何か話してくれ?弱ったな。話をするのは得意じゃないんだよ。それでもいい?お客さん、物好きだねぇ。しょうがないか。雨も降ってきたみたいだし、特別だよ。
可哀相な女の話でもしようか。
私は美しく生れついた。
小さな頃から可愛いといわれ続け、大きくなるに従ってそれは、美しいに変わった。
褒められるのは私にとって当然のことだった。
言い寄ってくる男は、はいて捨てるほどいた。
恋人は常に5人以上。
それを咎められることはなかった。
それだけの美貌を持っていたから。
みんな遊び。
私が愛してるのは、自分だけだもの。
ある日、切羽詰った表情で一人の男が私の元に来た。
ぱっとしない男。
「僕は君だけを愛してるのに、君は何故大勢の男を相手にするんだい!?」
「1回寝たくらいで恋人面しないでちょうだい。その一回すら気の迷いだったのよ」
「嘘だろう?からかわないでくれ」
「本当よ。貴方の顔すら覚えてないわ」
男は言葉を失ったようだった。
時々いる。
こういう勘違い男が。
私は誰のものにもならないのよ。
帰ってくれと言おうとした時、男が低く笑い出した。
「君の傲慢は美しさからくるんだろう?」
「・・・?」
「じゃあその顔を壊してしまったら、誰も見向きもしなくなるね」
「私を殺すつもり?」
「違うよ。死よりもっと残酷な事だ。君にとってはね」
言うなり男は、私に瓶に入った液体を浴びせ掛けた。
「きゃあああ!!」
顔が燃えるように熱い。
「ははっ苦しい?硫酸だからね。大人しく僕の愛を受け入れてくれれば、美を失わずにすんだのに」
「い、いや・・・・」
「美しくない君なんて、何の価値もないよ」
顔をかきむしった私の手に、ぼろりと頬の肉が崩れ落ちた。
それから私の生活は変わった。
整形手術でもどうにもならないくらい、私の顔は焼け爛れていた。
両親でさえ、傍に寄り付かなくなった。
あんなに見せびらかしていた顔を、隠すようになった。
私は命よりも大切なものを、失ったのだ。
フードで顔を隠すように、道を歩く。
確か欲しい本があったのだと思う。
表通りを歩けるわけもなく、私は薄暗い路地裏を歩いていた。
「よォねーちゃん。一人でこんな物騒なとこ歩いてると危ないよ」
チンピラ風情の男たちが5、6人私を取り囲んだ。
「どいて」
「俺達と遊ぼうぜ?」
「何で顔隠してんだよ。もったいぶってんのか?」
男の手が、フードにかかる。
「やめてっ!」
しかし男の力にかなうはずもなく、あっけなく顔を晒された。
息を飲む音が聞こえた。
それが、けたたましい笑い声に変わる。
「これはひっでーな。こんなブサイクみたことないぜ」
「ほんとに人間かぁ?」
私は唇を噛んだ。
こんな奴らに、蔑まれるなんて。
いっそ死んでしまいたい。
「そうだ。そんなに顔が気になるんなら、気にしないようにしてやるよ」
とてもいいことを考え付いたかのように、男が笑う。
周りの仲間に耳打ちする。
「そりゃいいや」
男たちはニヤニヤ笑いながら、ナイフを取り出した。
「目が見えなきゃ、自分の醜い顔も見れないだろ?」
「生きてるのもツライだろ?臓器は闇で売ってやるからよ」
「こんな奴が死んだって、誰も気にしないぜ」
私は押さえつけられ、目を抉り出され、鼻を口を切り取られた。
男たちの笑いが高くなる。
そして私は殺された。
どうだい。可哀相だろ?え?作り話かって?信じる信じないは、お客さんの自由だけどね。ほら、もう遅いよ。お客さんも帰ったほうがいい。雨もやんだようだしね。
あぁ一つ言い忘れてたよ。まだ続きがあるんだ。女は死んでもなお、自分の人生を壊した男を探してるんだよ。顔を手に入れながらね。どういう意味だって?男を殺して、顔を自分のものにするのさ。そしてそいつに成り代わる。どうして顔を手に入れるのかだって?次の獲物を捕らえやすくするためだよ。
例えば、こんな風にね・・・・
