許せない。
許さない。
アイツの絶望を味わうがいい。

「ごめんね・・・・僕はもう生きてられないよ」

「何言ってんだよ!何回だってやり直せるだろう!」

「生きる意味がなくなっちゃったんだよ。絶望するのに疲れたんだ」

「悪いのはお前じゃない!死ぬことないだろう!?」

「今までありがとう・・・さよなら」

少年は微笑んで、ふわりと体が宙に舞った。

「やめろ!」

必死に伸ばした手は、しかし永遠にあいつには届かなくて。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

俺の叫びだけが、夜の街にこだました。


真夜中に。

叫び声が聞こえたような気がして飛び起きた。

耳をすましたが、辺りはひっそりとしている。

「夢か?それとも・・・また何や起こるんか?」

姫条は苦々しく呟いた。


「なんや、こんなええ天気やと昼寝したくなるなぁ」

ぽかぽかと暖かい陽気に誘われて、姫条は思わず欠伸をした。

ここは屋上。 

気分を入れ替えに来たのだが、このままだと眠ってしまいそうだった。

「教室帰るか・・・」

腰を上げた時。

「あ、姫条じゃない」

「なんや藤井か」

「なんやって何よ!あたしだってあんたになんか会いたくないわよ」

扉から現れたのは奈津美だった。

黙っていれば可愛いのだが、少し気が強い。

「あーそうですか。俺は消えますよ」

「ちょっと待ちなさいよ。屋上は今日から立ち入り禁止になったのよ」

「なんでや?それに立ち入り禁止なら、何でお前がここにおるねん」

「蓮に頼まれたのよ。立ち入り禁止のわけはあんた担任の話聞いてなかったの?」

「担任の話?あー今日遅刻してきたからなぁ」

「もう、しょうがないわね。ニュースも見てないんでしょ。少し前に高校生が飛び降り自殺したのよ」

「うちの学校の生徒か?」

「違うわ。そしたらもっと大騒ぎよ。近くの学校なんだけど、夜の校舎から飛び降りたんだって。だからうちも用心の為ってわけ」

「へー・・・まだ若いんになぁ」

「そうね・・・ホラ早く教室に戻りなさいよ!」

「もっと優しく言えんのか?蓮ちゃんが迎えに来てくれればいいのに・・・」

「うっさいわね!ヒムロッチにチクるわよ!」

口喧嘩しながら、屋上の扉をくぐる。

ふと、死んだ奴はどんな気持ちでこの扉をあけたのだろう・・・と、姫条は思った。


戻った教室で、姫条が守村に拝んでいる。

「めがね君、頼むからノート貸してくれ〜」

「めがね君って呼ばないで下さい!ノートも駄目です。自分でやらないと意味がないでしょう?」

「意地悪せんといてや〜。あ、そうや。自殺した高校生のことしっとるか?」

「ニュースでやっていたのを見ました。まだ若いのに・・・」

「そうやな・・・いじめかなんかか?」

「違うと思います。彼は将来有望なピアニストだったんですけど、指を折ってしまったらしくて・・・それで悲観したんじゃないでしょうか」

「うーん。俺にはわからんわ。生きてれば何度だってやり直せるやろ?」

「・・・世の中強い人ばかりではないんですよ」

守村の言葉が胸に響いた。


路地裏で、今殺したばかりの男を見下ろす。

「・・・・・」

ポケットから五線譜を取り出して、男から流れる血で音符を連ねていく。

血で書かれた楽譜。

お前は喜ぶだろうか。