「たまちゃんすごーい!着付けできるなんて」

「そんなことないよぉ。お母さんに覚えさせられたの」

たまちゃんがおっとりと答える。

「普通着付けできる高校生なんていないって。でもタマのおかげで助かったよ。やっぱ花火っていったら浴衣でしょ!」

というわけで、私、なっちゃん、たまちゃんの3人はなっちゃんの家で浴衣を着ていたのだった。

「たまちゃん水色がよく似合ってるね。なっちゃんのピンクも可愛い」

「でしょー?これおニューなんだ」

「れ、蓮ちゃん動かないで・・・」

「あ、ごめん」

たまちゃんは椅子の上に乗って、私の浴衣の襟を直している。

何で椅子の上かっつーと、私がでかいから。

「できた!」

たまちゃんがにっこり笑って、椅子から飛び降りる。

「赤がよく映えてるよ。背が高いからかっこいいし」

「ありがと。でもこーゆーのは小さい方が可愛くない?可憐な感じでさ」

「蓮ちゃん、着流しとか似合いそう・・・・」

「えっ?」

「あー言えてる。武士みたいで」

「どーせ男みたいですよー。あ、タマちゃん何気に胸あるよねー」

「それ私も思った!着やせするタイプじゃない?」

「そ、そんなことないよー。普通くらいだよ。なっちゃんも大きいじゃない」

「私は日々、努力してるからねー。チアの衣装を着こなせないと」

「・・・いいよねー二人とも。私なんてまな板だよ」

二人は私を見て、同時に「ごめん・・」とつぶやいたのだった。

「ちょっと、余計虚しくなるからやめてよー!」

「ははっそうだね。でも蓮はスタイルいいんだから、それくらい我慢しなさい」

「これからまだ大きくなるよぉ」

あまりフォローになっていない気がするが、2人に気を使われるのも嫌だしね。

「そーいやさ、姫条は誰を連れてくるつもりなんだろ?」

「さぁ?」

本当は珪君と2人のはずだったんだけど、いつのまにか人数が増えてしまった。

まどりんが一緒に行きたいと駄々をこねたから。

3人で行くわけにもいかないので、なっちゃん達を誘ったのだ。

びっくりしたのが、なっちゃんはまどりんと顔見知りだったみたい。

きっとまどりんが声をかけたんだろう。

その割には喧嘩ばっかしてるんだけど。

どうせなら3人ずつにしようということになって、まどりんが友達を連れてくると約束したのだった。

一応珪君には了承を得たんだけど、ちょっと機嫌が悪かった。

大勢でいるのは好きじゃないみたい。

「この浴衣姿を見るのがあいつなのは気に食わないけどー。花火は楽しみだね」

「奈津美ちゃん、そんなこと言ったら姫条君に失礼だよ」

「いいの。あの馬鹿にはもったいないわよ。ねぇ葉月はちゃんと来るわけ?」

「約束してあるから大丈夫だよ。元々行こうって言ってたし」

「葉月君がよくOKしてくれたねー。断りそうなのに・・・」

「蓮はね、特別なのよ」

「そんなことないってば。強引に誘ったんだよ」

「そーゆーことにしといてあげますか。じゃそろそろ行く?」

「そだね」

一通りおしゃべりがすんだところで、私達は新はばたき駅に向かった。


「あ、まどりん発見」

「でかいから目印になっていいわね。もう一人は誰かしら?」

「あっ!」

「タマちゃんどうしたの?」

「う、ううん。何でもない」

「?」

まどりんは背が高い上に浴衣を着ていたので目立った。

なんてゆーか・・・・テキ屋っぽい。

隣の男の子は見たことがない。顔にバンソーコーを貼ってた。

「おーい。まどりーん」

「お、来たか。なんや、蓮ちゃんの浴衣姿ええなぁ。よお似合っとる」

「ありがと。まどりんも・・・違う意味で似合ってるよ」

「なんやそれ。おーお前も浴衣着てたんか。いつもよりは女っぽいな」

「何ですって!?この奈津美様の美しさがわかんないの?自分はテキ屋みたいなくせに」

「なんやと!まぁ別にお前に見せるために着てきたんやないからな」

「もう会った早々やめなよ」

私が2人をなだめていると、タマちゃんとまどりんの友達が話していた。

知ってる人だったのかな?

「鈴鹿君!」

「なんだよ、マネージャーじゃねえか。お前も一緒なのかよ?」

「う、うん」

「知り合いか?なら話早いわ。これは鈴鹿。バスケ馬鹿や」

「おい、お前もうちょっとましな紹介しろよ」

「ほんまのことやんけ。で、赤い浴衣が蓮ちゃん。綺麗やろ?こっちのピンクが藤井や。珠美ちゃんは・・知り合いなんやろ?」

「ちょっと何よ、その言い方!」

なっちゃんが抗議したが、まどりんは聞こえないふりしてる。

「大滝です。よろしく」

「ああ。鈴鹿だ。バスケやってる」

「だからタマちゃんを知ってるのか」

「うん。姫条君が鈴鹿君と友達なんて知らなかった・・・」

タマちゃんの顔が心なしか赤いような・・・?

「葉月はどないしたんや?ほんまにくんのか?」

「くるってば。・・・あ、いた!珪くーん!」

私が手を振ると、珪君が気づいてこっちに来た。

「・・・待たせたな」

「遅いやんけ。重役出勤やな」

「まどりん!・・今来たとこだから大丈夫だよ」

「じゃそろそろ行きますか」


なんとなく2人ずつの3列になる。

喧嘩ばっかしてても、なっちゃんとまどりんは仲がよさそうだ。

案外似合ってるかも。

タマちゃんは恥ずかしそうに鈴鹿君と歩いてた。可愛いなぁ。

「珪君は何着ても似合うね!後で写真撮ろうよ」

「・・・何だよ、いきなり」

「だって、珪君の浴衣姿なんて中々見られないもん」

「・・・お前もいつもと雰囲気が違うな」

「そう?変かな?」

「いや・・・ヒラヒラして金魚みたいだ」

「金魚・・・?うーん。分かりにくいなぁ」

「俺・・・好きだよ。金魚」

「それって褒めてもらってるの?」

「ああ・・・お前は赤がよく似合うな」

「へへ・・・ありがと。着てきた甲斐があったよ」

照れ隠しに笑うと、珪君はしばらく私のことをじっと見てた。