「はぁ・・最近いつも帰り遅くなっちゃうなぁ」
自分のせいなんだけど。
HR後、屋上で寝るクセがついてしまった。気づくといつも夕方。
「早く帰ろー」
鞄を持って校門に向かう。
「・・・?」
いつも人がいないのに、門の所に黒い集団がいた。
うちの制服じゃない、と思った時に小さな悲鳴が聞こえた。
「は、離してください!何なんですか!?」
この声!
「タマちゃん!?」
声が出るより先に、足が走り出す。
「蓮ちゃん!」
泣きそうな顔でタマちゃんがこっちを見る。
「おう大滝。久しぶりだな」
学ランの男が口を開いた。
「・・・何の用?」
「探したぜ。俺らから逃げられるとでも思ったのか?」
「逃げる?あたしが?日本語の使い方間違ってるわよ。あんた達一度でもあたしに勝てたことあった?」
「何だと!?」
「お前らウザいんだよ。何度も何度も。学習能力がないわけ?」
この学ラン集団は前の学校からの顔見知りだった。
ことあるごとに私にケンカを売ってきた不良達だ。
いつも私が勝ってたけど。
「くそ!いいのか?そんな口きいて。この子がどうなってもいいのかよ?」
「キャッ!」
タマちゃんが悲鳴をあげる。
「・・・代わり映えのないセリフねー。何回言ったら気がすむわけ?それにどーにか出来たことがあったっけ?」
「うっ・・・これまでは油断してただけだ!今日はそうはいかないぜ」
「そう。じゃこっちも本気でいかないとね。覚悟はできた?」
私がそこまで言った時。
「・・・蓮?どうした」
「珪君!?何でこんなとこにいるの?帰ったんじゃないの?」
後ろから声をかけてきたのは珪君だった。
異常な状況を見て、顔が険しくなる。
「裏庭で寝てた。・・・こいつら何だ?」
「ただのバカヤンキーだよ」
「何だと!・・・そいつお前の男か?かわいそうにな。騙されてんだろ?」
「どういう意味だ」
「そのままの意味だよ。大滝の本性知らないんだろ?こいつが何て呼ばれてるか知ってるか?」
「・・・くだらないこと言ってないで早く始めない?あんた達の相手、疲れるんだけど」
「そんなにこの男に知られたくないのか?なら余計教えないとな」
トップの男が嫌な笑いを浮かべる。
「・・・興味ない」
珪君のその言葉に、全員が耳を疑った。
「何だよお前。教えてやるって言ってんだぜ?」
「別に聞きたくない」
「・・・だってさ。さぁ始めようよ。タマちゃん嫌がってるし。やっぱりあんた達なんかに情けかけるんじゃなかった。今回は骨の1本くらい覚悟しなさいよ」
「・・・お前まさかやりあうつもりか?」
「当たり前。珪君はタマちゃん連れて逃げて。あいつから狙うから」
「何言ってんだ。お前置いていけるわけないだろ?俺が何とかする」
そう言った珪君を、私は止めた。
「駄目。顔に怪我でもしたらどうするの?巻き込みたくないの」
「バカ!お前が怪我したらどうするんだよ!」
「私は大丈夫。慣れてるから。あのくらいすぐ終わる」
「慣れてるって言ったって・・・何人いると思ってんだ」
小声で喋りあう私達にしびれを切らして、学ランが叫んだ。
「おら、始めるぜ!」
その声と同時に、私は走り出した。
勝負はあっけなくついた。本当にあっけなく。
多分1分もかからなかっただろう。
それぐらい蓮は強かった。
葉月が思わず見とれるくらい、蓮の動きは鮮やかだった。
まず珠美を捕まえていた男をダウンさせ、次々と相手を倒していく。
素早く、そして確実に、一撃で相手を地面に沈める。
何であんなに強いんだ・・・
葉月が2人を相手にしているうちに、蓮は残りの十数人を片付けた。
笑うでもなく、怒るでもなく、蓮は無表情だった。
「・・・これで懲りた?」
「う、うう・・・・」
リーダー格の男に聞く。本当に頭の悪い奴ら。
「何でいつも人質とるわけ?男なら潔く喧嘩売りにきなさいよ」
「お、お前は人質でもとらないと勝負しないだろ・・・」
「まーとにかく、今回は情けかけないから」
「な、何だ?」
男が怯えた顔をする。恐いなら喧嘩なんか売りにくるなっつーの。
「警告したよね?バカな自分を呪いなさい」
そう言って、男の腕をとった。
状況を把握した男が青ざめる。
「ゆ、許してくれ!」
「だーめ」
腕に力を込めた。
ゴキっという嫌な音がする。
「ぎゃああああああ!」
腕を折られた男がのたうち回る。
「・・・早く病院行けば?」
「お、覚えてやがれ!」
ひねりも何もないセリフを残して、下っぱ達が怪我したリーダーを引きずってく。
「ハァー」
私がため息をついた時。
「れ、蓮ちゃん・・・?」
タマちゃんが恐る恐る声をかけてきた。
「あ、タマちゃんどこも怪我してない?ごめんね。巻き込んで」
「う、ううん。私は大丈夫」
「恐かったでしょ?」
あいつらより私が。
答えを待たずに、空を見上げた。
これが・・・本当の私。
珪君を見たけど、表情からは何も読み取れなかった。