マズイ
いや、私の料理の腕ではない。
・ ・・。確かにこのケーキはマズイが。
もうすぐ恋人の誕生日で。
しかも、付き合って初めて迎える誕生日。
だと言うのに、相手の欲しい物がさっぱり分からない。
これってマズイんじゃないか?
私、本当に彼女?
どうしようもないので、ストレートに欲しいものを聞いてみたら「休暇」とか答えやがるし。
私は溜息をついて、黒焦げになったケーキを流しに捨てた。
先生の家のチャイムを鳴らすと。
いつもなら出てくるのに、今日は違った。
「かー?勝手に入って来い」
大声で中からそう言われて。
首をかしげながら、家に入った。
「せんせー?何やってんの?」
カカシ先生はテレビ画面を真剣に睨んでる。
手にはコントローラー。
・ ・・ゲームなんて珍しい。
「もうすぐラスボスなんだ。ちょっと待っててくれ」
振り返りもしない先生の隣に座って、テレビを覗き込んだ。
ぴらりら〜という電子音。
魔王らしき物体の高笑い。
お決まりのヒロイックサーガものだった。
「先生、RPGが好きなの?」
「んー。やっぱ男のロマンってやつ?」
「ロマン?」
「竜倒したり、魔王やっつけたりしたいデショ」
「・・・・お姫様救ったりとか?」
「そんで勇者サマありがとう!とかってキスされちゃったり」
先生は珍しく饒舌だ。
「・・・勇者って呼ばれたい?」
「うん」
多分先生はうわの空で返事してたんだろうけど。
もう遅い。
いいこと考えちゃった。
プレゼントは決まりだ。
数日後。
チュンチュンと雀が窓辺で鳴いている。
「う〜ん・・・?」
伸びをしてベッドから降りると。
それはあった。
「・・・・・」
大きな宝箱が。
目をこすってみたが、箱は消えなかった。
箱の横に紙切れが置いてあり、何やら書いてある。
「勇者よ!この宝箱をお開けなさい!」
「かよ・・・」
筆跡から一瞬でだと見破ると、カカシは仕方なく箱を開けた。
「・・・何がしたいんだ?あいつ・・」
箱にあったのは、どこぞで見たことがあるブレストプレートに、革のブーツ。
何のことはない、カカシがやっていたゲームの主人公が着ていた服だ。
また紙が同封してある。
「着替えなさい。間もなく困った村人が助けを求めに来るでしょう」
「困った村人?」
そこでタイミングよくドアを叩く音がした。
困っているにしては、かなり控えめだ。
「はーい?」
「あ、あの・・・その・・・」
困った村人はヒナタだった。
「ヒナタ?」
「いえ・・あの・・私は村娘その一で・・」
「へぇ・・・」
「あ、あの・・助けてください!」
「から?」
ヒナタは慌ててプルプルと首を振る。
「ち、違います!あ、あの・・・ドラゴンが・・村を襲ってて・・・」
「ドラゴン?」
「む、村はずれに・・いるんです・・あ、あの。ゆ・・・ゆ・・勇者様!助けてください」
自分で言っていて恥ずかしくなったのか、最後の方はかなり早口だった。
「・・・。俺が勇者なの?ま、巻き込まれたヒナタに免じて付き合ってやるか。で、どこなわけ?」
「あの・・まずは酒場で仲間を見つけてください」
「ハァ!?」
カカシの声にヒナタがびくっと震える。
「そ、そうしろって・・・言われてて・・・」
「あーゴメン。分かったよ」
「あの・・・服をちゃんと着替えてください」
「・・・・・」
ひそひそ声が聞こえる。
いっそ死んでしまいたかった。
恥ずかしすぎる。
「あの・・・似合ってますよ?」
「嬉しくないっつーの」
ヒナタが泣きそうな顔で頼むので、用意された服を着た。
が、木の葉の里では目立ちまくっている。
相変わらず口布をしてるので、ゲームの世界でも浮いただろうが。
勇者と言うよりは暗殺者だ。
今、知り合いには絶対に会いたくない。
の野郎、新手の嫌がらせか?
「ここです」
ヒナタが立ち止まったのは、酒場ではなく甘味処。
まぁ今の時間帯なら酒場は開いていないだろうが。
のれんをくぐったカカシは、危うく気を失うところだった。
「あー本当に着てるわ」
サクラが必死で笑いを堪えている。
隣にいるサスケも、肩が震えていた。
「・・・何してんの?」
ちなみにサクラもサスケも、カカシのことを言えない格好だ。
サクラは踊り子だし、サスケは武道家だろうか?
「勇者様いらっしゃーい!ここは仲間を見つける酒場でーす!お好きな人を選んでパーティーを組んでねv」
能天気な声に振り向くと、にこにこ顔のがいた。
こちらは魔法使いの格好だ。
「ゲームに夢中だったのに怒ってるのか?」
「何の話?」
「俺を辱めたいんだろ?」
「は?さ、パーティー組んで」
カカシは溜息をついて、どうでもよさそうに言う。
「お前だけでいいよ」
「何言ってんの!バランスのいいパーティーを組むのは、RPGの基本でしょう?」
「俺ら二人でまかなえるだろ」
「んな身も蓋もない・・・」
「先生〜私とサスケ君はー?」
サクラが不満気に声をあげる。
「俺は帰りたいけどな」
「却下」
無情にもが告げ、サスケは舌打ちをした。
「ヒナちゃんは僧侶ね」
「村人じゃなかったのか?」
「二役なの」
「お前も大変だな・・・」
「い、いえ・・・」
「じゃあ早速ドラゴンを倒しに行くわよー!」
「おー!」
サクラがノリノリで拳をあげたが、あとの三人は静かだった。
果たしてこの、やる気のない勇者は村を救えるのか!?
そもそもドラゴンなんているのか!?
作者も続きが分かっていない、次回を待て!
