My Only You






私と彼・岡野昭仁が出会ったのは半年前。
ポルノグラフィティファンの私が、街で見かけた彼に声をかけたのがきっかけ。
・・・今思えば、かなりの逆ナンだよなぁ。
私はただのファンの頃から彼が大好きで、今でも彼以外の人は愛せないって思っている。
なのに、彼から見たら私はただの『友達』でしかないみたいで。
そりゃあ、ただのファンじゃなくて『友達』にまでなれたのだからそれはすごいと思ってるけど・・・。
人間って、ワガママな生き物なんだね。


「美由紀が夏生まれでよかったのぉ!夏休みバンザイじゃ!!」
今日は私の17回目の誕生日。
学校も夏休みってことで昭仁が誕生日を祝ってくれるらしい。昨日急に
『祝ってやるけん、明日空けとけよ!!』
って言われて・・・そりゃあ、大好きな昭仁の為だから前から友達と約束してた誕生日パーティーもドタキャン。
そして、今彼の運転する車の助手席に私はいる。
「昭仁、ホントに祝ってもらっちゃっていいの?新曲発売するんでしょ?忙しいんじゃないの?」
「へーきよぉ。作業的にはもう終わっとるし、雑誌の取材もほとんど終わっとるし。」
「そか。ならありがたくご好意に甘えましょう!」
はたから見たらカップルに見えるんだろうなぁ。そうだったらどれだけ嬉しいことか。
「で、美由紀はわしに何してほしいん?せっかくの誕生日じゃけ、わしにできることならするわ。」
「ホント?!じゃあねぇ・・・カラオケ行こう!!私、昭仁の生歌を目の前で聞きたい!
ライブじゃ前の方のチケット取れないんだよね。・・・だから、カラオケ!私の為にプチライブやって!!」
「なんじゃあ、そんなもんでええんか。もっとこう、最近の女子高生みたいなこと言うかと思うとったのに。
『ブランドのバック〜』とか。まぁ、そんなもんは買っちゃる気はないけん、よかったけど。」
「ブランドもんのバック?!?!・・・だって、昭仁にそんなん買ってもらったら後で請求書がきそうだもん。」
「なにおぅ?わしだってそれぐらいは稼いどるわっ!!」
   そんな会話をしているうちに車は1件のカラオケボックスへと入った。


「カラオケなんてひさしぶりだぁ。・・・昭仁はいつも歌ってるもんねぇ。」
「わしもカラオケは久しぶりよ!でも、この間のファンクラブイベントで採点ゲームはやったのぅ。・・・はい、適当に曲入れて。」
そう言って昭仁はリモコンと曲目リストの分厚い本を私に渡すと、自分は食べ物なんかのメニューに目を通し始めた。
私も分厚い本を開いて目を通す。もちろん、開いているのはポルノのページ。
でも、いざカラオケに来たもののポルノグラフィティ全曲の中からどれをピックアップするべきか・・・?
えぇい!!こうなったら私の大好きな曲を上から順に入れてっちゃえ!!
ピピピピピ・・・よし、送信完了!!!!
「はい、岡野さん!出番ですよ!!」
「オッケー!!何でもかかってこいやぁ!」
昭仁はマイクを持って立ち上がると少し照れくさそうに笑いながら言った。
1曲目は、『愛なき』!!!
「ま、マジ?!1曲目からこれなん??」
「なんだよぅ。さっき何でもかかってこいって言ったじゃんかよぉ。」
「そりゃあそうじゃけど・・・。まぁ、美由紀の為じゃ、歌っちゃる。」
どうも、昭仁は1曲目はシングル曲が来ると予想していたらしく、
アルバムの、しかも自分の作詞曲を1番最初に歌うとは思っていなかったようだ。
「あいうえお順」に並んでる曲の上から順に私の好きな曲を入れているわけだから、この曲が1番初めにくる確立は高いと思うのだけどなぁ??
そんなことを思いながら歌っている昭仁を見ると、私の視線と彼の視線とがぶつかる。
彼の瞳はいつものステージ上のように真剣で。
目が合っただけでこんなにも私の鼓動は早くなる。あぁ、やっぱり私はこの人が好きなんだ、と思った。


数時間後、
「やっぱり、歌うのはちゃんとした演奏のほうが気持ちえぇわ。」
届いたジュースを飲み干して、昭仁は言った。
「それは、何十曲も気持ちよく歌った後の言葉じゃないよ。」
私は笑いながら彼に答えた。
「お疲れ様でした!いっぱい歌ってもらえて嬉しかったです。喉を痛めて仕事に差し支えが出ると悪いから、これぐらいでいいよ。」
ホントは全部歌ってもらいたいところだけど、私だけの昭仁じゃないもんね。我慢我慢。
「あ、じゃあ最後にわしに1曲選曲させてくれん?」
そういうと昭仁は本を片手にリモコンで1曲だけ入れた。
今度は座ったまま歌うのか、立ち上がる様子はない。
画面に映し出された曲のタイトルは  『夜明けまえには』


歌い終えるた昭仁はふぅっと1回ため息をつくと私のほうを見て口を開いた。
「この曲、今のわしの気持ちじゃけね。わしの『大切なもの』は美由紀じゃ。」
「やだ、昭仁いくら誕生日だからってそこまでしてくれなくても。」
彼のまっすぐすぎる視線から目をそらして、私は笑いながら言った。
「嘘じゃない。わしの正直な気持ちよ?美由紀と出会ってから美由紀に『会いたい』って思わなかった日はないけん。
・・・これが隠さずに言ったわしの気持ち。美由紀は?」
「・・・今日ホントは、友達とパーティーする予定だったの。でも、ドタキャンして昭仁とこうやって会ってるってどーゆうことだと思う?
大好きなバンドの大好きなボーカリストがある日突然目の前に現れて友達になれただけでも信じられないのに・・・これって、夢?
っていうのが私の正直な気持ち。」
私がそういうと、昭仁は私の両頬をつかんで引っ張った。
「は、はひひほ?(あ、あきひと?)」
「美由紀、今の感想は?」
「・・ひはひ(いたい)。」
「じゃろ?じゃけ、これは現実。」
「・・・・本当に?ホントに私でいいの?」
「『で』じゃなくて、美由紀『が』えぇ。」
「・・・ありがとう、昭仁。」



「誕生日プレゼント、何がほしい?」
カラオケを出て車に乗ると、運転席の昭仁が聞いてきた。
「さっきの言葉でいーよぉ。忘れられない誕生日プレゼントでした。それに・・」
来年の誕生日も祝ってもらいたいもん。だから、ちゃんとした誕生日プレゼントは来年まで我慢するよ

だからこれからは、私だけのあなたでいてくれる?