この日。
友雅はめずらしく天真と話していた。
喧嘩もせずに。
「おー友雅知ってるか?俺らの世界じゃ、今日はクリスマスなんだぜ?」
「・・・そういえば、去年神子殿が文を配っていたねぇ」
「よく覚えてんな。実はな、本当はあることをする日なんだ」
「あること?」
「まぁ大したことねーんだけどよ・・・」
天真は内心ほくそえみながら、友雅に耳打ちした。
あかねの前で恥をかくがいい・・・・
しかし友雅は更に一枚上手だったのだ。
「友雅さーん?どこにいるんですかー?」
きょろきょろと辺りを見回しながら、あかねが声をかける。
手には何かの包みを持っていた。
「・・・・こっちだよ。神子殿〜」
部屋の奥から声が聞こえた。
間違いなく友雅だ。
が、おかしい。
友雅は大人の男であり、口調も優雅だ。
深くていい声をしており、あかねは彼に自分の名前を呼ばれると、よくうっとりとしたものだった。
本人には言っていなかったが。
しかし、今の受け答えはどうだろう。
こっちだよ、まではよかったが、その後のみこどのぉ〜は?
八葉に、間延びした声で自分を呼ぶものなどいない。
唯一、泣きそうな時の永泉くらいのものか。
あかねは言い知れぬ不安を感じた。
そしてそれはある意味正しかった。
「友雅さん?」
「あーこっちだよ〜」
声のした部屋を覗くと、友雅が座っていた。
周りには空になった銚子がいくつも転がっており、今まさにもう一本空にしようとしているところだった。
「と、友雅さん?」
「こっちに来て座りなさい〜」
ぱたぱたと手招きされて、あかねは一瞬迷ったが素直に従うことにした。
「うっ・・・お酒臭い・・・」
思わず口について出るほど、辺りには日本酒の匂いが充満している。
友雅はくいっと杯を仰ぐと、あかねにも一杯勧めた。
「ほら〜神子殿も飲みなさい〜」
「私は未成年だから駄目です!!」
「今日は無礼講だよ〜」
なおも勧めてくる友雅の顔は、心なしか赤い。
というよりこれだけ飲んでも顔に出ないのがすごい。
「ど、どうしたんですか!?昼間からお酒なんて飲んで・・・・」
友雅は杯を置くと、あかねをじっと見つめた。
「今日はくりすます、という日なのだろう?」
「そ、そうですけど。よく知ってますね」
「だからだよ」
「はい?」
意味がわからない。
「くりすますは酒を飲む日なのだろう?」
「違います!誰にそんなこと聞いたんですか!?」
「天真がそう言っていた」
「天真君たらー!!友雅さんも何で信じたんですか?」
ぷりぷりとあかねは怒っていたが、友雅はただ微笑むだけだ。
「その包みは何かな〜?」
あかねが今思い出したように包みに目をむけ、慌てて差し出した。
「クリスマスのお菓子です。甘さは控えめにしました」
「それは有難う。菓子を食べる日なのかい?」
「うーん・・・難しいですねぇ。当たらずとも遠からず・・・みたいな」
うまい答えはないかとあかねが思案していると、いつのまにか友雅が目の前に迫っていた。
「君は・・・どう思うんだい?」
見つめる目は熱っぽい。
「へ?って、ち、近づきすぎです!よ、酔ってるんですか?」
「可愛い姫君に酔ったのかな?」
「と、友雅さん!?」
なおも友雅は迫り、あかねはずるずると身を引いていく。
「今日は何をする日なのか、私に教えておくれ」
「え、え〜とぉ・・・・もうお酒を飲む日でいいです!」
答えにつまったあかねは、近くに置いてあった銚子を、直に飲み干した。
「・・・・大胆だねぇ」
「う〜・・・・ヒック。もういっぽ〜ん」
もう目の焦点が定まっていない。
「おやおや・・・困ったねぇ」
友雅は苦笑しながら、杯に酒を注いだ。
「友雅さ〜ん。今日は何の日かしっれますかぁ?」
すっかり正体をなくしたあかねの相手をしながら、友雅は答える。
「酒を飲む日なのだろう?」
「ぶー。ちがいますぅ。クリスマスはぁ好きな人とー過ごす日なんれすよぉ。きゃー言っちゃったー」
「・・・ほう。では神子殿は私のことが好きだと思ってもいいのかな?」
「大好きれすー」
言いながら、あかねは友雅に抱きついた。
「酔っていない時に聞きたかったものだが。天真の話も、あながち嘘ではなかったな」
「ともまささんは、わたしのこときらい?」
不安げに問うたあかねに、友雅は頬に口付けを落とした。
「好きでたまらないよ」
あかねはその言葉を聞くと満足そうな表情をし、眠りに落ちていった。
あかねが酔っていなかったら、途中から友雅の口調がしっかりしていたことに気づいただろう。
実は酔ってなどいなかったのだ。
あかねをからかうために演技していたのだが、話は思いがけない方向に進んだ。
友雅には都合が良かったが。
「今日は一体何の日だったんだろうねぇ」
寝息をたてるあかねを見ながら、友雅は微笑した。
天真はこう耳打ちしたのだ。
「クリスマスは、酔った勢いで告白する日なんだぜ」と。
「君に酔ったんだよ」と言わせたくて書いただけの話(笑)
友雅さん酔いそうにないですね。
例の如く、クリスマスらしい綺麗な話になりませんでした(笑)
