姫条は屋上で寝転がっていた。

ぼんやりと空を見つめる。

「えらいことになってしもたなぁ・・・」

犯人は自分じゃない。

そんなことは自分が一番よく知っている。

「どうやって証明せいっちゅーねん・・・」

ヤラセだと騒ぎながらも、クラスメイトはどこかよそよそしい。

所詮こんなものなのか。

際限なく落ち込みそうになった時。

視界に人影が映った。

無視するかと思ったら、こっちに歩いてきた。

姫条の前で立ち止まる。

「葉月・・・・・」

「・・・ここにいると思って」

俺に会いに来たのか?

しかし口から出たのは違う言葉だった。

「なんや、笑いに来たのか?それともセコイ奴って罵りにきたんか」

「・・・・・」

「何黙っとんねん」

葉月はじっと姫条を見つめた。

「俺・・・こーゆー時、何て言ったらいいかわからないんだ」

「・・・?」

姫条と背中をあわせるようにして、座る。

「だから・・・隣にいてやるしかできない」

「葉月・・・」

「友達って、そーゆーもんなんだろ?」

「・・・・・そうやな」

二人の間を、風が吹き抜けていった。


黒須の意識は、それからほどなくして戻った。

大勢の人間がベッドを囲んでいることに、驚く。

「で、誰にやられたんだ・・・?」

生唾を飲み込む。

しかし黒須はへら〜と笑って、言い放った。

「誰って何が?足滑らしちゃってさー」

テヘヘ、と頭を掻きながら言った時には、全員がずっこけた。

しかし次の瞬間、全員の目が据わっていた。

「え?ど、どうしたの?」

「こんの・・・馬鹿がー!!!」

黒須がタコ殴りにされたのは、言うまでもない・・・・


姫条への疑いは晴れ、疑った連中は謝りにきた。

「勝手に決め付けて悪かった・・・」

バツが悪そうに、俯いている。

「もうええって。あの状況じゃ仕方あらへん」

「でも、居心地悪かっただろ?」

「平気やって。最後まで黙って傍にいてくれる奴がおるからな」

そう言って、小さく笑った。


体育祭は、例年にない盛り上がりを見せた。

両者とも一歩も譲らない。

残すところはリレーのみ。

葉月は赤組の、姫条は白組のアンカーだった。

「お前には負けへんで!」

「・・・俺のセリフだ」

二人にバトンが手渡され、風を切って走り抜けてゆく。

ゴール前までは、ほぼ同時。

先にテープを切ったのは・・・?


「実は心配やってん。ケンカしたっきりになるんやないかって」

「・・・あんなのいつものことだろ」

「お前は何もいわへんから、不安なんや」

「・・・・嫌だったら一緒にいない」

「大事なことは、言葉にしないと伝わらへんのやで?だからお前誤解されるんや」

「・・・・そうか」

「俺は言いすぎなんやけどな」

「・・・そうだな」

いつの間にか笑っていた。

目の前には真っ青な空。

end

あとがき