愛をください









「タマちゃん!!遊び行こっ!ほらっ、早く準備して!!!」
・・・美里ちゃん。あのね、わし今日ほんっまにひっさびさのオフなんよね。
君時計見よった?今何時か知っとる?・・・8時よ!!!朝の8時!!
「分かったから、分かったからもうちょっと寝かせぇ・・・ぎゃっ!!」
時計を見て再び布団にもぐろうとするわしから、美里は掛け布団をがばっと奪い取ると、目をキラキラさせながらもう一度言った。
「どっか、行こう。・・ね?」
「・・・・はい。」
彼女の笑みに根負けしたわしは渋々布団から起き上がり準備に取り掛かる。
・・・わし、なんでこの子の彼氏やれてるんじゃろ。

「で、どこに行きたいんでございましょーか、お嬢様。」
車に乗り込みエンジンをかけて尋ねた。
「そーねぇ・・・ハワイ。」
「・・・はぁ?」
「嘘嘘。今のは軽ぅ〜いアメリカンジョーク。ゲーセン行こう!!」
あ、ハワイだけにアメリカンジョークね・・・じゃなくて!ゲーセンって!!
「み、美里ちゃん、わしのお仕事知っとるよね?」
「ポルノのベーシスト。」
「君はそう知っててそーゆー所に行きたがるん?」
「別に変装してれば気付かれないって!!ほら、レッツゴー!いざ進めっ!!」
「・・・分かりました。」
典型的な言い出したら聞かないタイプの人間である彼女を止めることなど出来るはずもなく、わしはなくなく車を発進させたのであった。

よかった、まだ混んでない。
ゲーセンの中には夜通し遊んでいたのであろう眠たそうな顔の少年が数人いただけだった。
ゲームセンターってのは昼過ぎから急激に混み始める。タマちゃんを無理やり起こしててよかったぁ。
「ゲーセンなんて久しぶりに来よった。相変わらずなところじゃのぅ。」
さっきまで嫌がってたくせに、よく言うわ。
「おっ!ユーフォーキャッチャーじゃ!美里、どれがええ?わしが取っちゃるわ。」
そう言って彼は1台のユーフォーキャッチャーに近づいた。
「じゃあ、あれ!」
お言葉に甘えて1つのぬいぐるみを指差す。かなり取ることの困難な位置に座っているが、そこら辺は君の腕の見せ所さ!白玉雅巳(29)!!

「と、取ったぁ。」
あれから30分。半ば諦めていた私に、計4800円を使って彼は景品を取ってくれた。
もちろん、私は何度も止めた。それなのに彼は私の制止を押し切ってまでようやくこの人形を取ってくれたのである。
確かに愛はめちゃくちゃ感じる。でも、このぬいぐるみにはたして5000円の価値があるのか・・・?微妙なところだ。
言っても聞かないその頑固さはどこからくるの?
「こんなゲームちょろいわ!・・で、次は?」
一仕事終え笑いながら彼は、もらったぬいぐるみを抱え悩みだす私に尋ねた。
「じゃあプリクラ撮ろう。プ・リ・ク・ラ!」
「はいはい。わし、プリクラなんて撮ったことないけぇ、いい機会かもしれんの。」
ユーフォーキャッチャーに成功して機嫌がいいのか、タマちゃんはなぜかハイテンションで答えた。

「タマちゃんとプリクラが撮れるとは思わなかった。」
ボソッとつぶやいた声はタマちゃんに聞こえるはずもなく・・・。

「400円!?これぼったくりっちゅーんじゃないん??」
「まぁ、いいじゃん。・・・ほら、撮りますよ。芸能人さん。」
なんだかんだ言いながらもお金を入れて撮影開始。
考えてみたらタマちゃんと一緒に写真撮るの、初めてだなぁ。
彼は雑誌なんかでいつも撮影してるけど・・・いつも撮影されてる人は、勝負顔とか簡単にできちゃうんだろうなぁ。
そんなことばっかりが頭の中をグルグルしてたとき、ちょうど機械が撮影の秒読みを始めて。
『3・・2・・』
次の瞬間、私の唇とタマちゃんの唇は重なっていた。もちろん、撮影されたのは唇と唇が重なった瞬間。
「た、タマちゃん・・・。」
ビックリして、ちょっと恥ずかしくて離れると彼は言った。
「いや、せっかくじゃし。わしが美里を愛しとる証拠にもなるし。・・な?」
そう言う彼も少し照れていた。
「・・・嬉しいなぁ。でも、不意打ちはずるいよ。」
次の撮影の瞬間は私からのキスで。

これからも、いっぱいいっぱい愛をください。