雲ひとつない青い空。暑くもなく、寒くもなく。
気持ちいい陽気だった。
「何でそんなに元気なの〜?」
となりからうんざりした声で言ったのは、なっちゃん。
「だって体育祭だよ?楽しみ!」
「はぁ?あんたがやる気だとは思わなかったけど。行事とか燃えなさそうだから」
「体育祭は特別なの。勝負だからね」
「ふーん。ま、足速いもんね。リレー期待してるよ」
「まかしといて!」
今日は体育祭だった。私はこの行事が好きだ。
中学は女しかいなかったからイマイチ盛り上がりに欠けたけど、今年は楽しみ。
何で好きなのか自分でも分からないけど、雰囲気がいいんだろうな。
午前中の競技をこなし、席に戻る。
なっちゃんは借り物競争で、氷室先生に棒を借りていた。
「ヒムロッチなかなか貸してくんないの!こっち困ってんのにさぁ」
「いつもの仕返しなんじゃない?なっちゃんいたずらばっかしてるし・・」
「かもね。くそー次は覚えてなさいよ!じゃまた後でね」
お昼になって、みんな家族の所にちらばってく。
私、今日一人なんだよねぇ。屋上にでも行こうかな、と思った時、校舎裏に向かう珪君を見かけた。
何しに行くんだろう? よし、追いかけよう。
人並みを掻き分け、珪君に声をかける。
「珪君!どこ行くの?」
「・・・校舎裏。お前は何でここにいるんだ?」
「何でって珪君追いかけてきたんだよ。裏でご飯食べるの?お母さんとかは?」
「・・・いない。仕事だから。お前も早く行った方がいいんじゃないか?」
「私も今日一人なの。一緒に食べてもいい?」
「・・・かまわない」
「よかった」
校舎裏はひんやりとしていた。
並んで下に座り込む。
「・・・俺となんてつまんないんじゃないのか」
「そんなことないよ。一人で食べるほうがつまんないじゃん」
「・・・そうか」
「体育祭まで自分で作ったお弁当なんて、なんか虚しい〜」
「そうなのか?」
「親忙しいしね。でも体育祭の楽しみって言ったらお弁当なのに!」
「・・・・・」
「珪君は、何―?パンなの?つまんなくない?」
「いつもこんなんだから・・・」
「作ってもらえないの?」
「親、ほとんど家にいないんだ」
「・・・そっか。でも栄養偏っちゃうよ?あ!私の半分あげるよ!」
「お前が困るだろ?」
「じゃ、珪君のパン半分と交換。それでいいでしょ?」
「・・・・・」
「あ、味の心配してる?死にはしないから大丈夫だよ」
「・・・・サンキュ」
半ば強引に交換させたけど、珪君は少しだけ嬉しそうな顔をした。
両親はそんなに忙しいのかな?
うちも働いてるけど、夜には帰ってくる。
晩御飯とかどうしてるんだろう・・・・
「・・・いただきます」
「律儀だね・・・じゃ私もいただきます」
お弁当箱の蓋をお皿代わりにして、二人で食べ始める。
どう?って聞きたいけど、恐い・・・・
めちゃめちゃマズイってことはないと思うんだけど・・・
「・・・・うまい」
珪君がボソっとつぶやいた。
「本当に?無理してない?」
「してない。・・・お前料理うまいんだな」
「そう?へへっ」
「・・・どうした?」
「おいしいって言ってもらえるのは嬉しいね。ありがと」
「お礼言うのはこっちだ。久しぶりにちゃんとしたもの食べた・・・」
「いつも何食べてるの?」
「その辺で買ってきたやつ」
珪君は平然とそう言ったけど。そんなの悲しくない?
まぁ自分一人のために作る気にならないのかもしれないけど。
「病気になっちゃうよ?・・・じゃ今度作りにいってあげる!」
「そんな・・・迷惑だろ?」
「私が作りたいから言ってるの。食べたいもの決めといてね」
「・・・・ああ」
午後のメインはリレー。
あんまりやる気のなかった珪君を叱り、まじめに走らせた。
私も本気を出して、うちのクラスは1位。
はしゃいでいる私を見て、珪君は笑っていた。
客席では。珠美が蓮を探していた。
あれから色々探してみたのだが、見つからなかった。
最後の望みをかけて、生徒の顔をくまなく見る。
そして。 リレーの時、蓮を見つけたのだった。
結んだ長い髪。女の子にしては高い身長。
そして、左腕についた切り傷。
あの人だ!
彼女はリレーの選手で、とても足が速かった。
風のように自分の傍を走りぬけた。
クラスを確かめる。・・・・1組。
明日。勇気を出して会いに行こう。
もう私のことなんか忘れてるかもしれないけど。
会って、話がしたい。
最後はフォークダンスだった。
今までの人生で、フォークダンスなんか踊ったことのない私は大失敗。
休んだ生徒の変わり、と言って参加していた氷室先生の足を踏みまくり、しっかり睨まれてしまったのだった。
明日が・・・恐い。
珪君と手を繋ぐのはちょっと恥ずかしかったけれど、向こうは気にしてないみたいだった。
みんなそんなもんなの?
今日は楽しかったな。