部屋の中は一種、異様な雰囲気に包まれていた。

何かを囲んであかねと八葉が真剣な表情をしている(泰明と友雅除く)。

事の起こりは二時間前にさかのぼる・・・・


「天真君―。また雨だよー!!」

「俺に文句言ったってしょうがねーだろ?」

部屋の中には、あかね、天真、詩紋がいた。

外に出られないので、あかねは不機嫌らしい。

「あかねちゃん落ち着いて?何か気をまぎらわせる事しようよ」

詩紋が慌てて仲裁にはいった。

「でも雨だよ?」

「部屋の中で出来ることをしようよ。例えばー」

「あー!!」

何かを言いかけた詩紋を、天真が遮る。

「ど、どうしたの?」

「あかね、アレやろうぜ!」

「あれ?・・・・あ!この前作ったやつだね!」

あかねが、ぽんと手を打つ。

「作ったって・・・まさか、アレのこと?」

「そうそう。どうせだからみんな呼ぼうぜ!」

「みんなって八葉のみんなのこと?仕事あるんじゃないのかな?」

「だーいじょうぶだって。雨降ってて退屈してるぜ」

「そうかなぁ?」

「俺が呼んできてやるよ!」

そう言うなり、天真は飛び出していく。

「あ!天真君!!もー人の話聞かないんだから・・・でも楽しそうだね」

「うん。三人じゃちょっと盛り上がらなかったからね」

「じゃ、用意して待ってよっか」

いそいそと二人は立ち上がった。


「神子殿、何か大事な用事があるのですか?」

部屋の中に集まった面子を見て、鷹通が問う。

「そうだぜ。天真に無理矢理連れてこられてさー」

「お前暇そうにしてたじゃねーか」

天真がイノリに言い返した。

「あのですねーみんなを呼んだのは、平たく言えば暇だったからです」

「!!」

あかねの言葉に、全員が凍りつく。

「あ、あかねちゃん!もっとオブラートに包んで言ったほうが・・・・」

「まーそーゆーこと。九人で双六しようぜ」

「すごろく?」

「サイコロ・・・ってこの四角い奴の名前ですけど、これを振って出た目の数だけ先に進めるんです。それで一番に上がった人が勝ち」

「神子殿は面白いものを持っているねぇ」

「この前天真君と詩紋君と作ったんです。三人じゃ盛り上がらなかったけど・・・」

「そんなことをする意味があるのか?」

「や、泰明殿!神子に失礼ですよ」

冷静に突っ込む泰明を、永泉が慌ててたしなめた。

「一回でいいんで相手して下さいよぉ。あ、最下位の人は罰ゲームがあります」

「罰!?」

永泉の顔が強張った。

「そーゆーのがあったほうが燃えるかもな。で、何なんだ?」

あかねがにっこりと言う。

「女装です」

「!!!」

「んなことできっかー!!!」

「神子殿・・・正気ですか・・・?」

「それは面白そうだねぇ」

「しかもただの女装じゃないですよ。私の格好をして、藤姫に会いに行ってもらいます!」

「いやだぁぁぁぁぁ!!」

「そ、それはご命令なのですか・・・・?」

「聞いてねーぞ!そんなこと!」

「だって今決めたんだもん。みんな元が綺麗だから大丈夫だよ」

「そーゆー問題じゃねぇ!」

「お前ちゃんと考えてるか?友雅なんて想像しただけで恐ろしいぜ・・・」

イノリが両腕で体を抱くようにして、身震いした。

「それは聞き捨てならないな。似合うかもしれないだろう?」

「うえー。本気かよ!?」

「ま、そーゆーことです。用は負けなきゃいいんですよ」

あかねが無責任に言い放つ。

八葉たちがお互いを睨みあう。

負けるなら死んだほうがマシだ・・・・

こうしてくだらない死闘が幕をあけたのだった。


部屋には怒声が飛び交っていた。

「二マス戻るってどーゆーことだよ!?」

「三回回って、問題ない・・・?!」

「腕立て臥せ十回。こりゃまともだな」

「友雅さんの真似をして、隣の人を口説くなんて無理だよ!隣は頼久さんだよ!?」

「隣にいる人間を呪う・・・よし、問題ない」

「おい!本当にやるなよ!!」

「あはは。みんな楽しそうだねぇ」

「「楽しくねぇ!!!」」

本当に楽しんでいるのは、あかねと友雅くらいだった。

泰明は何も考えていなかったが、後の人間は命がけだった。

そして結果は・・・・


「あー・・・疲れた・・・」

「怨霊と戦ったほうがまだマシだったぜ」

「・・・・・」

頼久は喋る気力もないらしい。

「ま、頑張れよ。泰明」

天真が泰明の肩を叩く。

「何を頑張るのだ?」

「何をって女装だよ。お前嫌じゃないのか?」

「特に問題ない」

「おかしいぞ・・・お前・・・」

「じゃ泰明さんこっち来て下さい。私と服を交換しましょう」

「何で交換なんだ?」

「スカート一枚しかないから。私は泰明さんの服借りよーっと。何かコスプレみたい!」

「お前、実はそれが目的だったんだろ・・・」

「あ、バレた?じゃ、泰明さん行きましょ」

あかねが泰明の手を引っ張って、隣の部屋に消えた。


しばらくの後。

「お待たせしました〜」

まずはあかねが顔を出した。

泰明がいつも着ている服を着ている。

身長差があるので、裾をかなり引きずっていた。

みんなコメントは差し控えた。

「泰明さんも!ホラ」

「ああ」

あかねの後ろから、泰明が顔を出した。

「!」

似合っていた。

髪はおだんごをほどいて、そのままたらしてある。

スカートは、足の長さが違うのでミニになっていた。

「これは驚いた。泰明殿は女装の才能があるよ」

「美人だね・・・・男とは思えない・・・」

詩紋が感心して呟く。

「泰明だと思うと、複雑な気分だな・・・・」

「ね?綺麗でしょー?」

あかねの言葉に、友雅が立ち上がる。

「本当に、惚れていまいそうだよ」

言いながら、泰明の顎をクイと持ち上げた。

「それ以上近づくと、呪う。お前は男が好きだったのか?」

「あはははっ泰明殿が美しいからだよ。ところで藤姫の所へ行って何をするんだい?」

「私のフリをして藤姫ちゃんの反応を見ます!」

「鬼か。お前は」

「天真君ひどーい!!実は楽しみなくせに」

「ま、まぁちょっとはな」

「でしょ?じゃ、みんな行きますよ」

「私達は何をしていればいいのですか?」

「庭でこっそり見てましょう。泰明さん、いいですか?」

「問題ない」

「お前、男としてその反応は間違ってると思うぞ・・・?」


「藤姫ちゃーん。入ってもいい?」

まずはあかねが声をかけた。

「神子様?どうぞ」

「ほら、泰明さん出番ですよ」

「・・・・ああ」

泰明が蔀を上げると、藤姫は文を書いていた。

「雨が多くて嫌になってしまいますわね。神子様も退屈・・・」

顔をあげて藤姫は固まった。

目の前にいるのは、泰明だ。

しかし格好はあかねだ。

「・・・神子様?」

「何だ」


「ぶっ!」

外で見ていたイノリが耐え切れなくなって吹き出した。

「泰明さんどうするつもりかなぁ?」

「あいつにあかねの真似しろってのが無理なんだよ。藤姫も可哀相にな」

「これは・・・癖になりそうだね」


「あ、あの神子様?いつの間に髪がお伸びになったのですか・・・?」

「ついさっきだ」

「あの、どうして泰明殿のような受け答えをするのですか・・・?」

「・・・・趣味だ」

「趣味・・・!?あ、あの具合でも悪いのですか?」

「問題ない」


この後、藤姫は寝込んだという。




くだらないですねー(笑)
リクエストがあったので書きました。
友雅さんにキレる泰明さん、と言われたのですが、基本的に泰明さんは怒らないのでこれで許して下さい。
あー楽しかった(笑)