「それで一緒に写ってきたの?」

なっちゃんが楽しそうに言う。

「これすっごいかっこいいよ!」

言いながら笑い出した。

・・・そう。

私が着たのはメンズの服。

早い話が、男のフリしたってわけ。

昨日貰ったポラを見て、なっちゃんは笑っているのだった。

「そんなに笑わなくたっていいじゃん・・・・」

「ご、ごめん。でも違和感ないよねー」

「・・・そうだね」


珪君は特に何も言わなかった。

無表情だけど、カメラマンの言うことはちゃんとこなしていて、さすがプロだと思った。

私は顔を引きつらせないようにするので精一杯だったけど。

それなのにまだモデルに誘われて。

嫌だって言ったんだけど、押し切られてたまにならいい、ということで合意してしまったのだった。

だって花椿先生恐いんだもん。

あ、あのオネエ言葉のゴツイ人のことね。

有名なデザイナーなんだって。

私はそーゆーことに疎いから知らなかったんだけど。

帰りに珪君が喫茶店でお茶を奢ってくれた。

さすがに悪いと思ったらしい。

私はアイスティー、珪君はコーヒー。

「・・・急に悪かった」

「本当だよ。しかも男もんだしさー」

「俺も驚いた」

「ま、ヒラヒラしたの着るよりはマシだけどね。これでチャラにしてあげる」

「・・・・どう思う」

「何が?」

「この仕事」

「うーん。笑ってればいいだけだと思ってたけど、そうでもないんだね」

珪君は笑ってすらいないけどな。

「・・・・そうだな」

「私には向いてないけどね!」

「・・・・そんな強調するなよ」

「私はやっぱ裏方のがいいな。後は肉体労働とか」

「・・・・・」

「珪君は無理そうだね」

私がそう言うと、ちょっとむっとした。

「どーゆー意味だ」

「ビジュアル的に。汗まみれでニッカーボッカーとかはいてたらちょっとヤダ」

「・・・・・」


「・・・蓮、聞いてる?」

なっちゃんの声が遠くに聞こえて、慌てて我に返った。

「あ、ああ何?」

「また考え事?ね、これ雑誌に載ったりするの?」

「はばチャに載るようなこと言ってたけど・・・切られるかもね」

「そんなことないわよ。絶対買うから!」

「買わなくていいって・・・」

「何言ってんのよ。みんなに自慢してやんだから」

「絶対やめて・・・」


この時の私はまだ知らない。

この一枚の写真が、歯車を少し狂わせてしまうことを。