「むかつくんは・・・・分かるけど、相手の人数・・・考えてからにしぃや」
「悪い・・・助かった」
不良たちに絡まれた男子高生に加勢したせいで、息が上がっていた。
相手が見掛け倒しだったせいで、怪我はないが。
3人とも裏路地にもたれて、下を向いている。
「何で・・・助けてくれたんだ?」
「あー?1人じゃ勝算なさそうやったからな。まぁ10対1でも勝てる奴もおるけど・・・」
「俺だって普段は喧嘩したりするほうじゃない。あいつらが・・・いや、イライラしてたんだ」
「・・・怪我したら意味ないだろ」
葉月が珍しく会話に加わった。
「ああ・・・どうかしてたんだ」
「なぁ、その制服近くの公立のやろ?何年なん?」
「1年。 お前らは?」
「タメや。年上やったらどないしよかと思ったわ〜」
姫条の言葉に、やっと男が笑った。
「俺は前宮。これも何かの縁だろ」
「姫条や。こっちは葉月」
「・・・よろしく」
「よくゲーセンくんのか?」
前宮の質問に、姫条が葉月をちらっと見た。
「今日は・・・たまたまだ」
「やっぱな。見かけない顔だと思ったんだ」
「お前は常連なんか?」
前宮が一瞬顔を曇らせたように見えたのは、気のせいだろうか?
「最近はな・・・」
「まぁこれからは気つけえや。ほな、俺らは行くか」
「ああ・・・」
2人が腰を上げた。
「今日はありがとな。今時お前らみたいな奴もいるんだな」
「俺らは正義の味方やさかいな!」
「ははっ何だそりゃ。じゃ、またな」
「おう。今度ゲームでもしよや」
前宮と別れて少し歩いた時。
「不良の方はいいのか・・・・?」
「あー!忘れてたわ!」
「何のために来たんだよ・・・」
葉月がため息をつく。
「ま、まぁ顔は分かったんやしええやんか。それに今気づいたんねんけど、前宮の制服!」
「・・・制服がどうかしたのか」
姫条が声を潜める。
「死んだピアニストと同じ学校やで」
「・・・・」
「次会ったら聞いてみようや。同じ学年やし、何や知ってるかも」
「・・・だといいけどな」
「お前はいつもネガティブやなー。もうちょっと前向きに生きたほうがええで?」
「余計な世話だ・・・・そういえば、前宮は何で一人でいたんだろうな」
「ゲーセンにってことか?静かにゲームやりたかったんちゃう?」
「・・・・」
「ほな、今日は帰ろうか。明日また聞けばええ」
「・・・そうだな」
「お、お前誰なんだよ!?幽霊なら成仏してくれ!」
男が哀願している。
男の前に立つ人影は、ふっと笑った、ように見えた。
「じゃあな・・・・」
一瞬躊躇うようなそぶりを見せた後、大振りのナイフがきらめき、男の喉が裂かれた。
「っ!」
声にならない悲鳴をあげ、男は崩れ落ちた。
おびただしい量の血が、地面に流れる。
まだ生きてはいるが、出血多量で助からないだろう。
男を殺した犯人は、血をインクにして紙に音符を書き始めた。
口ずさんだメロディーが、夜風に流れる。
ノクターンの物悲しい旋律は、誰の為のものなのだろうか・・・

