックがリマスターされている。2004年のリマスター盤に比べれば音質はそれほどではないが、それでも、当時としては格段の進歩だった。79,80,81は違いを聞き取るのはかなり難しいが、こちらのヴァージョンの方が迫力が出るようにはなっていて、各楽器の輪郭がつかみやすく、前面に来る音が異なってもいる。一瞬リマスターしただけでは?と思ってしまうのだが….。82はアルバムに入れる際のエディットをする前のもの、ファンには人気の曲なので、長いというだけで食指を動かされる人も多いのではないか? 83はTuskに参加したマーチングバンドがイントロを吹いているもので、この曲のプロモビデオに出てくるフレーズが入っている。84はシンセ類を前面に出して、ソフトな印象を感じるようにしたもの。恐らく、当時作っていたラジオ向けのリミックスだろう。85はLive収録のものとは違う日からのもの。
87以降がダイジェスト盤には収録されておらず、ボックスのみもの。この中で、91はアルバム・ヴァージョンとの違いがかなりわかりづらい。リマスターしただけ?とまた思ってしまう。しかし、他のトラックはなかなかの掘り出し物だ。88,89のRumours関連のトラックは恐らく、アルバムのミックス時に最後まで候補として残ったものではないか。88はコーラスのインパクトがアルバム・ヴァージョンより薄い。その代わり、ギターが前面に出ている。89は最後の女性の声がかなり迫力のあるものになっているなど、細かい違いを探すのも面白いトラック。グロテスクな印象を避けるようなミックスをアルバムに入れたのだろうか?
そして、白眉は87と92である。まず87。この曲はクリスティン作。オリジナルはTango In The Nightに収録されていたもの。単純明快な歌詞と、くせになるクリスティンのボーカルに、リンジーによる抜群のアレンジ、特に最後のギターソロはGo Your Own Wayでのダイナミズムに加え、幻想的な雰囲気も加味されたもので、かなりインパクトがあると個人的には思っている。Tango In The Nightの中ではEverywhereと並んで、クリスティンとリンジーのコラボレーションが非常にうまく機能している名曲ではないだろうか。イギリスではツアーの最中にシングルカットされたが、ボックス発売まで未発表だったことを考えると、この87はアメリカのラジオ用に作られたヴァージョンではないかと思う。結局、アメリカではシングル化されないで終わったからだ。アレンジがかなりシンプルになって、クリスティンのボーカルが映えるような作りになっている。これもまた不思議な魅力だ。そして、92。ボブ・ウェルチ作。アルバム・ヴァージョンはFuture Gameに収録されていたもの。しかし、このヴァージョンは非常にR&B色が強いものになっていて、ボブ・ウェルチという男がどこからきたのかを如実に示している。そもそも、ウェルチの参加は、このトラックのアルバム・ヴァージョンが入るFuture Gameからだ。参加間もない頃、ウェルチはどのような形でバンドに関われるかを模索していたと言う(元々、ウェルチはリード・ヴォーカルを取る気などなかったらしい)し、当時のマック自体もピーター・グリーンの脱退、ジェレミーの失踪…と度重なるショックでほぼ崩壊の危機に瀕していた。だから、様々な試みを行なっていたのだろう。その一つがこれなのではないか。個人的にはこの路線のマックも聞きたかったと言う気もするが…。
以上が、The Chain関連の解説で、93以降がまた違うボックスに収録されている"発掘"音源だ。The Complete Blue Horizon Sessions - 1967 - 1969というのが、それだ。リプリーズ移籍以前のオリジナル作2枚(Peter Green's Fleetwood MacとMr. Wonderful)、ベスト的アルバムThe Pious Bird Of Good Omen、未発表曲集The Original Fleetwood Mac、さらにはシカゴでの現地ブルースマンとのセッション作Blues Jam in Chicago Vol.1 &2にそれぞれボーナストラックをつけた6枚組という、とんでもないボリュームでの発売となった。しかもボーナストラックと言っても、最後に付け加えただけというのではなく、オリジナルの曲の間に入れてあったり、はたまたオリジナルで収録の曲が別テイクで入れ替わっていたりする場合もある…など、これは一種別のアルバムといってもいいものである。しかし、このボックス、日本では結局発売されずじまいだった。その代わり、現在ではThe Original Fleetwood Mac を除いた5枚がバラ売りされている。そして、既存のアルバムが生産中止になるという逆転現象が起きてしまっているのだ。
しかし、ボックスからの流れのエディションには問題がないわけではない。上記のリストを見ればわかるとおり、それまでのエディションに収録されている曲がテイク違いで列挙されている。しかし、通常のボーナストラックと異なり、この違うテイクが元々のテイクにとって変わって収録されている場合があるのだ。それだけならば、まだそれほど問題にならないかもしれない。しかし、上記リストにあるように、曲によっては出だしのミスやスタジオでの会話まで収録されていることまである!というのだから驚きだ。これは、ボックスのプロデューサーのマイク・ヴァーノンが当時のスタジオでのセッションの雰囲気を出したいと考え、実現したものらしい(ヴァーノンはこのエディションの中で、特にMr. Wonderfulの出来に満足しているとのこと)。本サイトをご覧になっているような方なら、このエディションに大喜びだろう。しかし、新たにマックを聞きたいという人がブートみたいなこのレコードに魅力を持つかは甚だ疑問である。日本ではマック、特にブルース時代のマックが売れるとは思えないので、市場の混乱を避けるために、このエディションのみに絞ったのかもしれない。それに対して、英米では、バラ売りは従来の盤のままだった。しかし、2004年になって、Rumoursなどのデラックス・エディションに触発されたのか、バラ売りが行なわれてしまったのである。ただ、英米のバラ売りは日本と比べると、やはり徹底していた。The Original Fleetwood Macもきちんとバラ売りされたのだ。そのせいで、というか、そのおかげで、というべきか、The Original Fleetwood Macは目下2種類出まわっている。元々、The Original Fleetwood Macはすでにリプリーズに移籍した後の71年に出たBlue Horizon時代の"発掘"音源集にすぎない。そのため、かなり前にCD化されたが久しく廃盤状態が続いていた。そこで2000年になってボーナストラックをつけてリマスターし直した盤が発売された。ここで面白いのが、この2000年盤とボックスのエディションのThe Original Fleetwood Macとはボーナス・トラックが異なると言うことである。本リストでは141,142,143がそれに当たる。この3曲は2000年エディションでしか聞けない。残念なことに、残りの4枚の通常盤は英米でも現在は生産中止!! その現状を考えると、The Original Fleetwood Macの2000年エディションも近年中には生産中止になる可能性もある。要注意な音源かもしれない。
それでは、The Complete Blue Horizon Sessions - 1967 - 1969版の6枚のアルバムの音源について大雑把に説明したい。その前に、この6枚に共通した特徴を説明する。会話入りトラックは従来の曲順に収録されているが、未発表曲、未発表テイクはオリジナルの曲順終了後に収録されている。オリジナルの曲順の中に割り込んで未発表曲、未発表テイクを収録しているのは、Blues Jam in Chicago Vol.1 &2だけだ。なお、Takes 1-6のように複数のテイクを1トラックと数えたのはCDのトラック割りに従ったためで、本当のところはTakes1-6なら6トラックとしなければいけないのだろう…。
まず、Peter Green's Fleetwood Macに収録の音源。未発表曲2曲(93,94)はジェレミーをフィーチャーしたもの。テイク違いは5つ(102-106)、そして出だしミスや会話が新たに入ったトラックは3つ(125,126,127)である。次のMr. Wonderfulは未発表曲1曲(95)、テイク違いは2つ(107,108)で、そのうちの107は、シカゴでのジャムセッションで使われる曲のマックのみによる演奏である。そして、出だしミスや会話が新たに入ったトラックは1つ(128)と、目玉は少なめだが、カバーからオリジナルに比重を移してきた時期の注目すべき作品だ。ベスト盤的なThe Pious Bird Of Good Omenに未発表曲は収録されていない。109を未発表曲と書いている資料もあるが、この曲はリプリーズ移籍後の1stである Then Play Onに収録されていた曲の別テイク。同じように、The Original Fleetwood Macに収録されてる122も未発表曲ではなく、Then Play Onに入っている曲の別テイク。なぜ、この2曲がBlue Horizonレーベルの盤に入っているのかは謎である。さて、この盤には109を含めてテイク違いは5つ(109-113)、しかも109以外はすべてNeed Your Love So Badというもの!! 出だしミスや会話が新たに入ったトラックは3つ(129,130,131)ある。そしてその3つの中にもNeed Your Love So Badが!! Blues Jam in Chicago Vol.1 &2の2枚(元々、英米では2枚組で発売されていた)では、未発表曲が6曲(96-101)、テイク違いが4つ(114-118)、出だしミスや会話が新たに入ったトラックは3つ(131-133)(Vol.2にはゼロ)。このシカゴでのセッションには、まだまだ未発表曲があると言われているので、今後もまた違った形でリリースされる可能性は高い。このエディションで、従来存在すら知られていなかった曲が出てきていることもあり、今後に期待ができそうだ。最後にThe Original Fleetwood Mac。この作品は元々正式なアルバムではないことから、かなりぐちゃぐちゃにいじられている感じがする。未発表曲は1曲もない(未発表曲とされている、122は前述のように別テイク)が、テイク違い5つ(119-123)(そのうち2つは違うテイクに会話がさらに追加されたもの)、そして出だしミスや会話が新たに入ったトラックは7つ(134-140)(先程の2つは除く)となっている。
以上、Complete Blue Horizon Sessions - 1967 - 1969版の6枚のボーナス・トラックを見てきたが、前述のような、このエディションの問題点を解消する動きがマックのリイッシューにも及んできた。例の紙ジャケシリーズである。The Original Fleetwood Macを除いて、English Roseを加えた5枚(Blues Jam in Chicagoは今回2枚バラではなく、1セットで売り出されている)が限定盤ながら、2005年の11月に出たばかりだ。今のところ、紙ジャケシリーズは日本だけの動きだが、もしかしたら、近年中に通常パッケージもDVD-Audio化の段階でボーナストラックが削除されるなんてことがあるかもしれない…。いずれにしろ、ありがたい貴重なボーナス・トラック群です。
さて、最後にFleetwood Mac (White Album), Rumours, Tuskのボーナス・トラック(144以降)について簡単に見ておく。前述の通り、やはりこのボーナス・トラックでも基本線は変わらなかった。つまり、未発表曲を出してきていないのだ。144から151が一応、未発表曲であるが、このうち3つ(144,149,150)はジャムセッションだし、2つ(145,148)はスティーヴィーがソロ作で収録した曲のデモだ(148に至っては2001年にスティーヴィーのソロ6作目でようやくリリースされた。同じくソロ6作目で初めてスティーヴィーのヴァージョンが初めて収録されたSorcererもこの時期のものとされている。(Sorcererの初出は80年代のサントラStreets of FireでMarilyn Martinに提供したもの))。それに、151は彼らのオリジナルではない上に、ちょこっとやって見ましたと言う感じのテイク。イマイチのものと言わざるを得ない。146は短めのデモ。ただ、クウォーリティーはなかなかのもの………、という様子で、出せるものを出してきただけという感じが否定できないのである。こんなものなのだろうか?スティーヴィーなどはほぼ毎日曲を書いているというし、リンジーのスタジオ・フリークぶりはよく知られたところだ。彼らの曲全てがマックに提供されている訳ではないが、創作量の割にはマック以外の他人への提供量は少ない。それに、クリスティンだって……だから、まだ相当数のマックのアウトテイクがあると考えるのは、そんなに外れていないことだと思う。
そして、その他は全てテイク違い。デモが多いのはなかなか興味深い。元々は曲名が異なっていたものも多く、アイデアが変わっていく様子を実感できるようになっている。最後に、152と153について。152はLiveに収録された"新曲"の一つであるビーチ・ボーイズのカバーであるが、Liveでのテイクがリハーサルで数人を前に披露されたものだったのに対し、これはスタジオ・ヴァージョン。シンプルなアレンジなので違いは感じづらいが別物である。そして、意外だったのが、153。前述のように、曲の質とは無関係の理由でRumoursに入り損ねた稀代の名曲だが、リマスター盤で無事にアルバムに収まった。しかし、このテイク、なんとシングルのヴァージョンとは違うものなのだ!どちらが完成テイクだったのだろうか?シングルのB面という位置でなんとか出せた曲だが、ひょっとしたら、そのB面にもボツテイクを収録させられたのかもしれない。この一件はスティーヴィーを相当怒らせたという話だから…。
以上、フリートウッド・マックのオリジナル・アルバム未収録音源について、大雑把に解説をしてきた。全部で184曲。テイク違い、ヴァージョン違いを含めてだから、彼らの歴史の長さを考慮すれば、妥当な量だろう。それに、まだ把握していないものも当然あるに違いない。そして、特に初期に言えるのであるが、次々とライブ音源が公式に出されてもいる。だから、近いうちに、一度発掘ライブだけでリストと解説を作ってもいいかもしれない。
結局、"ブルース時代"については、全貌がわかるようなテイクがかなり出てきてはいるが、バッキンガム・ニックス加入後、さらには、"不遇の4年間"はなおさら、ベールに包まれたままのような気がする。今後に期待したい。
A ベスト盤The Pious Bird of Good Omen (1969)に収録
B ベスト盤Greatest Hits (1971)(英国編集)(輸入盤のみ)に収録(米国編集は曲目が異なる)
C ベスト盤Greatest Hits (1988)に収録
D ボックス The Original Fleetwood Mac: The Blues Years (1991)に収録
E ボックスセット25Years-The Chain (1992)に収録
F ボックスセットからのダイジェスト盤Selections…(1992)に収録
G 1999年発売のThe Complete Blue Horizon Sessions - 1967 - 1969(輸入盤のみ)に収録
H 2000年発売の再発CD(リプリーズ移籍以前の作品)にボーナストラックとして収録
I 2000年発売のThe Original Fleetwood Macのリマスター盤(輸入盤のみ)に収録
J ベスト盤 The Very Best of…(2002)に収録
K リプリーズ移籍以前の曲のベスト盤The Best of Peter Green's Fleetwood Mac (2002)(輸入盤のみ)に収録
L 2004年発売のリマスター盤(Fleetwood Mac (White Album), Rumours, Tusk) に収録
M 2004年発売のThe Original Fleetwood Macのリマスター盤(輸入盤のみ)に収録
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