「さっくんおはよー」
朝から花壇に水を撒いているさっくんをみつけて声をかけた。
「あ、おはようございます。大滝さん」
「蓮でいいよ。私も名前で呼んでるし」
「じ・・・じゃあ蓮さん・・・て呼ばせてもらいます」
「そんな緊張しなくていいって!いじめたりとかしないから」
私の冗談にさっくんは顔を強張らせた。
「蓮さんは誰かをいじめてるんですか・・?」
「私のは天誅って言ってよ。素人には手出さないの!」
「そんな極道みたいな・・・あ、もうすぐチャイム鳴りますよ。随分ゆっくりなんですね」
「あ!ヤバイ、またヒムロッチに怒られちゃう!じゃ、またねー」
手を振りながら、ダッシュで教室を目指した。
ヒムロッチは怒ったりしないけど、睨まれるのは嫌だ。
「おはよー珪君」
めずらしく起きている珪君に挨拶する。
「・・・おはよ」
「居眠りしてないなんてめずらしいね」
「・・・お前、守村と知り合いなのか」
「は?」
いきなりな質問に、まぬけな声を出してしまう。
「守村と知り合いなのかって聞いてる」
「そうだけど・・・この前友達になったの。珪君もさっくんと友達なの?」
「さっくん・・・?」
「守村君のこと。あ、もりりんの方が良かったかな?まどりんとかぶるからやめたんだけど・・・」
「・・・別にいいんじゃないか」
「何でそんなこと聞くの?」
「さっき・・・窓からお前らが見えた」
「ふーん。でも珪君がさっくんと仲いいとはねぇ・・・」
「・・・なんだよ」
「意外だなって思って。どんな話するの?」
「別に・・・」
「教えてくれたっていいじゃん。ケチー」
「席につきなさい!チャイムは鳴っている!」
ヒムロッチが教室に入ってきて、会話は一時中断された。
珪君に仲がいい友達がいたなんて、びっくりだな(失礼だけど)。
誰かと一緒にいるとこ見たことないし。
さっくんとどんな話すんだろ? 花の話?
珪君、花好きだっけ・・・?
そういえば、珪君のことほとんど知らない・・・・
珪君も私のこと知らないだろうけど。
「私もバイトしようかなぁ」
「・・・何だよ。いきなり」
「どうよ?」
「・・・質問の意味が分からないと答えられない」
「そっか、ごめん。みんなバイトしてるから私もしたほうがいいのかなって」
「・・・周りが決めることじゃないだろ」
「そうなんだけど。珪君はモデルしてるんだよね?」
「・・・ああ」
「楽しい?」
「・・・別に。頼まれてるからやるだけだ」
「でもさ、楽しくなかったら続かないよ。嫌だったら拒否することもできるんだし。知らないうちに自分の一部になってるのかもよ?」
「・・・・考えたことなかった」
「この前はばチャ見たんだけどさ、もうちょっと笑ったほうがいいって」
「お前はすぐ話が変わるな・・・」
「あ、ごめん。私のバイトの話だよね。何が向いてると思う?」
「・・・・・」
気軽に聞いたのに、考え込んでしまった。
「そ、そんなに真剣に考えなくてもいいよ・・・」
「・・・お前こそモデルに興味ないのか?」
「モデルー!?」
意外な言葉に驚いてしまう。
私が? まさか。
「背・・・高いしな。お前ならやれる」
「私がメンズモデル・・・?」
「・・・馬鹿。メンズは男だろ」
珪君が突っ込みをいれるとは思わなかった。
ちょっと動揺してしまう。
「いくら英語できないからってそのくらい分かるよ。私男みたいだから女の子モデルは無理」
「・・・そんなことない」
「あるの。それに写真撮られるの嫌いなの」
「何で」
「魂抜かれるから」
「・・・・・」
「冗談だってば。カメラの前で笑えなくてさ」
「俺だって笑ってないだろ」
「それ冷静に考えたらおかしくない・・・?」
「・・・・かもな。今日撮影あるから見にこいよ」
「え?部外者なのに見に行っていいの?」
「大丈夫だ。・・・雰囲気を見ればいいだろ」
「だからできないってばー。それに簡単になれるもんじゃないでしょ」
「スタジオに来れば分かる・・・」
「・・・・?」
その後どんなに聞いても珪君は教えてくれなかった。
それよりも、どうして珪君がここまでモデルを薦めるのかが不思議だった。
珪君は根本的に間違ってる。
モデルは背が高いだけじゃなれないんだってば・・・・
