だんだんと高くなる太陽。木々の緑も濃くなってくる。
制服も半袖になり、気分はすっかり夏だった。
屋上にでも行こうと教室を出ると。
前から走ってきた子にいきなり話し掛けられた。
「あのー・・・・」
「何?どっかで会ったことあったっけ?」
肩までの髪を切りそろえた、おっとりした可愛い子だった。
どっかで見たような・・・
「私、紺野珠美と言います。裏庭で助けてくれたのは、あなたですよね?」
「あー!あの時の!よく私だって分かったね」
「あの・・・腕の傷で・・・」
彼女が泣きそうな声で言う。そういえば腕を切ったんだった。
まだうっすらと痕が残ってる。
「こんなの気にしないで。もう消えかかってるし。・・・わざわざお礼言いにきたの?」
「はい・・・あの時はありがとうございました。貧血起こしちゃって」
「お礼なんていいよ。怪我しなくてよかったね。それよりあなたも1年生?」
「はい。2組なんです」
「タメなんだから敬語なんて使わないでよ。あ、私大滝蓮。よろしく」
「嬉しい・・・」
「へ?」
予想外な彼女の言葉に、私は驚いてしまった。
「大滝さんみたいなかっこいい人と友達になれるなんて・・・」
「そんな・・・かっこよくなんてないよ。あ、蓮でいいから。私もタマちゃんって呼んでいい?」
「うん!じゃ私も蓮ちゃんって呼ぶね」
タマちゃんが笑顔を見せた。可愛いなぁ。
「あ・・・蓮ちゃんどっかに行く途中じゃなかったの?」
「別に用があるわけじゃないからいいよ。それよりもう少し話しない?」
「え?・・・うん。私、蓮ちゃんのこと知りたかったんだ」
「・・・何か恥ずかしいなぁ」
というわけで、私はタマちゃんと友達になったのだった。
私と正反対の、非常に女の子らしい子だった。
バスケ部のマネージャーをしているらしい。
「蓮ちゃんならすぐレギュラーになれるよ」
と言われたんだけど、やっぱり運動部は気が向かない。
チャイムが鳴ったので、今度どっかに行こうと誘って別れた。
「何ニヤニヤしてるんだ?」
話し掛けてきたのは隣の珪君。
「してた?さっきね、3組の子と友達になったんだ」
「・・・へぇ」
「すごい可愛い子なんだよー。あれは惚れるね」
「・・・お前はオヤジか」
「アハハ」
私と珪君がそんな他愛もない話をしていると。
「・・・大滝!」
氷室先生に指されてしまった。 ヤバイ数学の時間だったんだ・・・
「ハイ・・」
「この問題の答えは何だ」
「・・・先生。俺にあてて下さい。俺も喋ってました」
珪君がそんなことを言い出すから、びっくりしてしまった。
クラスのみんなも驚いてる。
「先生。私が話し掛けたんです。葉月君は悪くありません。私が答えます」
「おい・・・」
珪君が抗議の声を上げたが、無視した。これ以上目つけられたら大変でしょ?
「あ、あぁ。大滝、答えられるのか?」
先生も動揺してた。その間に黒板を見て、計算をする。ぶっちゃけた話、数学は嫌いなんだけど。
「・・・3x−5x+2+Cです」
「待ちたまえ・・・君は授業を聞いていたのか?」
「いいえ」
「・・・まぁそれはいい。君は問題を見て暗算で解かなかったか?」
「はい」
「・・・この問題は暗算では解けないぞ?」
「そんなこと言われても・・・」
「・・・よろしい。座りたまえ。少し考える時間が欲しい・・・」
私が席に着いたところで、ちょうどチャイムがなった。
「・・・さっき、何でかばったんだ」
「これ以上ヒムロッチに目つけられたら大変でしょ?」
「・・・それはお前も同じだろ?」
「私はまだ入ったばっかだから大丈夫だよ。・・・多分」
「・・お前はバカだ」
「ひどーい。もう助けないからねー」
「・・・本当に暗算で出したのか?」
「え?問題のこと?そうだよ」
「・・・数学苦手なんじゃなかったのか」
「苦手だから暗算なんじゃん」
「・・・意味が分からない」
「私ね、公式自体に疑問とか持ち始めるから式とか書けなくってさ。やばいから数学得意な友達に暗算のやり方教わったの」
「・・・そっちのが俺はすごいと思う」
「そう?」
放課後。掃除当番を終えて教室に戻ると、すでに誰もいなかった。
机の上に座って、窓から外を眺める。何で夕焼けはオレンジなんだろ?
その時。
「レンちゃーん。そーゆー名前やろ?自分」
後ろから突然関西弁が聞こえた。
振り向くと、見たことのない男が立っている。
背が高くて、髪は長めだ。首にチョーカーをしてる。
「・・・誰?」
「何やそんな恐い顔せんといてぇな。俺は姫条まどか。こう見えても女やねん」
「ハァ?」
「あかん。はずしてもうたか。自分、有名やで。美人やってな」
「・・・目が腐ってんじゃないの」
「・・以外にきついこと言うなぁ。まぁええわ。俺と仲良ぉせん?」
「断る」
私が断言すると、姫条は唖然とした。
「・・・なんでか聞いてええか?」
「ギャル男は嫌いなの」
「・・・・」
「仲良くする気も失せたでしょ?あたし、性格悪いから。本当の女の子を狙いなよ。じゃあね」
「お、おい!」
姫条を置いて、私は教室を出た。
軽い男は大嫌い。でもちょっとやりすぎたかな?
そんなことを考えながら、オレンジ色の道を歩いた。