キミはどうしてそんなにも
「神子殿はいるかい?」
断りもせずに御簾をぴらっとめくったのは、友雅だった。
いつものことなので、藤姫も咎めない。
「あら、友雅殿。神子様はお庭にいらっしゃいますが・・・・」
「そうか。勝手に上がらせてもらうよ」
「あ、お待ちください!・・・・泰明殿と一緒だと言おうとしましたのに」
行ってしまった友雅を眺めながら、藤姫は嫌な予感がしていた。
柄にもなく、心がはずんでいる。
「ふふっ私らしくもない・・・・」
そんな独り言を呟きながら庭に続く廊下を歩いていると、あかねの声がした。
「わぁ!すごーい!」
整った眉宇をひそめる。
どうやら誰かと一緒らしい。天真だろうか。
しかし、あかねの声に答えたのは感情の読めない冷静な声だった。
「陰陽師なら当然だ」
「でもでも!この鳥、本物そっくりですよ!」
はしゃいで式神を撫でるあかねを見て、泰明も表情を和らげた。
「そうか」
聞くところによると、泰明は律儀に通ってきているらしい。
特に用があるとも思えないのだが。
仲良く喋っている二人を見て、友雅は意地悪をしたくなった。
「・・・お邪魔だったかな?」
声をかけると、あかねはぱっと振り向いた。
「あ、友雅さん!」
「・・・・・」
泰明は機嫌が悪くなる。
「二人で仲良く何をしてたんだい?」
「泰明さんに式神を見せてもらってたんですよ。ホラ、本物そっくりでしょう?」
あかねが指をさすと、式神はクエ〜っと鳴いた。
「・・・そうだね」
「友雅さんも一緒にお喋りしましょうよ」
「・・・遠慮しておくよ。先程から泰明殿に睨まれているしね」
「え?」
「神子に用があるなら、またにしろ。私が先約だ」
「や、泰明さん?」
はっきりとした拒絶の言葉に、あかねがオロオロし始める。
「ほら・・ね。私は失礼するよ。無粋な事は嫌いだしね」
「そんなこと言わないでくださいよ。3人でいいじゃないですか」
友雅はそれを無視して、背を向けた。
「私はあまり君を楽しませることもできないしね。泰明殿には、笑顔を見せるようだけど?」
そう言い残して、友雅は去っていった。
「友雅さん!?」
「神子!」
追いかけようとして立ち上がったあかねを腕を、泰明が掴む。
「・・・・ごめんなさい!」
泰明の手を振り払って、あかねは友雅を追いかけた。
神泉苑を歩きながら、友雅は考えていた。
「まったく・・・らしくない」
あんな捨てゼリフのようなことを言ってしまうなんて。
あの子の事になると、冷静でいられなくなる。
これが恋?
あんな少女に?
「・・・しかし彼女は私のことなど、何とも思っていない」
手を伸ばしても届かなかった情熱
一生その感情を知らずに、死んでいくのだろうか
「友雅さん!」
「・・・あかね?」
何故追いかけてきた?
私は唯の八葉なのだろう?
「何で・・・帰っちゃったんですか?」
「私はお邪魔だったからね」
「そんなことありません!」
「泰明殿といたほうが楽しいのだろう?」
「どうしてさっきからそんなこと言うんですか?」
私にそれを言えと?
友雅が顔をしかめた時、横から声がかかった。
「橘少将さま?このような所においでになるとは、めずらしいですわね」
どこかの女房らしい。
どこに仕えていたかは覚えていないが。
「・・・ちょっとね」
女房は、後ろにいるあかねを見た。
「童をつれてお散歩ですか?お暇なのなら、私とご一緒しません?」
これはこれは積極的な女性だ。
遊ぶのも悪くはないと思った時、急に腕が重くなった。
「友雅さんは私とデート中なんです!!」
「・・・あかね?」
「まぁ、何という童なのでしょう。主にそのような事をして!」
あかねは友雅と腕を絡めたまま、女房を睨んでいる。
「悪いが、そういう事なのでね。またにしてもらえるかな?」
「少将さままで!お戯れもいい加減にしませんと、凶事を招きますわよ」
女房は文句を言いながらも、去っていった。
「急にどうしたんだい?」
女房は去ったのに、あかねは友雅も睨んだ。
「友雅さんズルイ!私にばっかり怒って!」
「・・・何のことだい?」
あかねの思考が、まったく分からない。
何故急に怒り出したのか?
「自分は綺麗な女房さんを侍らせてるくせに!私が八葉のみんなといるのはダメなんですか!?」
「お、落ち着きなさい」
「落ち着いてなんかいられません!」
あかね鼻息荒く、日頃の恨みつらみをまくしたてる。
「ふぅ・・・困った人だねぇ」
友雅は思わず苦笑した。
「困ったさんは友雅さんです!」
なだめるのは無理なようだ。
「・・・では理由を言おうか。君は私と目をあわさない」
あかねはきょとんとした後、顔を赤くした。
「それはー恥ずかしかったからです!」
「恥ずかしい?」
「友雅さん大人だから、私の気持ちなんて全部見透かされそうで」
「・・・では、何故私には笑顔を見せてくれない?」
「はい?笑ってるじゃないですか」
「違う。先程、泰明殿に見せていたような笑顔だ」
これではまるで、恋をしたての若者のようではないか。
「もしかして、それを気にしてたんですか?」
「・・・そうだよ」
「あんまりはしゃぐと、子供っぽいと思われると思って・・・・」
あかねはバツが悪そうに、微笑んだ。
何だ、全て思い過ごしだったのか。
真実はこんなにも簡単だったのに。
「あはははははっ!」
「と、友雅さん?」
いきなり笑い出した友雅に、あかねがびっくりして声をかける。
「私は存外、嫉妬深いようだ」
「え?それって・・・」
「覚悟しなさい」
蕩けるような微笑を浮かべて、友雅はあかねを引き寄せた・・・
キミノコトバデクルイソウ
19000を踏んだ、橘麻莉様からのリクで「嫉妬する友雅さん」
こんなんでよろしいでしょうか?(汗)
さっぱりしてそうで、案外嫉妬深いのかもしれませんね。
まぁ放っておかれるのも嫌ですが。
泰明さんは可哀相な役どころですね(笑)
それでは、楽しんでいただければ幸いです。