「ねー、本当に行っていいの?」

「いいって言ってるだろ。・・・覚悟決めろ」

珪君のバイト先に向かう途中。

何回同じ会話を繰り返しただろう?

「だってさー・・・」

そんな簡単に見せてもらえるのかな?

珪君人気モデルだし・・・

私がそんなことを考えている間に、スタジオのあるビルに着いてしまった。

「ここだ・・・」

珪君が指差して、自動ドアをくぐろうとした時。

「珪!遅刻しないようにいつも言ってるでしょ!」

「・・・・これでも急いで来た」

キャリアウーマン風の女の人が立ちはだかった。

眼鏡の奥の瞳は冷たい。

「まったく・・・この子は誰?」

私を一瞥する。

「・・・友達。見学に連れてきたんだ」

珪君の言葉に女の人は明らかに私を睨んだ。

うっこわっ・・・

「大滝です・・・」

「どうでもいいけど珪の邪魔しないでね!」

「はぁ・・・」

「行くぞ」

珪君はどこ吹く風で、私を促した。


「ねぇあの人誰?」

階段を登りながら、小声で問い掛ける。

「マネージャー」

「なるほどね・・・」

「・・・気にするな」

「うーん・・・・」

思いっきり邪魔って目で見られたしなぁ。


「葉月ちゃんやっと来たな。こっちで着替えて!」

「・・・遅れてすいません」

カメラマンらしき人が、珪君に指示する。

「別に大丈夫だけどね・・・あれ?後ろにいる子は?モデルさん?」

「俺の友達です。見学に来たんです」

「そうなのー?葉月ちゃんが人連れてくるなんて珍しいね。ってゆうか初めてだね。君モデルか何かやってる?」

「やってないですけど・・」

「本当に?もったいないよ。あ、今日葉月ちゃんと一緒に写ってみない?」

「えっ!?い、いいです・・・」

「そんなこと言わないでさー。丁度もう一人欲しいとこだったんだよ」

「撮ってもらえば・・・」

珪君までそんなことを言う。

「そんな適当に・・・」

私が抗議しようとした時、派手な服が目に飛び込んできた。

いきなり両頬を挟まれる。

「!?」

「あらー!葉月君ったらこんないい子隠してたのねー?あなたにすごく似合いそうな服があるのよ!!」

立っていたのは明らかに男だった。

筋骨隆々という言葉がこんなぴったりな人を、今まで見たことがない。

なのになんでオネエ言葉・・・?

「あのー・・・私モデルじゃないんですけど・・・」

「そんなの関係ないわよ!今からあなたはモデル!!さーこっちに来て!」

「ええっ!?ちょ、珪君助けてよ〜!」

そのお姉さん?に引きずられて、更衣室に連れ込まれてしまった。

ドアが閉まる直前に、珪君が顔を背けて笑ってるのが見えた。

・・・なんかはめられた気がする・・・・