もうすぐ夏休み。気温が高くなるにつれて、ワクワクしてくる。

もちろん暑いんだけど、私は夏が好きだ。

白い雲とか、元気なヒマワリとか。

でも今年は少し例外だった。

理事長室呼び出しから1週間。

すれ違う生徒のほとんどに好奇の目で見られる。

「ほらあれ・・」という囁きも聞こえる。

私が一瞥すると、目を逸らしてどっか行っちゃうけど。

直接真相を聞こう、という勇気のある奴はいないようだった。

ま、別にいいんだけどね。

「ねぇ蓮ちゃん・・・」

遠慮がちに話かけてきたのは、タマちゃんだ。

「どうしたの?」

「あの事件のことで・・・蓮ちゃん嫌な思いしてない?」

「あー見せ物みたいでイラつくけど、平気だよ」

「ごめんね・・・」

タマちゃんが俯く。

「タマちゃんのせいじゃないじゃん。私が勝手にやったんだしさ」

「でも・・・」

「いいって!言い寄ってくる変な男が減って嬉しいくらいだよ」

「そんなこと言っても・・・」

「もういいの!これでおしまい。さ、張り紙見に行こうよ」

まだ何か言いたげなタマちゃんを引っ張って、掲示板を見に行く。

この前あったテストの結果が張り出されてるはず。

見たくなんかないんだけど、こうでもしないとタマちゃん謝り続けるし。

「何コレ。成績上位者だけじゃないのぉ?」

「違うよ。全員分」

目の前のでかい紙を見て、気が遠くなりかけた。

1年生全員の点数&順位が張り出されている。

勉強のできない者にとっては地獄だろう。

「あ、珪君1位だよ。すごいなぁ。いつ勉強してんのかな?」

「そういえば、葉月君と蓮ちゃん仲良かったんだよね。葉月君はいつもだいたい1位だよ」

「なんか不公平じゃない?顔もいい上に勉強もできるなんてさー。私も少しくらい分けてもらいた・・・」

「あっ!」

私の言葉はタマちゃんに遮られた。

「ど、どうしたの?」

「蓮ちゃん・・・頭も良かったんだね・・・」

「はい?馬鹿だよ?」

「葉月君から少し目線下げてみて・・・」

上から下を見ていくと。

あり得ないものを見てしまった。

「・・・間違えじゃん?」

「間違えで5位になんてなれないよ。次の時は勉強教えてね」

「教えられるほど頭よくないんだけど・・・勉強してなかったのになぁ・・・」

「不公平って言葉は、蓮ちゃんと葉月君のためにあるようなものだね」

タマちゃんがからかうように言って。

おかしくて笑ってしまった。


「ねーいつ勉強してるの?」

「・・・お前にそのまま返す」

教室に戻って珪君に質問したら、逆に聞かれてしまった。

「私はやってないよ」

「俺も特にしてない」

「じゃ何で頭いいの?」

「お前は何でできるんだ?」

「私が聞いてるの!」

「・・・怒るなよ」

「怒ってないけどさ。からかって遊んでるでしょ?」

「・・・あぁ」

「!ひどーい」

私が抗議すると、珪君はわずかに微笑んだ。

「・・・何で5位なのか教えてくれよ」

「私が聞きたいよ。ヤマが当たったのかな。珪君は元がよさそうだもんね」

「・・・どういう意味だ?」

「IQが高いってこと。天才ってこーゆー人なのかなぁ」

「・・・お前もそうだろ」

「違うよ。前の学校じゃ中の下だったもん。あ、でもカンニングはしてないよ」

「・・・分かってる。・・お前英語どうしたんだ?」

「あーあれね・・・」

珪君の言葉で点数を思い出す。

他の教科は良かったのだが、英語だけ40点・・・

「・・・調子悪かったのか」

私はぱたぱたと手を振った。

「違うよ。英語嫌いなんだもん」

「・・・・」

「日本人なんだから日本語喋れればいいと思わない?」

「・・・・どうだろな」

珪君は呆れてるようだった。

「もう夏休みだね!楽しみ!」

「・・・嬉しそうだな」

「だって夏好きだもんー」

「・・・好きそうだもんな」

「そうかな?ね、夏休みどっか行ったりする?」

「いや・・・仕事がある・・・」

「そっか・・・私も予定はないんだけどね。あ、ここでも花火大会あるんだね」

「あぁ。結構綺麗だ」

「そうなの?ね、一緒に行かない?」

「あ?」

私がいきなり誘ったからか、珪君は驚いてた。

「もう誰かと行く約束してる?嫌ならいいんだけど・・・」

「・・・そんなことない。行く」

「本当!?じゃ約束!」

私が小指を出すと。

しょうがないな、という風に肩をすくめた後で指を絡めてくれた。