ガラス張りの店の片隅に見知った人影を見つけて、ナルトは駆け寄った。
「あー!カカシセンセェ!すっげー久しぶりだってばよ!」
「おーナルトか。元気?」
「元気元気!それよりさ・・・センセェはこんなとこで何してんだってばよ?」
ナルトは不思議そうにカカシの手元を覗き込んだ。
カカシが持っていたのは、うさぎのぬいぐるみだったからだ。
周りを見やれば、店内にいるのは女性客ばかりで、男はナルトとカカシだけだった。
カカシはうさぎを棚に戻すと、
「ホワイトデ−のお返しをね。何が欲しいのかさっぱりでさ・・・」
「ほわいとでー?」
「何、お前知らないの?チョコレートのお返しする日だよ」
随分端折った説明だったが、ナルトには伝わったようだ。
「チョコかぁ・・・あ!そーいや、ヒナタに貰ったってばよ」
「それならお礼しないと」
「何あげればいいんだってばよ?」
「んー、アメとかクッキーとかでいいんじゃない?何貰っても嬉しがるだろ」
「分かった!センセェありがとうってばよ!」
手を振って駆け出していくナルトを見ながら、カカシは呟いた。
「これで借りは返したぜ。ヒナタ」
「さーん。宅急便ですよぉ」
随分間の抜けた声を出す宅配人だと思いながら、は扉を開けた。
「・・・何してんの?」
「写輪眼マークのカカシ宅急便vつーかそんなカッコでドア開けるな!」
「?普通ジャン」
大きめのTシャツにホットパンツ。
湯上りなのか、濡れた髪の毛からは水が滴っていた。
「お前は無防備すぎ!いいから、部屋に入りなさい」
カカシに部屋に押し込まれ、どっちが客だよ・・と思いながらも
「あ、お茶飲む?先生がうちに来るなんて珍しいね」
「渡したいものがあってさ。つーか、きったねー部屋だな、オイ」
事実、汚かった。
ゴミが散乱しているわけではないのだが、物があちこちに放り投げられていてごちゃごちゃした印象を与える。
部屋の隅には、何かの木がジャングルのように生い茂っていた。
「一番分かりやすい位置に置いてあるの!彼女の部屋に来て、開口一番汚いとか言う?普通」
一発殴ってやろうかと思って振り向くと、顔に何か柔らかいものが押し当てられた。
「わぷっ!何?コレ」
それはうさぎのぬいぐるみだった。
ナルトと会った時に持っていた、あのうさぎだ。
「プレゼント」
「可愛いけど、何でぬいぐるみなの?私、そんな子供じゃないよ」
「うさぎはオマケだよ」
「オマケ??あ・・・」
よく見てみると、耳に銀の輪がはまっていた。
指輪だ。
「お手をどうぞ。お姫様」
カカシが跪いて、に腕を伸ばす。
「う、うん・・・」
うさぎから指輪を抜くと、細く白いの指にはめた。
「ん。ぴったりダネ」
「・・・ありがとう」
ニヤリとカカシが笑う。
「いーえ。さーて、可愛い小兎ちゃん。いつまでもそんなカッコしてると、狼に食べられちゃうよ?」
「もー!先生のバカ!」
可愛い白うさぎ。
後悔してももう遅いよ。
狼を、家の中に入れちゃったんだから。
薬にする薬草をヒナタが摘んでいると、慌しい足音が近づいてきた。
「あ、いたいた。ヒナタ!」
「ナルト君!?」
「ほら、チョコのお返し」
「え?」
ナルトが差し出したのは、キラキラと光る小瓶だった。
色とりどりの星が、瓶の中できらめいている。
「星を集めたみたいだろ?」
「うん・・・・嬉しい」
ホワイトデーは、瓶いっぱいの金米糖。
「一粒食べるたびに、お前の夢が叶うといいな」