森の広場で楽譜を広げていると。
「カーホちゃん」
いつものように、後ろからあの人が抱きついてきた。
私は苦笑しながら先輩をはがそうとして・・・
「キャー!!」
私の悲鳴と、バチンという音が響いた。
「ヒドイよ、香穂ちゃん・・・俺、痴漢みたいじゃん」
涙声で言う和樹先輩の頬には、赤い手形がばっちり残っていた。
勿論私のだ。
「ごめんなさい・・・でも先輩が・・・」
濡らしたタオルを先輩の頬にあてながら、私はまじまじと彼の顔を見た。
「俺じゃないみたいだった?ね、どうかな?」
「どうって言われても・・・」
答えに困る。
「頭良く見えない?これ度が強すぎて、自分じゃよくわかんないんだ」
先輩はメガネをかけていた。
よりによって黒縁瓶底メガネを。
どんなに素晴らしいイケメンをも、一瞬で芸人に変えてしまう恐ろしいアイテムだ。
頭がいいというよりは、ただの危ない人にしか見えない。
「どこで手に入れたんですか・・・?」
「クラスのヤツが貸してくれたんだ。これかければ香穂ちゃんも惚れ直すくらい勉強できそうに見えるって」
騙されてる・・・!
しかも全く気づいていない。
きっといつもこうやって遊ばれているのだろう。
そう思ったら、少し気の毒になった。
純粋なのは先輩の美点でもあるし、私も好きだけれど。
「あ、でもよく見えないなら、どうして私だって分かったんですか?」
巧妙にメガネへのコメントをぼかしつつ、さっきから気になっていたとこを聞いた。
「そりゃ分かるよー。香穂ちゃんだもん」
先輩はふにゃっと笑って、よく分からない答えをした。
「楽譜見てただけなのに?」
「何してたって、どこにいたって俺には分かるよ。だって香穂ちゃんのこと大好きだもん」
臆面もなく言い切って、先輩は微笑んだ。
普段なら一撃KOされているところだが。
こんなかっこいいセリフさえ帳消しにしてしまうこのメガネ、恐るべし・・・!
一刻も早く消し去らねば。
でも何て言おう・・・?
私が思考を張り巡らせていると、急に先輩が「うーん」と唸った。
「頭痛くなってきた・・・やっぱり強すぎだな。でも香穂ちゃんが気に入ってくれたんなら我慢するよ」
我慢しなくていいから!
心の中で突っ込みをいれつつ、いい考えがひらめく。
ちょっと恥ずかしいけど、この際仕方ない。
「私の為にイメチェンしてくれたのは嬉しいですけど・・・」
言いながら先輩のメガネを外して、そのまま顔を近づける。
唇が触れ合った。
赤くなって口をぱくぱくさせてる先輩に微笑む。
「キスするとき、邪魔でしょ?」
眼鏡ネタ。
萌え眼鏡は他のサイトさんで堪能したので、萌えられない眼鏡を(笑)
絵が描けたら、漫画にできるのに・・・!
最後のセリフは、私が男だったら是非言われてみたいです(どうでもいい)